先にご紹介した東京国立近代美術館の企画に関連して、書籍のご紹介です。ただ、この企画とは必ずしも関連して刊行されたのではない、と思われます。
・生誕120周年 長谷川三郎と国立近代美術館(2235)(2026/07/19)
・生誕120周年 長谷川三郎と国立近代美術館~続報・《室内》シリーズについて(2236)(2026/07/26)
少し前ですが、次の本が刊行されています。
長谷川三郎 空想美術館
河﨑 晃一
ブックエンド
2026年6月
4180円
今までに長谷川三郎に関する展覧会(個展に限らず)は何回か開催され、それぞれ展覧会カタログは作成されていますが、それらと比べても、図版数や図版内容など網羅的であり、かなり充実しています。
実物をじっくり見ることができたら、また詳しくご紹介したいと思っています。
・モダン都市の写真史1923-1944(2247)(2026/08/30)
でご紹介した「モダン都市の写真史1923-1944」ですが、すでに読み終わっています。
とりあえず、次の2点のコメントを書いておきます。
・日本戦前期におけるファッション写真
この本では、戦前期における海外のファッション写真について言及されていました。確かに、いままでは日本の戦前期について語られることはなかったですね。しかし、当時「ファッション写真」と呼べるものがなかったわけではなく、海外と比べて「劣っていた」ため、「日本写真史」の中で言及されることがなかったと考えられます。
そういう意味では、海外と比べることは置いておいて、とにかく、日本戦前期のファッション写真を、そのままの状態で取り上げる、ことが必要だと思います。劣っていたとしたら、何が理由なのか、写真そのものの質なのか、それ以外の要因なのか、質的な問題があるとしたら、それが何なのかを正面から取り上げる、ということがあるべきでしょう。海外と比較して、具体的に「ここが劣っている」と分析してもいいと思います。
そもそも、戦前の日本において「ファッション写真」を撮影していたのが誰なのか、というまとまった情報すらありません。戦前の日本のファッション雑誌(それは何か?)を渉猟すれば、情報は間違いなく出てくるはずです。
・海外のグラフ雑誌をまとめた本が出ないものか?
この本では、戦前期の多くの海外のグラフ雑誌にも言及がありましたが、そういう目的の本ではないので系統的な紹介でもなく、詳しい説明もありません。他方、ほかの本ではほとんど紹介されることがない雑誌もありました。当時の外国のグラフ雑誌全体を取り扱う本が、少なくとも日本にはありません。どのグラフ雑誌がどのグラフ雑誌に、どう影響を与えているのか。どういう系統で、それぞれのグラフ雑誌が(国を超えて)つながっているのか、などをぜひ教えていただきたい。英米露仏だけではだめです。イタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、スイスなどヨーロッパは、およそすべての国を対象にしていただきたいと思います。
グラフ雑誌全体の情報を網羅的に取りまとめていただきたいところです。
とりあえず以上2点ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
先に、この本について、20世紀前半についても知らない作家が掲載されている、侮れない、というようなことを書きましたが、時に気になる作家2名を取り上げます。この2名が見開きで掲載されていますが、作家名と作品タイトルと制作年を掲載します。
巻末に掲載作家についての解説がありますので、そちらからも、欧文つづりと生没年のみ掲載します。
p420:アーロン・ダグラス/わたしの民を去らせなさい/1935-1939頃
p501:Aaron Douglas, 1899-1979
p421:グラック/メダイヨン/1936
p500:Gluck, 1895-1978
それぞれ、特徴的な経歴です。
これら以外については、また後日。
次の本が刊行されています。
完全解読 世界の美術
DK社・編
ダコスタ吉村花子・訳
河出書房新社
2026年9月
9350円(税込)
512ページ
大型の本で、過去から現代までの全時代をカバーするという、海外ではありがちな書籍ですが(大きく取り上げられている作品については、作品の構図や描かれているそれぞれのものの意味、また作品成立の背景などが詳しく説明されていることが特徴のようです)、書店で20世紀前半の部分の内容をチラチラ見ていたら、1920年代、1930年代の作品であっても記載された作家名がすぐに思い出せないような図版がありました。
ということで、「美術ファン一般が対象の本だ」などとあなどってはいけません。掲載作家は「300人以上」ということですが、もう少しじっくり見たうえで、またご報告したいと思います。
目次を掲載しておきます。
【目次】
はじめに
・
1 黎明期 紀元前2万8000年~紀元1400年
先史時代/メソポタミア文明/エジプト文明/インダス文明/ペルシャ文明/ノク文化/ギリシャ・ローマ文明/仏教美術/ヒンドゥー教美術/マヤ文明/西洋中世写本/ビザンティン美術/ヨルバ文化/宋・元の絵画/ゴシック 他
