(つづき)
巻末の「図版クレジット」の部分に欧文つづりが記載されている場合もありましたが、残念ながら、全部ではありません。仕方がないので、ネット上で調べて、生没年とともに補いました。ただし、ウォレス・マーリー、ウォレス・マーリーとカタカナ表記に揺れがある「Wallace Marly」の生没年はわかりませんでした(グーグル検索だけではなく、実はAIも使ったのですが、見つかりませんでした。なお、これに関連して、AIについては、後日書きます)。
以上ですが、巻末に、「掲載作品リスト」だけでなく、「掲載写真リスト」も欲しかったですね。さすがに、この著者でも、そこまでの発想はなかったものと思われます。というか、そういう視点・発想でこの書籍を見ているのは、当方だけかもしれません。
それにしても、これだけの写真作品が掲載されているというのも、この著者ならではと言えるでしょう。
ちなみに、今回の欧文つづりなどの検索の過程で発見した次の展覧会企画があります。著者がこの展覧会を参考にしている可能性はありますが、写真家がかなり重複しているものの、完全には重複していないので、よくはわかりません。
‘Mirror Mirror…Frida Kahlo Photographs’
21 May– 12 September, 2015
Throckmorton Fine Art
New York
http://www.cassone-art.com/art-news/2015/05/photographs-of-frida-kahlo-go-on-show-in-new-york/
上記サイトでは、more than 30 rare and vintage photographs of Frida Kahloとあり
写真家名として、
The exhibition features vintage and rare images of Frida Kahlo by Gisele Freund, Nickolas Muray, Emmy Lou Packard, Diego Rivera, Juan Guzman, Peter Juley, Bernard Silverstein, Carl Van Vechten, Edward Weston, Lucienne Bloch, Manuel Alvarez Bravo, Lola Alvarez Bravo, Mayo Brothers, Leo Matiz, Fritz Henle and Hector Garcia– as well as several works on paper by Kahlo.
とあります。
なお、写真家のうち「ギジェルモ・カーロ」(Guillermo Kahlo、1871年-1941年、なお、Wikipediaでは、「ギリェルモ・カーロ」と表記されています)とは、フリーダ・カーロの父親で、19歳の時(1891年)にドイツから移民したハンガリー系ユダヤ人で、メキシコで成功した写真家だということです。
以前、No.2146でご紹介した「藤田嗣治」の写真にも撮影者の名前が記載されていました(ただし、この企画を紹介している雑誌等では、写真が掲載されていても、マダム・ドーラの名前が記載されていないものもあり)。このように、写真家名まで(しかも欧文つづりまで)記載するという例がもっと増えることを強く希望いたします。
最後に、この本の出版社である「東京美術」とは、あの「もっと知りたい」シリーズ(アート・ビギナーズ・コレクション)の大量の刊行を継続している出版社です。
次の本が刊行されています。
フリーダ・カーロ作品集
堀尾眞紀子著
東京美術
2024年10月
3600円
単に、フリーダ・カーロの作品集であったならば、ここでご紹介することはなかったと思います。
では、なぜご紹介しているのか。
それは、この本には、フリーダ・カーロやその関係者を撮影した(大半は20世紀前半の)写真が多数掲載されており、しかもその多くには撮影者の名前(ただし、欧文つづりがないことは残念です)と撮影年が記載されているからなのです。写真作品の多くは、1ページに1作品で掲載されており、著者が絵画作品と同様の重きを置いていることがうかがわれます。しかも、おや、と思うような写真家名もあり、当方がぴんと来ない写真家名もある。とにかく、撮影者名まで記載されているというのは、極めて珍しい。本書に掲載されているような「誰が写っているか」が問題とされる写真作品の場合、たいていは、「誰が撮影したか」については注目されないからです。著者の堀尾眞紀子さんが、特別な意図をお持ちだったのかもしれません。なお、このかたは、フリーダ・カーロについて、以前にも著書を刊行なさっていて、フリーダ研究では日本における第一人者です。
