そろそろ2023年度の展覧会の情報が出て来ていますので、20世紀前半に関わりそうな企画を2件まとめてご紹介します。
<1>
「前衛」写真の精神: なんでもないものの変容. ~瀧口修造、阿部展也、大辻清司、牛腸茂雄~
千葉市美術館:2023年4月8日(土)~5月21日(日)
富山県美術館、新潟市美術館、渋谷区立松涛美術館の3館にも巡回
ネット上では情報がまだありませんが、もしかすると、戦前については、ほとんど含まれていないかもしれません。それでも、顔ぶれはすごい、というか非常に癖のある人脈で、楽しみです。
<2>
ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ
アーティゾン美術館:2023年6月3日(土)~ 8月20日(日)
https://www.artizon.museum/exhibition/detail/557
私立の美術館だからか、さすがに情報提供が早いですね。規模的にやや「小振り」という可能性はありますが(展示作品についての詳細情報はまだありません)、重要な企画となることは間違いありません。
新収蔵作品だという、フランティセック・クプカの《赤い背景のエチュード》1919年頃が掲げられていて、クプカの作品はなかなか目にすることがないので、目を引きます。
なお、この美術館については、旧ブリジストン美術館の時代から展覧会を見たことがないので(前を通ったりミュージアムショップに行ったりしたことはありますが)、これを機会に訪問してもいいかもしれません。古賀春江という観点からも、注目すべき美術館です。なお、古賀春江については、久留米市美術館(旧石橋美術館)のほうがより充実しているということかもしれませんが、よく理解できていません。
本年もよろしくお願いいたします。
恒例の「5大ニュース」です。
今回は、以下のとおり選んでみました。
<展覧会>
・アヴァンガルド勃興(1998)
これは展覧会でありますが、同時に書籍でもあります(2005)。素晴らしい内容でしたが、個人的には、すでにこの次はどういう方向での企画になるのかを考え始めています。
・写真史家・金子隆一の軌跡(2010)
行きたかったのですが、まったく行くことができませんでした。展覧会カタログも入手し損ねました。
https://mem-inc.jp/2022/05/12/kaneko_jp/
<書籍>
・帝国日本のプロパガンダ(2012)
入手したものの、まだ読むことができていません。
書籍の「次点」として、「舞台の面影」(2007)を挙げておきます。もう1回この場所で詳細な感想を書いてみたいのですが、非常にいい本ながら、20世紀前半が十分にカバーされていないので、安部豊さんに焦点を絞っていただくなどの続篇を非常に強く期待するところです。
<その他>
・大阪中之島美術館開館(1989)
今後に強く期待いたします。特に、関西の昭和戦前期の写真を集大成するような企画を。
・「個人向けデジタル化資料送信サービス」の開始(2006、なお、2000)
さらに、対象拡大を希望いたします。
なお、過去の「5大ニュース」は以下の通りです。
2020年:1916(2021年1月3日)
2018年:1779・1780・1781(2018年12月31日)
2017年:1689~1692(2018年1月7日)
2016年:1549~1552(2017年1月2日)
2015年:1420~1423(2016年1月3日)
2014年:1219・1220(2015年1月4日)
2013年:1147 (2014/2/2)
2012年:1084(2013/1/6)
2011年:1027(2012/1/10)
2010年:957(2011/1/2)
2009年:892(2010/1/10)
2008年:821(2009/2/1)
2007年:744(2008/ 1/27)
2006年:650(2007/ 1/ 3)
2005年:580(2006/ 1/ 1)
2004年:493(2005年1月2日)(「その他」の最後の部分)
次の展覧会が開催予定です。
「キュビスム・レボリューション」展
2023年10月3日~2024年1月28日:国立西洋美術館
2024年3月20日~7月7日:京都市京セラ美術館
キュビスム全体を概観する久しぶりの企画のようで、非常に面白そうです。
会期がまだ先だからなのでしょうが、国立西洋美術館のウエブサイトでも京都市京セラ美術館のウエブサイトでも、何も情報が見つかりません。やはり、年度をまたがっているからでしょうか、国立や公立の美術館の情報は非常に遅いですね。国立西洋美術館などは、この企画の前の2023年9月までの企画の会期までは掲載されているのですが(しかし、詳細情報はない)・・・。
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/upcoming.html
すでに世の中に情報が出始めているのですから、会期や主要作品など、年度をまたがっていても、早め早めに情報を出していただきたいものです。
ところで、「京都市京セラ美術館」については、名前を見かけることが多く、何の美術館であろうかと以前から気になっていたのですが、今回この企画について調べてみて、旧京都市美術館が、2017年からこの名称に変更されていたということを初めて知りました。50年間の契約だそうです。野球場などの名称のようで、面白い試みですね。
遅ればせながら、また、戦後についての企画ではありますが、次の展覧会が開催中です。
藤野一友と岡上淑子
福岡市美術館
会期 2022年11月1日(火)〜2023年1月9日(月)
https://www.fukuoka-art-museum.jp/exhibition/fujinookanoue/
藤野一友(1928-1980)と岡上叔子(1928-)は夫婦で、ともに、シュルレアリスムという観点からは、決して忘れてはならない作家です。特に、藤野一友の名前を見たのは、いったい何十年ぶりかというところで、最初にその作品を見たときに受けた感覚がよみがえる感じです。
お近くのかたは、ぜひ足をお運びください。
戦後ですが、シュルレアリスムまたフォトモンタージュという観点から、あえてご紹介いたしました。
なお、本展担当の学芸員は、正路佐知子さんというかたのようです。
アジア遊学146
民国期美術へのまなざし
辛亥革命百年の眺望
瀧本弘之 編
勉誠出版
ISBN 978-4-585-22612-3
刊行年月 2011年10月
判型・製本 A5判・並製 240 頁
定価:2,640円(本体 2,400円)
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=&products_id=100042
目次
序説 民国期美術に向けた「断想」 瀧本弘之
一、伝統藝術の地殻変動
金城と一九二〇年代の北京画壇 戦暁梅
日中美術交流最盛期の様相 吉田千鶴子
書画文墨趣味のネットワーク 松村茂樹
民国期における書画骨董の日本への将来をめぐって
─アロー号事件から山中定次郎・原田吾朗まで 風見治子
ある外交官が見た中国近代絵画
─須磨弥吉郎の東西美術批評を手がかりに 呉孟晋
二、新興藝術の動向
魯迅と中国新興版画 奈良和夫
傅抱石と新興版画の周辺
─『木刻的技法』の出版をめぐって 瀧本弘之
劉海粟と石井柏亭
─『日本新美術的新印象』と「滬上日誌」をめぐって 東家友子
中華独立美術協会の結成と挫折
─一九三〇年代の広州・上海・東京の美術ネットワーク 蔡濤(大森健雄・訳)
中国人留学生と新興木版画
─一九三〇年代の東京における活動の一端を探る 小谷一郎
三、美術における周縁分野の拡大
戦前に「剪紙の美」を追い求めた日本人
─柳宗悦、中丸平一郎から伊東祐信まで 三山陵
「アジアの旅人」エリザベス・キース
─英国人女性浮世絵師誕生までの活動を追って 畑山康幸
満洲に活躍した異色玩具コレクター
─須知善一の数奇な生涯とその遺産 中尾徳仁
海を超えた美術
─廈門美専・南洋美専の創始者、林学大をめぐって 羽田ジェシカ
あとがき 瀧本弘之