「決定版 西洋画家図鑑」ですが、その「まえがき」に当たる「365人の画家とめぐる美の歴史と記憶」にも触れられている次の本と、収録作家を比較してみました。もちろん、20世紀前半のみです。なお、次の本の収録作家は281人で、「決定版 西洋画家図鑑」とは異なり、必ず「1作家1ページ」の収録です。
カラー版 西洋絵画史WHO’S WHO
諸川春樹監修
利倉隆, 山浦英一編
美術出版社
1996年
2800円+税
295ページ
A5サイズ
まずは、この本の20世紀前半の掲載作家は以下のとおり。20世紀後半もとりあえず入れています。生没年などは入力しておりません。また、名前の前の番号は、本書で付せられている連番です。
(生年順)
221 セザンヌ
222 モネ
223 ルドン
224 バジール
225 モリゾ
226 ルノワール
227 ボルディーニ
228 レーピン
229 ルソー
230 カサット
231 カイユボット
232 ゴーガン
233 ゴッホ
234 ホドラー
235 サージェント
236 クリンガー
237 クノップフ
238 セガンティーニ
239 トーロップ
240 スーラ
241 アンソール
242. クリムト
243. フランツ・フォン・シュトゥック
244. ムンク
245. トゥルーズ=ロートレック
246. カンディンスキー
247. ノルデ
248. ボナール
249. ドニ
250. ルオー
251. ビアズリー
252. モンドリアン
253. マレーヴィチ
254. クレー
255. マルク
256. キルヒナー
257. カルラ
258. レジェ
259. ピカソ
260. ブラック
261. ボッチョーニ
262. ユトリロ
263. モディリアーニ
264. パスキン
265. ココシュカ
266. マッケ
267. シャガール
268. デュシャン
269. キリコ
270. シーレ
271. モランディ
272. エルンスト
273. ディクス
274. ミロ
275. マグリット
34人
276. デュビュッフェ
277. ロスコ
278. ベーコン
279. ポロック
280. リキテンスタイン
281. ウォーホル
6人
ふと気づいたのですが、ダリが含まれていませんね。驚きました。
さて、実際の比較はまた後日。
(つづき)
エルンスト・キルヒナー(p294上)表現主義
フェルナン・レジェ(p294下)キュビスム
パブロ・ピカソ(p295)キュビスム、シュルレアリスム
ジョルジュ・ブラック(p296上)キュビスム
ウンベルト・ボッチョーニ(p296下)未来派
モーリス・ユトリロ(p297上)エコール・ド・パリ
マリー・ローランサン(p297下)エコール・ド・パリ
アメデオ・モディリアーニ(p298)エコール・ド・パリ
ジュール・パスキン(p299上)エコール・ド・パリ
ロベール・ドローネー(p299下)キュビスム
藤田嗣治(レオナール・フジタ)(p300上)エコール・ド・パリ
ディエゴ・リベラ(p300下)メキシコ壁画運動
アウグスト・マッケ(p301上)表現主義
ジョージア・オキーフ(p301下)プレシジョニズム
マルク・シャガール(p302)エコール・ド・パリ
マルセル・デュシャン(p303)ダダイスム、キュビスム
クルト・シュヴィッタース(p304上)ダダイスム
マックス・エルンスト(p304下)ダダイスム、シュルレアリスム
ジョルジョ・デ・キリコ(p305)シュルレアリスム、形而上派
エゴン・シーレ(p306)表現主義
ジョルジョ・モランディ(p307)形而上派
モイズ・キスリング(p308上)エコール・ド・パリ
グラント・ウッド(p308下)リージョナリズム
シャイム・スーティン(p309上)エコール・ド・パリ、表現主義
ジョアン・ミロ(p309下)シュルレアリスム
ポール・デルヴォー(p310上)シュルレアリスム
ジャン・デュビュッフェ(p310下)アンフォルメル
ルネ・マグリット(p311)シュルレアリスム