掲載されている写真作品は、具体的には、以下に列挙するとおりです。カラー作品にはカラー作品と記載しました。
p2:24歳のフリーダ:イモージン・カニンガム撮影、1931年
p4:フリーダ、コヨアカンにて:マヌエル・アルバレス・ブラボ撮影、1937年頃
p9:竜舌蘭の傍らに立つフリーダ:トニー・フリッセル撮影、1937年(カラー作品)
p11:カンヴァスに向かうフリーダ:マヌエル・アルバレス・ブラボ撮影、1937年
p12:フリーダの家族と親族。左端が男装のフリーダ、前列右は妹クリスティーナ:ギジェルモ・カーロ撮影、1926年
p16:18歳のフリーダ:ギジェルモ・カーロ撮影、1926年2月7日
p28:フリーダとディエゴ、サンフランシスコにて:エドワード・ウェストン撮影、1930年12月
p33:キスをするフリーダとディエゴ。デトロイト美術館のコートヤードにて、制作中のディエゴの壁画の前で:W・J・ステットラー撮影、1932年8月24日(W. J. Stettler, 1892-1956))
p38:窓辺のフリーダ。サンフランシスコにて:ポール&ピーターA・ジュレイ撮影、1930年頃(Paul & Peter A. Juley; Paul Juley, Paul Peter Juley, 1890-1975, Peter A. Juley, Peter Anton Juley, 1862-1937)
p45:サンフランシスコに上陸したフリーダとディエゴ:マヌエル・アルバレス・ブラーボ撮影、1930年
p46:フリーダとディエゴ・デトロイト、フォード・リバー・ルージュ工場にて:ルシエン・ブロッホ撮影、1932年(Lucienne Bloch, 1909-1999)
p57:《首飾りをつけた自画像》とフリーダ。ニューヨーク、バルビゾン・プラザ・ホテルにて:ルシエン・ブロッホ撮影、1933年
p34:サボテンの垣根の前に立つフリーダ。サンアンヘルにて:マーティン・ムンカッチ撮影、1934年
p66:ディエゴとフリーダ、サンアンヘルにて:マーティン・ムンカッチ撮影、1934年
p69:《ちょっとした刺し傷》とフリーダ。額にはまだ血痕のような絵の具は塗られていない:ウォレス・マーリー撮影、1938年頃(Wallace Marly, 生没年はわからず)
p73:フリーダ:イサム・ノグチ撮影、1930年代
p74:イサム・ノグチ:エドワード・ウェストン撮影、1935年
p75:フリーダ:イサム・ノグチ撮影、1930年代
p76:(左から)トロツキーの妻ナターリャ、フリーダ、トロツキー、マックス・シャハトマン。シャハトマンは、アメリカにおけるトロツキズムの党派、社会主義労働者党の創始者:撮影者記載なし、1937年
p80:(左から)トロツキー、リベラ、ブルトン:フリッツ・バッハ撮影、1938年(Fritz Bach, German, 1890-1972)
p81:トロツキーの亡骸を乗せた霊柩車と、それを見送る群集。メキシコシティ、トロツキーの葬列にて:フリッツ・バッハ撮影、1938年
p82:ディマスを見つめるフリーダ。ディマスはディエゴが名づけ親になった少年で、ディエゴの絵のモデルにもなった。この2年後に亡くなり、フリーダによる作品《死せるディマス》(右頁)がある:シルヴィア・サルミ撮影、1935年頃(Sylvia Salmi, 1909-1977)
p88:フリーダとニコラス・ムライ:ニコラス・ムライ撮影、1939年
p89:赤いショールのフリーダ。ニューヨークにて:ニコラス・ムライ撮影、1939年(カラー作品)
p90:フリーダとニコラス・ムライ。「青い館」のアトリエにて:ニコラス・ムライ撮影、1941年
p103:《傷ついたテーブル》(1940年)を描くフリーダ:バーナード・シルバースタイン撮影、1940年頃(Bernard Silverstein, Bernard G. Silverstein, Bernard Silberstein, Bernard G. Silberstein, 1905-1999)