・
2 幻想と観察 1400~1600年
国際ゴシック/初期ルネサンス/イタリア・ルネサンス/北方ルネサンス/アステカ文明/マニエリスム/ベニン王国の美術/イスラム写本/明の絵画/雪舟・狩野派 他
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3 ドラマとディテール 1600~1800年
スペイン・バロック/ヴァニタス静物画/オランダ風俗画/インド細密画/ロココ/新古典主義/歌麿・写楽 他
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4 色彩と革新 1800~1900年
ロマン主義/写実主義/ラファエル前派/バルビゾン派/ハドソン・リバー派/北斎・広重/印象派/新印象派/ポスト印象派/象徴主義 他
・
5 抽象へ 1900~45年
フォーヴィスム/キュビスム/未来派/エコール・ド・パリ/表現主義/ロシア・アヴァンギャルド/抽象絵画/バウハウス/ダダ/シュルレアリスム/ハーレム・ルネサンス 他
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6 現代 1945年~現代
抽象表現主義/カラーフィールド・ペインティング/ポップ・アート/オプ・アート/新表現主義/先住民アート/グラフィティ・アート 他
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テーマ展示
裸体画/神話画/宗教画/自画像/静物画/風俗画/歴史画/風景画/肖像画/動物画/抽象芸術/戦争画
・
芸術家一覧
索引
写真クレジット
東京駅の丸の内の南側に、かつて吉田鉄郎設計・1931年竣工の東京中央郵便局があり、現在はそれを生かしつつ、JPタワーというビルが建設されており、低層階(B1~6F)はKITTE(切手?)と呼ばれる商業スペースとなっています。
そのほとんどのスペースは、商品販売ショップであったりレストラン・カフェであったりするのですが、そのうち2階と3階のそれぞれ一部が、「JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク(INTERMEDIATHEQUE)」という展示施設(主催は東京大学総合研究博物館)になっています。出入口はそれぞれの階にあり(正式には2階のようです)、内部でもつながっています(階段があって外に出なくても2Fと3Fが行き来できます)。
展示物は、博物館的なもので、剝製であったり、過去の生物の骨の標本であったり、植物標本であったり、生産機械の模型であったりと、東京大学総合研究博物館の所蔵品とのことです。ちなみに、入館料は無料です。
KITTE自体あまり行ったことがありませんでしたが、それにしても、こんなところに、こんな展示施設があるとは思いもしませんでした。今回はKITTEに別な用件で行ったのですが、たまたま発見しました。KITTEに行ったのははじめてではありませんでしたが、以前は全く気付きませんでした。また、行ったのは金曜の夜でしたが、お客さんはぱらぱらといるくらいで、多くの人がその存在に気付いているようではありませんでした。
せっかくですから、もっと宣伝をしたらいいのに、と強く思う次第です。気づいていない人も多くいるに違いありません。このままでは、あまり知られぬまま、閉館となってしまうのではないかとおそれれています。
さて以上は前置きで、本題はここからです。
このインターメディアテクの2階の一部に、館内の他のスぺースとは大きく雰囲気の異なる、「現代的な」展示スペースがあり、そのスペースで、タイトルに書きましたような写真展が開催されています。より詳しくは以下のとおりです。
JP IN CONSTRUCTION 2
写真家鈴木弘之に魅えた東京中央郵便局
2026年7月28日(火)~10月4日(日)
JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク2階「GREY CUBE(フォーラム)」
https://www.intermediatheque.jp/ja/press/view/id/PR081
この展覧会は、2012年竣工のJPタワーの建設現場を撮影した写真展です。ただ、一部、1931年竣工の旧東京中央郵便局の建設現場(1929年~1931年)を撮影した写真(10数点)も展示されています(ただし撮影者の記載はなし)。
もう少し調べてみると、本日4月~7月には「JP IN CONSTRUCTION」という企画(こちらは、旧中央郵便局のほうに焦点が当てられているようです)が開催されていて、今回はその続篇で、1930年ごろの写真作品は前回の企画の展示作品からの再構成だだということもわかりました。
https://www.intermediatheque.jp/ja/schedule/view/index/pasts/id/IMT0300
気づいていれば、前回の企画にも行ったのになと残念に思います。
今回の企画は、まだもう少し会期が残っていますので、ご関心のある方は、ぜひ来訪なさってください。