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開催してほしい展覧会(20世紀前半篇)

港千尋 写真論(1988)

最近次の本が刊行されました。

 

写真論――距離・他者・歴史 (中公選書 123) 

千尋

中央公論新社

2022/1/7

2,090

282ページ

 

港千尋さんは、写真家であるとともに、写真評論も多く書いておられます。

「写真論」は哲学的、思想的な問題に深くかかわり、時として極めて難しく、生半可な知識では歯が立たないことがありますが、「選書」という性質から、この本は専門家向けではなく比較的入門的な内容ではないかと思います。

 

ざっと見て、特に関心を持ったのは次の2点です。

 

序論で、写真の歴史を次の4つの時期に分類しています。(7ページ)

 

第一期 18201870 発明と完成期

第二期 18701920 産業化とグローバル化

第三期 19201970 マスメディア化

第四期 19702020 インフラ化

 

単純に50年ごとに区切っているだけのようにも見えますので、この区分がどう機能するのかについては十分に検討する必要があります。しかし、以前から何度も書いていますが、個人的には、どうしても「1945年」という区分にいつまでも囚われていますので、それを打破するためにも、こういった新しい視点には多く触れていきたいものです。

 

もう1つは、第二部において、「黒人写真史」の試みをしている点です。具体的には、20世紀前半では、ゴードン・パークス(Gordon Parks)とジェームズ・ヴァン・デル・ゼー(James Van Der Zee)の2人が取り上げられています。

「黒人写真史」というものは、試みのレベルであっても、日本語では初めてかもしれません。他の専門家のかたの反応も含めて、今後に期待したいと思います。「黒人写真史」は、はじめは「アメリカにおける黒人写真史」であっても仕方ないと思いますが、その道の先には「アフリカ写真史」が見えてきていると思いますので、その点からも強く関心を持っています。

ただ、個人的には、その前に日本で(日本人が)考えるべきは、「アジア写真史」ではないだろうかとおそれながら思います。それも、中国・韓国はおろか、東南アジアに限ることすらせずに、インドなどの南アジア、イスラム・中東を含む西アジアまでにおよぶ「全アジア写真史」を。極めて困難な道ではありますが、どなたか、この分野に手を染めていただけないものでしょうか?

 

この港千尋さんの本には、これ以外の点も含めて写真について考えていくための様々な手がかりが含まれていますので、さらに詳しく見てみたいと思っています。

 

 

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Akihoshi Yokoran
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