マーク・ロスコ(p312)抽象表現主義
サルヴァドール・ダリ(p313)シュルレアリスム
バーネット・ニューマン(p314)抽象表現主義
フリーダ・カーロ(p315上)シュルレアリスム
フランシス・ベーコン(p315下)表現主義
ジャクソン・ポロック(p316)抽象表現主義
アンドリュー・ワイエス(p317上)リージョナリズム
ロイ・リキテンシュタイン(p317下)ポップ・アート
アンディ・ウォーホル(p318)ポップ・アート
全体で47人です。
なお、書籍には欧文つづりも生没年も(他に国籍も)記載がありますが省略しました、念のため。
各作家ごとに「イズム」が付いているのはある意味では便利なのですが、網羅的に記載することは無理なので問題がありますね。カンディンスキーを「抽象主義」だけに絞るのは無理がありますし、ピカソもピカビアも数個に限定するのは難しい。モランディも「形而上派」だけでは不十分です。
あと、20世紀だけを見ても北欧が増えていることが最近の特徴と言えるかもしれません。 具体的には、ヒルマ・アフ・クリントとか、ハンマースホイです。
他の類似書籍との比較は後日。
先に、「決定版 西洋画家図鑑(2220)」でご紹介した「決定版 西洋画家図鑑」ですが、実物を見ることができましたので、20世紀について収録されている画家を記載します。
まずは、書誌情報の追加です。
・装丁・本文デザイン 米倉英弘(米倉デザイン室)
・編集協力 関 弥生
20世紀について、取り上げられている作家は以下のとおりです。その範囲は、おおむねピカソとマティス以降と考えてはいますが、境界が難しいので、何を除いているのかを明確にするため、セザンヌ以降の掲載作家はいったんすべてリストアップし、除くものに取り消し線を入れました。
(どのように区分するのが正しいのかについてはかなり難しいですし、正解はないのかもしれませんが、後期印象派、新印象派、象徴主義、ナビ派などは20世紀の作品が掲載されていても除いています。)
以下、作家名、カッコ内は掲載ページ、そのあとは、本書で付されているイズム、の順番です。対象外の作家には作家名の上に取り消し線を入れています。
ポール・セザンヌ(p244-p245)後期印象派
クロード・モネ(p246-p247)印象派
オディロン・ルドン(p248)象徴主義
ハンス・マカルト(p249上)古典主義
ジョヴァンニ・ボルディーニ(p249下)印象派
ピエール=オーギュスト・ルノワール(p250-p251)印象派
ベルト・モリゾ(p252)印象派
フレデリック・バジール(p253)印象派
アンリ・ルソー(p254)素朴派
イリヤ・レーピン(p255)写実主義
トマス・イーキンズ(p256上)写実主義
マックス・リーバーマン(p256下)印象派
メアリー・カサット(p257)印象派
ギュスターヴ・カイユボット(p258)印象派
ラジャ・ラヴィ・ヴァルマ(p259上)インド近代絵画
ジュール・バスティアン=ルパージュ(p259下)自然主義
ポール・ゴーガン(p260-p261)後期印象派
ウジェーヌ・カリエール(p262上)象徴主義
ジョン・メイラー・コリア(p262下)ラファエル前派
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(p263)ラファエル前派
ジャン=ルイ・フォラン(p264上)印象派
アンリ・ジェルヴェクス(p264下)古典主義
フェルディナント・ホドラー(p265上)象徴主義
カール・ラーション(p265下)象徴主義
フィンセント・ファン・ゴッホ(p266-p267)後期印象派
ジョン・シンガー・サージェント(p268上)印象派
マックス・クリンガー(p268下)象徴主義
フェルナン・クノップフ(p269上)象徴主義
ヤン・トーロップ(p269下)象徴主義
ジョヴァンニ・セガンティーニ(p270)象徴主義
アルフォンス・ミュシャ(p271)アール・ヌーヴォー
ジョルジュ・スーラ(p272-p273)新印象派
