NHKのニュースで、東京上野の国立科学博物館が、新型コロナ感染拡大による入場者の減少、エネルギー価格高騰に伴う光熱費の上昇により、収蔵庫の光熱費の増加(「3億8000万円ほどと、2年前と比べて2億円近く増える見込み」ということは、要するに倍になったということですね)で、財政状態が急激に悪化し、これを補うための資金を集めるために、クラウドファンディングをしたという報道がなされていました。目標額に早々に達したので、とりあえずはよかったというところです。
国立科学博物館 クラファン初日に目標金額の1億円に達する
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230807/k10014155491000.html
ところで、話はここからです。
国立科学博物館は、実際に訪問なさったかたであれば、そういう印象をお持ちではないかと思いますが、とても混んでいます。新型コロナ前の話ではありますが、夏休みなどに行ったら、または、人気の企画だったら、1時間待ちなど普通にあります。当方が子供のころ、というと、ひとこえ40年以上になりますが、そんな前でもそうでした。あまりに混んでいるので、企画展は諦めて常設展にしたとか、国立科学博物館自体を諦めて替わりに近くの東京国立博物館に行ったとか、そういう経験をお持ちのかたも多くおられるのではないでしょうか?
確かに、新型コロナで入場者数は減少したのでしょうが、それでも、一般の美術館などに比べたら、入場者数が多いことは間違いないでしょう。入場料収入が全収入のうちのどれくらいの割合を占めるのかは明らかではありませんが、それでも、この差は大きいのではないかと思います。しかし、いずれにしてもあれだけ混んでいても資金的にはだめなのか、ということを感じます。
また、国立科学博物館の収蔵庫の規模が極端に大きく、その温度・湿度管理にかかる光熱費が非常に高額になることも間違いないでしょうが、十分とは言えないまでもそれに応じた程度の予算もあるでしょうし、他方、一般の美術館でも、収蔵庫の維持・管理には、それ相当のお金がかかり、光熱費の上昇により現在負担がかなり増えていることは間違いないのではないでしょうか?
そして、申し上げたいことは、次のようなことです。
国立科学博物館ですらこの状態であるということは、美術館、それも特に都道府県立・市町村立で入場者の少ないような(小規模の)美術館は大丈夫なのか、収蔵作品の管理が十分になされなかったり、極端な話、閉館するというようなことにはならないだろうか、という懸念です。
このあたりの実態についての情報はないように思いますので、ぜひそのような情報をどこかで発信・問題提起していただきたいと思うとともに、これに対して国や各自治体は十分な対応をお願いしたいところです。「美術館大量閉館時代」がやって来るのではないかという懸念もしております。
最後に、いろいろと書く気やこれ以上立ち入る気は全くありませんが(ある意味諦めておりますが)、国立科学博物館ともあろう組織が運営費用が足りなくてクラウドファンディングする、ということには極めて強い違和感があります。この事実は、日本の(政府にとっても、国民にとっても)恥ですね。そして、こんな事態になるまでほとんどの国民はそれを知らず、未だにそういう事態になった理由も問題点も責任も明らかにされておらず(マスコミがこれ以上追及するでしょうか?)、おそらくその事態をもたらした国のシステムの改善に国民が関わる手段もない(または、関わることが極めて困難である。せいぜいSNSなどで批判して、政府による改善を受け身で待つことしかできない)という状況、日本って、いったいどういう国なんでしょうか?