p104:フリーダとディエゴ。「青い館」のアトリエにて:撮影者記載なし、1948年
p106:ピカソ館でのフリーダ。メキシコシティにて:フローレンス・アークイン撮影、1944年(Florence Arquin, 1900-1974)
p109:物思いに耽るフリーダ:ロラ・アルバレス・ブラーボ撮影、1944年頃
p121:《いつも私の心にいるディエゴ》を描くフリーダと、それを見守るディエゴ:バーナード・シルバースタイン撮影、1940年頃
p126:猿を抱くディエゴとフリーダ:ウォレス・マーレイ撮影、1948年(Wallace Marly, 生没年はわからず)
p144:食卓のフリーダとディエゴ。「青い館」にて:エミー・ルー・パッカード撮影、1941年9月(Emmy Lou Packard, 1914-1998)
p151:ベッドのフリーダ。両手にはたくさんの指輪が輝く:バーニス・コルコ撮影、1954年(Bernice Kolko, 1905–1970)
p154:「青い家」の庭に立つフリーダ:ジゼル・フロイント撮影、1951年
p156:ベッドのフリーダ。「青い館」にて:ジゼル・フロイント撮影、1951年
p157:デモ更新中のフリーダ。後列中央はディエゴ、その下はファン・オゴルマン:撮影者記載なし、1954年
p160:ベッドで絵を描くフリーダと、それを見つめる少年:ファン・グスマン撮影、1954年頃(Juan Guzmán (born Hans Gutmann, also known as "Juanito",1911–1982)
p174:青い館の中庭:ジゼル・フロイント撮影、1951年
p177:フリーダとディエゴ:ファン・グスマン撮影、1950年
p180:ショロ犬を抱くフリーダ:エクトール・ガルシア撮影、1952年(Hector Garcia Cobo, Héctor García Cobo, 1923-2012)
(以上、全40点、「ブラボ」と「ブラーボ」の表記の揺れは、原文のままです、著者撮影の作品は省略。)
これ以外に、p182からp185にかけての「年譜」のページに、16点の小さな写真が掲載されていますが、こちらについては、撮影者の記載は全くないため、省略します。
2025年度の展覧会予定として、次の企画を発見しました。
特集 中山岩太
兵庫県立美術館
第1期:2025年4月24日(木)~7月13日(日)
第2期:2025年7月18日(金)~9月28日(日)
第3期:2025年10月3日(金)~12月14日(日)
久しぶりの中山岩太展です。おそらく、以下の企画以来でしょう。
>甦る中山岩太:モダニズムの光と影/東京都写真美術館/2008年12月13日(土)-2009年2月8日(日)
一昨年2023年開催の「安井仲治展」とは異なり、「特別展」ではなく「コレクション展」の位置づけですが、会期が3回に分かれているというのは、「コレクション展」のスペースでは、「全貌」を紹介するには足りな過ぎて、2回でも足りないということでしょう。
3回に分かれているということは全体として内容が充実しているということを意味するでしょうから、その点に関しては望ましいと思います。しかし、関西に住んでいればまだいいのですが、それ以外の地域に住んでいる場合には、3回とも訪問することはなかなか困難です。本来は、美術館として、常設展(コレクション展)に関してもこの程度の企画を1回で開催できる程度のスペースを持っていることが望ましいと思うのですが、関西を代表する美術館の1つである兵庫県立美術館ですら、それは難しい、ということが現実なのでしょう。
では、1回だけ訪問するとして、どの回にするのがいいのでしょう? もしも、時系列的に紹介するという内容であれば、最後の第3回が最も充実していると言えるかもしれません。時系列的とも限りませんので、今後の情報次第ですね。
コレクション展ですから、図録は制作されないのだと思います。数ページの(無料配布される)パンフレットのようなものは制作されるかもしれません。確か、1995年に同館で「コレクション展」として開催された「ハナヤ勘兵衛展」では、出品リストを含んだ、そういう資料が制作されていたと思います。
また、コレクション展ですから、関東など他の地方への巡回もないでしょう。残念です。
まだ詳細な情報が出てきておりませんので、今後の発信に期待いたします。
よろしくお願いいたします。
なお、ご担当の学芸員は、相良周作さん、または、小林公さんでしょうか?