ジェームズ・アンソール(p274)象徴主義・表現主義
ヘレン・シャルフベック(p275上)写実主義・表現主義:フィンランド
ヒルマ・アフ・クリント(p275下)抽象主義:スウェーデン
グスタフ・クリムト(p276-p277)象徴主義
エドヴァルド・ムンク(p278)表現主義:ノルウェー
フランツ・フォン・シュトゥック(p279上)象徴主義
ポール・シニャック(p279下)新印象派
ハーバート・ジェームズ・ドレイパー(p280上)古典主義
ヴィルヘルム・ハンマースホイ(p280下)象徴主義、古典主義:デンマーク
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(p281)アール・ヌーヴォー、後期印象派
ポール・セリュジエ(p282上)ナビ派
アクセリ・ガッレン=カッレラ(p282下)写実主義、象徴主義
シュザンヌ・ヴァラドン(p283上)後期印象派、表現主義
フェリックス・ヴァロットン(p283下)ナビ派
ワシリー・カンディンスキー(p284)抽象主義
エミール・ノルデ(p285上)表現主義
エミール・ベルナール(p285下)ナビ派
ピエール・ボナール(p286)ナビ派
アンリ・マティス(p287)フォーヴィスム
モールス・ドニ(p288)ナビ派
ジョルジュ・ルオー(p289上)フォーヴィスム
カジミール・マレーヴィチ(p289下)抽象主義
ピート・モンドリアン(p290)抽象主義
オーブリー・ビアズリー(p291)唯美主義
パウル・クレー(p292)抽象主義
フランシス・ピカビア(p293上)抽象主義
フランツ・マルク(p293下)表現主義
(つづく)
先に、「瀧口修造と前衛写真(2221)」で書きました「瀧口修造と前衛写真」への不満の第2点は以下のとおりでした。
・関西(浪華写真倶楽部、丹平写真倶楽部、芦屋カメラクラブ、アヴァンギャルド造影集団など)との個別具体的な接点に言及がない。フォトタイムスの2つの座談会(要するに、議論がかみ合っていないこと)の紹介のみに終わってしまっている。特に、瀧口の日本の写真に対する発言が非常に少ないことが気になります。
以上ですが、以下詳細です。
瀧口は、海外の写真家については、いろいろと評論があります。初期の評論で、マン・レイ(1931年)、アジェ(1934年)をとりあげているほか、その後も、モホリ=ナギ、ボーバラ・モーガン、FSAなどについても書いています。
しかし、日本の写真家に対する言及が非常に少ない、あまりに少ない。瀧口の評論をすべて読んだわけでもありませんが、日本の写真作品について言及しているのは、本書でも紹介されている、雑誌「フォトタイムス」での2つの座談会(1938年と1940年)のみといってもいいくらいではないでしょうか?
例えば、
・中山岩太や芦屋カメラクラブ(1930年結成)
・写真集『カメラ・眼×鉄・構成』(堀野正雄・板垣鷹穂)(1932年)
・写真集『初夏神経』(小石清)(1933年)
・『飛行官能』(恩地孝四郎)(1934年)(『博物志』は1942年)
・写真集『眠りの理由』(瑛九)(1936年)
などについて、瀧口がどのように受け止めていたのか、どのように評価ししていたのかがさっぱりわかりません。
(なお、「前衛写真協会」の結成は、1938年です。)
しかし、ここでは、このような個別の作家や作品ではなく、大きな次の2つの項目について瀧口が言及していないことを考えてみたいと思います。
・独逸国際移動写真展(1931年)
・雑誌『光畫(光画)』(1932年~1933年)
前者の「独逸国際移動写真展」は、非常に重要な写真展であって、飯沢耕太郎さんの本によると、堀野正雄が次のように触れています。
「殊に、新興写真を単に版画の上に於てのみ観賞すること以外に、夫に接する機会を恵まれなかつた我々にとつては、此展覧会は何を差しおいても繰返し充分会得の行くまで観ることが必要であると同時に、今後此の展覧会を観ずして新興写真を論及する者があるとすれば、相応の反省を促し度いと私は考へる。」(フォトタイムス1931年8月「新らしい写真家」)(飯沢耕太郎の「写真に帰れ 『光画』の時代」(平凡社、1988年)の61ページ)
