来る2020年10月25日(日)に、東京国立近代美術館工芸館が、金沢に移転し「国立工芸館」としてオープンするそうです。
個人的には事前にあまり広報活動がなかったような気がして、この移転には唐突な印象があります。
首都機能の分散化の一環とも聞いていますし、移転の結果、日本海側初の国立美術館となるということで、そのこと自体はいいことだと思います。ただ、この関係で、政府や美術館関係者の皆さんの間での美術館(および図書館)の未来像はどうなっているのでしょうか?
もともと東京にあったわけですから、移転で金沢や北陸の皆さんにとってはうれしいということになるのでしょうが、関東の皆さんは不便になるということです。そしてこのことは、工芸館が大阪に移転しようが、北海道に移転しようが、どこに移動しても、同じ問題が生じます。それは、仕方ないということなのでしょうか? 新型コロナとも関連付けて何回か書いておりますが、もっと、作品、資料、文献等を徹底的にデジタル化や映像化して、美術館(とその図書室)がどこにあろうとも、日本全国どころか、それこそ世界中で、あまり不便なくそれらをじっくり見ることができるようになる、これこそが未来像・将来像ではないでしょうか?
また美術館ではなく図書館についても同様の問題があり、美術関係の書籍・雑誌についても、いちいち国立国会図書館に行かねばならないとか、国内の特定の美術館図書室に行かねばならないとか、アメリカ・ワシントンDCのLibrary of Congressに行かねばならないとか、そういう状況はいい加減にやめてほしいところです。専門の研究者のかたならともかく、当方のような素人は、日本国内ですらあちこちに行くなどという余裕(時間的にも金銭的にも)はありませんし、素人(「仕事」ではなく「趣味」)だと専門の研究機関からは断られることが多いでしょうからから、要するにあきらめろということになります。
別に新首相のご意見に依拠するわけではありませんが、あまりにデジタル化が進んでいない。おそらく、美術の世界で大きな障害となっているのは、著作権でしょう。新しい「デジタル庁」関係のどなたも美術の分野(作品についても書籍についても)まで頭を回していただく余裕など到底ないとは懸念しますが、「デジタル庁」が美術の分野を念頭に置いて著作権にもメスを入れてくれないものかと、ある意味期待しましょう。ただし、もちろん一方的に著作権者が我慢しろなどというつもりは全くありません。バランスよく著作権者にも利益を与えつつ、利用者の利便性を格段に大きく高めていただきたいということです。一般的な言い方をすれば、「デジタル時代の著作権」を考えていただきたということです。遅きに失するような気もしますが、それでも、これには、並大抵の人間には考えつけないような、卓越した相当の工夫が必要ではないかと思います。どうぞ、よろしくお願いします。