郷土の美術:坂田稔の写真(2222)(2026年4月12日)
でご紹介した坂田稔ですが、いまだにあまり資料がないんですよね。
写真集も、1988年に「造形写真1934-1941 坂田稔作品集」(あるむ)というものが刊行されていますが、これは、ほぼ「私家版」で、入手が難しいのはもちろん、閲覧することすら難しい資料ですが、その後は、まとまった作品集が刊行されていません。今回の企画を契機に、名古屋市美術館で展覧会図録として(または、もっと拡大して、坂田稔の基本資料として)刊行していただけないかと思うのですが、いかがでしょうか?
国書刊行会の次の本にも坂田稔の作品は掲載されているのですが、やはり物足りない。坂田稔に対象を絞った単行書が期待されます。
・「写真の都」物語 名古屋写真運動史1911-1972/竹葉丈・編著/国書刊行会/2021年
ところで、ウエブサイトの次のページで、2018年の名古屋市美術館の坂田稔展の紹介記事(美術手帖から)がありました。
坂田作品が写っている展覧会風景の写真と、坂田作品の数点が掲載されているので、特にご紹介します。
https://bijutsutecho.com/magazine/review/19278
前衛美術から民俗学へ至った写真家。副田一穂評 「坂田稔-『造型写真』の行方」展|美術手帖
副田一穂さんとは、この記事の当時は愛知県美術館学芸員だったかたですが、2026年の現在も愛知県美術館におられるようです。
まもなく、次の展覧会が開催されます。
もはやない国のかつてない光 東ドイツの女性写真家たち
Unprecedented Women Photographers from the GDR (German Democratic Republic)
神奈川県立近代美術館 葉山 展示室1、2、3a、4
2026年6月13日(土曜)–8月30日(日曜)
https://www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2026-unprecedented-women-photographers-from-the-gdr/
戦後の企画ではありますが、非常に特徴的、画期的な企画なので、あえてご紹介します。
内容は、タイトルの通り「旧東ドイツの女性写真家」なのですが、取り上げられている作家15名は、以下のとおりです。
ティーナ・バーラ Tina Bara(1962–)
クリスティーネ・ベッカー Christine Becker(1956–)
ジビレ・ベルゲマン Sibylle Bergemann(1941–2010)
クリスティアーネ・アイスラー Christiane Eisler(1958–)
マーギット・エムリッヒ Margit Emmrich(1949–)
エーファ・マーン Eva Mahn(1947–)
ウーテ・マーラー Ute Mahler(1949–)
エリザベート・マインケ Elisabeth Meinke(1937–2006)
ヘルガ・パリス Helga Paris(1938–2024)
エフェリン・リヒター Evelyn Richter(1930–2021)
グンドゥラ・シュルツェ・エルドヴィ Gundula Schulze Eldowy(1954–)
マリア・ゼフツ Maria Sewcz(1960–)
ガブリエレ・シュテッツァー Gabriele Stötzer(1953–)
ブリギッテ・フォイクト Brigitte Voigt(1934–2025)
レナーテ・ツォイン Renate Zeun(1946–)
なお、リンクを貼った上記ページにはヒカリエホールの「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」と連携をしているということが記載されています(葉山の企画が笠原美智子さんによるというわけではないようですが)。「まなざしの奇跡」については、次の投稿をご参照ください。
まなざしの奇跡(2203)(2025年12月7日)
最後に、「女性写真家」という観点から、ぜひ戦前の内外の写真家をまとめてご紹介いただきたい。もう、そのような企画が十分に可能な時期だと思います。日本に限っても「戦前」で成立しうると考えています。
さて比較です。
「カラー版 西洋絵画史WHO’S WHO」のNo.244(ムンク)からNo.275(マグリット)までを「決定版 西洋画家図鑑」と比べてみました。
まず、「カラー版 西洋絵画史WHO’S WHO」だけにしか掲載されていない作家。「決定版 西洋画家図鑑」のほうが作家数が多いことから考えて、0(ゼロ)かと思っていましたが、3人もいました。確かに、「決定版 西洋画家図鑑」には、「ノイエ・ザッハリッヒカイト(新即物主義)」とラベリングされた作家は1人もおらず、「未来派」もボッチョーニだけという状況です。
257. カルラ
265. ココシュカ
273. ディクス
逆に、「決定版 西洋画家図鑑」だけにしか掲載されていないですが、意外な作家も含まれていました。
アルフォンス・ミュシャ(p271)アール・ヌーヴォー
ヘレン・シャルフベック(p275上)写実主義・表現主義:フィンランド
ヒルマ・アフ・クリント(p275下)抽象主義:スウェーデン
シュザンヌ・ヴァラドン(p283上)後期印象派、表現主義
アンリ・マティス(p287)フォーヴィスム
フランシス・ピカビア(p293上)抽象主義
マリー・ローランサン(p297下)エコール・ド・パリ
ロベール・ドローネー(p299下)キュビスム
藤田嗣治(レオナール・フジタ)(p300上)エコール・ド・パリ
ディエゴ・リベラ(p300下)メキシコ壁画運動
ジョージア・オキーフ(p301下)プレシジョニズム
クルト・シュヴィッタース(p304上)ダダイスム