当初、瀧口の活動の時期からして、この展覧会は活動開始の前だったのかとも思いましたが、あにはからんや、瀧口の最初の写真に関する評論「マン・レイ」は、奇しくも、上記堀野の文章と同じ号のフォトタイムス1931年8月号に掲載されています。とすると、すでに(写真)評論家として東京で活動を始めていた瀧口がこの展覧会を知らなかったはずはありません。この展覧会は、マン・レイの作品もモホリ=ナギの作品も含まれていて、さらには、アジェの作品も含まれていた可能性がありますから、瀧口がこの展覧会に関心を持たないはずはなく、プロとして行かなかったとは考えにくいところです。
(ただし、出品作家については、この展覧会の作品目録による確認はできていません。故・金子隆一氏が、この目録を所有しておられたということなので、東京都写真美術館におけるネットでの公開が待ち望まれます。)
とすると、瀧口がこの展覧会について何も書いていないのは奇妙に思えます。
次に、雑誌『光画』についてですが、これについても、瀧口による言及がないようです。
木村伊兵衛の作品や伊奈信男の評論については、瀧口の考えとも共鳴する部分があったのではないかと思いますし、伊奈信男とも接点はあったのではないかと思うのですが、この点についての手掛かりはありません。野島康三というパトロン的活動についても、評価は明らかではありません。素人としての写真へのかかわり方ということで、低い評価だったのかもしれませんが。
ただ、この雑誌は、当時有名な雑誌だったかというとそうでもなかったようですので、写真評論家として、そのアンテナの低さはいかがなものかとは思うものの、瀧口がこの雑誌を知らなかったという可能性は否定できません。
情報も資料もないので、これ以上書くこともままならないのですが、いずれにしても、瀧口が当時、フォトタイムス上で多くの評論を発表していたにもかかわらず、それ以上に、日本の写真家や日本での写真動向といろいろとかかわっていたという状況が見えてきません。「前衛写真協会」の活動も含め、何となく孤立感があります。
このあたりを、伊勢さんには突っ込んで書いていただきたいものです。資料が発見できなければ、推測しかできませんので、書くことも難しいのかもしれませんが、そこは専門家の力量で公になっていないような資料の掘り起こしなどをお願いしたいところです。
次の本が刊行されています。
女性たちのデザイン史 Women in Design 1900 年代から現代まで、建築、手工芸、グラフィック、テキスタイル、ファッション、インテリア、プロダクト…… デザインの歴史に女性たちの姿を探して
アン・マッシー(Anne Massey)
大野千鶴・訳
日本語版特別寄稿:長嶋りかこ (グラフィックデザイナー), 根来美和 (キュレーター、研究者)
出版社 : ビー・エヌ・エヌ
発売日 : 2026/4/15
¥3,300 税込
原書は、Thames & Hudsonの 『Women in Design (World of Artシリーズ)』(2022年刊)だそうです。
対象の期間は「1900年代から現代まで」ということで、非常に関心があります。聞いたこともないような名前が出てくるのではないかと思います。20世紀後半ばかりに重点が置かれていなければいいのですが。
目次を掲載しておきます。
006 まえがき
012 日本語版特別寄稿
長嶋りかこ「丸ごとのあなたへ」
根来美和「多元的なフェミニスト・デザイン史とデザイン正義のこれから」
023 第1章 障壁を乗り越える
059 第2章 舞台の裏側
087 第3章 近代デザインのパイオニアたち
119 第4章 装飾する女性たち
151 第5章 デザインにおけるパートナーシップ
185 第6章 ブランドをつくり上げた女性たち
221 第7章 デザイン・アクティビズム
252 参考文献
260 図版リスト
264 索引