ところで、中山岩太もいいのですが、小石清展はどうなのでしょうか? むしろ、中山岩太展以上に永らく開催されていないのは、小石清展です。ぜひ、企画・開催をお願いいたします。
兵庫県立美術館にお願いするしかないのでは、と思っています(いや、もう1つだけ大阪中之島美術館が可能性があるかも)。
よろしくお願いいたします。
そろそろ、2025年度の各美術館の企画の情報が出はじめる時期ですね。
大阪中之島美術館の2025年度の企画が公表されていました。
その中から2件ご紹介します。
【展覧会名】新時代のヴィーナス!アール・デコ100年展
【会期】2025年10月4日(土)– 2026年1月4日(日)
【主催】大阪中之島美術館 ほか
【会場】大阪中之島美術館 5階展示室
女性と関わりの深いデザイン作品に焦点を当てる、ということのようですので、今までの「アール・デコ展」になかった特色がありそうで期待できます。
そしてもう1件。
【展覧会名】シュルレアリスム 拡大するイメージ 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ(仮称)
【会期】2025年12月13日(土)– 2026年3月8日(日)
【主催】大阪中之島美術館
【会場】大阪中之島美術館 4階展示室
こちらもデザインに重点があるようですが、面白そうです。
今後、詳細な情報がでてくることを待ちたいと思います。
巡回にも期待します。
いきなり、チラシに、(当方が大好きな)安井仲治の「斧と鎌」(1931年)が掲載されていて驚きました。
次の展覧会が、昨日始まりました。
BUTSUDORI
ブツドリ:モノをめぐる写真表現
滋賀県立美術館
2025年1月18日(土)~3月23日(日)
主催:滋賀県立美術館、京都新聞
特別協力:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
協力:東京国立近代美術館
助成:公益財団法人DNP文化振興財団
開館40周年記念ということです。所蔵品中心の企画ではないので、入場料は、一般で1200円もします。しかし、展示作品は200点以上ということですので、この入場料に見合う内容だと予想できます。「モノ」というテーマに絞られていますが、実際には、以下の出展作家のリストを見ればわかるように、写真表現約200年を追う「小写真史」的な内容になっています。他館に巡回してもいいような充実した内容であることが期待できます。
https://www.shigamuseum.jp/exhibitions/6277/
https://www.shigamuseum.jp/events/9497/
出展作家は、以下のとおりです。
(50音順・敬称略)
石内都、入江泰吉、岩宮武二、植田正治、潮田登久子、大辻清司、小川一眞、小川晴暘、オノデラユキ、恩地孝四郎、金丸重嶺、川内倫子、木村専一、後藤敬一郎、今道子、堺時雄、坂田稔、坂本万七、塩谷定好、島霞谷、島村逢紅、下郷羊雄、鈴木崇、高田皆義、高山正隆、冨永民生、土門拳、永田一脩、中山岩太、名取洋之助、野島康三、福田勝治、藤井保、藤本四八、淵上白陽、ホンマタカシ、安井仲治、安村崇、山沢栄子、山本悍右、山本牧彦、横山松三郎、吉崎一人、渡辺淳
なお、本展の企画は、芦髙郁子さんです。
シンポジウムも開催され、光田ゆりさんも登場なさいます。
最後に、ウエブサイトには出品作品リストが出ていないようですが、今後公開されるということですので期待しています。