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開催してほしい展覧会(20世紀前半篇)

歴史と写真(1899)

写真史に関した本を探していると、しばしば、「写真の歴史」ではなく、「写真で見る歴史」の本だったということで、がっかりすることがあります。要するに、写した側(写真家)ではなく、写された側(写された対象)のほうに(または、そちらだけに)重点を置いている資料です。写されているのは、歴史上の人物であったり、街並みであったり、歴史的な事件や行事であったり、、、。しばしば、誰が撮影したかがわからなかったり、わかっていても示されていなかったりします。

 

では、このような写真作品は、歴史に関する資料としては価値があることは間違いないにしても、写真史的には価値がない、または価値が低いでしょうか?

いや、当然ですが、そんなことはありません。いわば、「芸術としての写真」と比べても、ほぼ同じ価値があるということが原則だと思います。ただし、どう取り扱っていくのか、写真史の中にどう位置付けていくのかについては、正直なところ当方にはよくわかりませんし、いまのところは、「写真史」という世界にはほぼ存在せず、世の中でも「写真史」という観点からのとらえ方はまだまだ一般化していないと思いますので、今後の十分な検討が必要でしょう。美術館が取り扱う場合には、博物館との棲み分けが必要かもしれませんし、美術館と博物館がコラボレーションができる可能性があるという意味では、新しい動きにつながるかもしれません。

 

このような問題を正面から取り上げているわけではなさそうですが、問題検討のヒントとなるかもしれない本が間もなく刊行予定です。

次の本です。

 

中国革命と写真;黎明期から文革まで

岡井耀毅・著, 岡井禮子・編

彩流社

ISBN-10: 4779127009

ISBN-13: 978-4779127007

発売日: 2020/8/25

2750

 

目次

はじめに 岡井禮子

本書によせて 田沼武能(日本写真家協会前会長)

第一章 黎明期 民主独立闘争の中で目覚めていく中国写真界

第二章 発展期I 芸術から報道へと傾斜していく激動の時代

発展期II 先鋭化するナショナリズムとニュース写真

第三章 展開期 革新勢力に呼応した「国防写真」

第四章 苦難期I 革命の聖地延安を目指した映画人・写真家たち

呉印咸が撮影した延安の中国共産党軍〈1938 ~ 1943年〉

苦難期II 『中国の赤い星』が世界に知らせた革命の大義

苦難期III 延安から新政府樹立まで

──革命を支援した解放区の写真政策

苦難期IV 吹き荒れる文革の嵐と写真家たち

第五章 開放期 聞こえはじめた自由化への胎動

中国近現代写真関連年表

参考文献・写真資料

あとがき 岡井禮子

 

これは、従来から多く刊行されている、単純な「写真で見る歴史」の本ではありません。

目次から見ると、田沼武能さんが「本書に寄せて」を書いておられるし、「中国写真界」「写真家」「写真政策」という言葉が見え、かなり「写真史」に重点が置かれており、「年表」も「写真関連年表」です。大いに期待できます。「写真政策」などは、写真史的な用語でいえば、「プロパガンダ」にほかなりません。

実物を見てから、またご紹介したいと思います。

 

なお、この辺り、「国宝ロストワールド(1857」もご参照ください。

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Akihoshi Yokoran
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