モイズ・キスリング(p308上)エコール・ド・パリ
グラント・ウッド(p308下)リージョナリズム
シャイム・スーティン(p309上)エコール・ド・パリ、表現主義
ポール・デルヴォー(p310上)シュルレアリスム
サルヴァドール・ダリ(p313)シュルレアリスム
フリーダ・カーロ(p315上)シュルレアリスム
47人中18人もいました。含まれていない作家のイズムは多岐にわたりますが、エコール・ド・パリが4人、シュルレアリスムが3人というのが多いと思います。18人の中でも特にマティスとダリが「カラー版 西洋絵画史WHO’S WHO」に含まれていないという点が驚きです。
「決定版 西洋画家図鑑」ですが、その「まえがき」に当たる「365人の画家とめぐる美の歴史と記憶」にも触れられている次の本と、収録作家を比較してみました。もちろん、20世紀前半のみです。なお、次の本の収録作家は281人で、「決定版 西洋画家図鑑」とは異なり、必ず「1作家1ページ」の収録です。
カラー版 西洋絵画史WHO’S WHO
諸川春樹監修
利倉隆, 山浦英一編
美術出版社
1996年
2800円+税
295ページ
A5サイズ
まずは、この本の20世紀前半の掲載作家は以下のとおり。20世紀後半もとりあえず入れています。生没年などは入力しておりません。また、名前の前の番号は、本書で付せられている連番です。
(生年順)
221 セザンヌ
222 モネ
223 ルドン
224 バジール
225 モリゾ
226 ルノワール
227 ボルディーニ
228 レーピン
229 ルソー
230 カサット
231 カイユボット
232 ゴーガン
233 ゴッホ
234 ホドラー
235 サージェント
236 クリンガー
237 クノップフ
238 セガンティーニ
239 トーロップ
240 スーラ
241 アンソール
242. クリムト
243. フランツ・フォン・シュトゥック
244. ムンク
245. トゥルーズ=ロートレック
246. カンディンスキー
247. ノルデ
248. ボナール
249. ドニ
250. ルオー
251. ビアズリー
252. モンドリアン
253. マレーヴィチ
254. クレー
255. マルク
256. キルヒナー
257. カルラ
258. レジェ
259. ピカソ
260. ブラック
261. ボッチョーニ
262. ユトリロ
263. モディリアーニ
264. パスキン
265. ココシュカ
266. マッケ
267. シャガール
268. デュシャン
269. キリコ
270. シーレ
271. モランディ
272. エルンスト
273. ディクス
274. ミロ
275. マグリット
34人
276. デュビュッフェ
277. ロスコ
278. ベーコン
279. ポロック
280. リキテンスタイン
281. ウォーホル
6人
ふと気づいたのですが、ダリが含まれていませんね。驚きました。
さて、実際の比較はまた後日。
(つづき)
エルンスト・キルヒナー(p294上)表現主義
フェルナン・レジェ(p294下)キュビスム
パブロ・ピカソ(p295)キュビスム、シュルレアリスム
ジョルジュ・ブラック(p296上)キュビスム
ウンベルト・ボッチョーニ(p296下)未来派
モーリス・ユトリロ(p297上)エコール・ド・パリ
マリー・ローランサン(p297下)エコール・ド・パリ
アメデオ・モディリアーニ(p298)エコール・ド・パリ
ジュール・パスキン(p299上)エコール・ド・パリ
ロベール・ドローネー(p299下)キュビスム
藤田嗣治(レオナール・フジタ)(p300上)エコール・ド・パリ
ディエゴ・リベラ(p300下)メキシコ壁画運動
アウグスト・マッケ(p301上)表現主義
ジョージア・オキーフ(p301下)プレシジョニズム
マルク・シャガール(p302)エコール・ド・パリ
マルセル・デュシャン(p303)ダダイスム、キュビスム
クルト・シュヴィッタース(p304上)ダダイスム
マックス・エルンスト(p304下)ダダイスム、シュルレアリスム
ジョルジョ・デ・キリコ(p305)シュルレアリスム、形而上派
エゴン・シーレ(p306)表現主義
ジョルジョ・モランディ(p307)形而上派
モイズ・キスリング(p308上)エコール・ド・パリ
グラント・ウッド(p308下)リージョナリズム
シャイム・スーティン(p309上)エコール・ド・パリ、表現主義
ジョアン・ミロ(p309下)シュルレアリスム
ポール・デルヴォー(p310上)シュルレアリスム
ジャン・デュビュッフェ(p310下)アンフォルメル
ルネ・マグリット(p311)シュルレアリスム
マーク・ロスコ(p312)抽象表現主義
サルヴァドール・ダリ(p313)シュルレアリスム
バーネット・ニューマン(p314)抽象表現主義
フリーダ・カーロ(p315上)シュルレアリスム
フランシス・ベーコン(p315下)表現主義
ジャクソン・ポロック(p316)抽象表現主義
アンドリュー・ワイエス(p317上)リージョナリズム
ロイ・リキテンシュタイン(p317下)ポップ・アート
アンディ・ウォーホル(p318)ポップ・アート
全体で47人です。
なお、書籍には欧文つづりも生没年も(他に国籍も)記載がありますが省略しました、念のため。
各作家ごとに「イズム」が付いているのはある意味では便利なのですが、網羅的に記載することは無理なので問題がありますね。カンディンスキーを「抽象主義」だけに絞るのは無理がありますし、ピカソもピカビアも数個に限定するのは難しい。モランディも「形而上派」だけでは不十分です。
あと、20世紀だけを見ても北欧が増えていることが最近の特徴と言えるかもしれません。 具体的には、ヒルマ・アフ・クリントとか、ハンマースホイです。
他の類似書籍との比較は後日。