すでに16年目になります、恒例の「戦前の写真史に関する5大ニュース」です。
今回も、以下掲載の順番は、「順位」ではありません。
(以下、タイトル部分のカッコ内は、投稿の通番です)
<展覧会>
この時期をカバーする海外写真家の大型の展覧会(個展・回顧展)がなかったのが残念ですが、展覧会として重要な企画がなかったわけではありません。
以下の3件を選んでみました。
1.JCIIフォトサロンコレクション展(つづき)(1845)、JCIIフォトサロンコレクション展(1844)
戦前、すなわち1945年以前の作品は10点程度ですが、あまりよく知らない名前もあり、要注意です。
一般にJCIIフォトサロンの企画については作品リストがウエブサイトに掲載されていませんが、最低でも、この企画くらいは、リストを掲載していただくべきだと強く思っています。
2.坂田稔展(1816)
前にも書きましたように残念ながら見逃してしまいましたが、42作品を展示した、名古屋市美術館の貴重な企画です。
3.椎原治・最後(1813)、椎原治つづき(1812)、椎原治(1811)
これは、独立した企画ではなく、東京国立近代美術館の常設展(コレクション展)の一部ではありますが、作品点数22点から考えても、貴重な企画です。
「番外」としては、恵比寿のMEMの2つの重要な企画を挙げておきます。「番外」になったのは、戦後を対象としているから、という理由ですが、戦後が戦前とダイレクトにつながっているということを示しているという意味でも、2企画とも戦前に深く関係しています。
・K.P.S. 植木昇 小林祐史 二人展(1841)
・戦後の浪華写真倶楽部 – 津田洋甫 関岡昭介 酒井平八郎をめぐって(1807)
あと、さらに、「山沢栄子展」(1854、1855)そして「JAPANESE PHOTOGRAPHY AND COLLOTYPE」(1858、安井仲治)でしょうか。
<書籍>
今年は、実はかなりこの戦前の時期をカバーする写真史関連の書籍が刊行されていましたが、以下の3点に絞りました。
1.塩谷定好の写真 1899−1988(求龍堂)(1838)
この本は、間違いなく歴史に残る本ですね。ただ、島根県立美術館の展覧会カタログ(2017年)との重複感は気になるところです。展覧会については、以下の2つの投稿もご参照ください。
No.1590(【塩谷定好展の展覧会カタログ】2017年5月14日 16:23)
No.1565(【塩谷定好展】2017年1月29日 12:46)
2.写真の物語/打林 俊(1830)
新しい視点による、写真史の本。この方向で、日本写真史についてもまた本を書いていただければと思っています(芸術写真ではなく、今度は特に新興写真まわりを希望)。
3.写真を紡ぐキーワード123(つづき)(1795)、写真を紡ぐキーワード123(1794)
戦前だけではなく現代までカバーしています。このような本は今までなかなかありませんでしたが、わかりやすく、かつ、面白い本です。
「番外」ですが、上記のとおりの状況のため、かなり点数が多くなってしまいました。
・Czech and Slovak Photo Publications 1918-1989(1798)
・『ART SINCE 1900』より(1842)、ART SINCE 1900(1826)
・イメージを逆撫でする/前川修(1839)
・ドラ・マール(Dora Maar)(1843)
・カメラとにっぽん: 写真家と機材の180年史(1856)
・国宝ロストワールド(1857)
ということで、今回は、「5件」ではなく、結局「3件+3件」の「6件」になってしまいました。
今年も、展覧会企画や書籍に、大いに期待します。