現在開催中のミロ展の情報を見ていたら、Joan Miroに対して、「ジュアン・ミロ」という表記があって、「あれ、間違っている?」と思ったのですが、実は、間違っていなくて、
ジョアン・ミロ
ジュアン・ミロ
の2つの表記があって、いずれも間違いではなく、最近はむしろジュアン・ミロが優勢になりつつあるようです。「Joan」というつづりだから、「ジョ」だと思い込んでいるとそうでもないということで、名前の読み方は難しいものです。
さらに、かつては、
ホアン・ミロ
という表記もあったと思うのですが、これは、スペイン語の中でも、カスティーリャ語式の読みだそうで、ミロの出身地の言葉であるカタルーニャ語では、「ジョアン・ミロ」か「ジュアン・ミロ」なのだそうです。
そうだとすると、Juan Grisも
ホアン・グリス(フアン・グリス、ファン・グリス)
と呼ばれることが多いと思うのですが、このままで大丈夫かなと調べてみると、どうやらマドリード出身なので、この作家の場合はこれが正しいようです。
名前の読み方はややこしい。
慎重に考えねばなりません。
パウル・クレー展の関東への巡回先の情報がないか気にしていたのですが、何と、関東への巡回はありません。最後は、静岡市美術館です。
パウル・クレー展 創造をめぐる星座
愛知県美術館:2025年1月18日(土)〜3月16日(日)
兵庫県立美術館:2025年3月29日(土)〜5月25日(日)
静岡市美術館:2025年6月7日(土)〜8月3日(日)
https://static.chunichi.co.jp/chunichi/pages/event/paulklee_aichi/
結構驚きですね。
これから先に、新しく決まる可能性も残っていますが、可能性は低いのではないでしょうか。
関東や特に東京の個々の美術館がどうということよりも、関東全体として、会場が設定できないほど不足している、または、費用が負担できないほど苦境に陥っているということでしょうか?
他方、ミロ展は、東京都美術館だけで、巡回はない!ようです。
東京都美術館:2025年3月1日(土)~7月6日(日)
もしかすと、こちらは今後巡回先が出てくるかもしれません。しかし、それにしても、天下の「ミロ展」なのに、開催する側も訪問する側も「低調」と言わざるを得ません。
No.2149でご紹介した「ヒルマ・アフ・クリント展」が既に開始しております。
美術手帖で特集が組まれ(美術手帖では、昨年も一昨年も、しばらく展覧会企画に因んだ特集は存在しなかったのでは?)、芸術新潮でも特集が組まれていて、知名度の割に注目が集まっているようです。
展覧会には、当方も足を運びたいと思っておりますが、さて実現できるかどうか。
この企画に関して、特に関心があるのは、美術史の観点から見て、抽象絵画の系譜の中において、ヒルマ・アフ・クリントをどのように位置づけるのか、という点です。カンディンスキーは表現主義から、モンドリアンはキュビスムから、そして、これら2人とヒルマ・アフ・クリントは系統が異なるということなりそうですが、そうだとすれば、ヒルマ・アフ・クリントは「抽象絵画の第3の道」と評価できるのか? 例えば、アメリカのアーサー・ダヴとの位置関係もどうなるのか? これらの点について、この企画またはこの企画に関連して発表される文献により解き明かしていただければ、と思っております。
「先駆的」や「カンディンスキーよりも早い」という点ばかりが注目されているるような気がしますが、そればかりではなく、アフ・クリントには、抽象絵画の歴史、ひいては近代絵画史を見直す契機が潜んでいるのではないか、と思うのです。特に、「先駆的な抽象絵画」は、他にもあるのではないか、という気がしています。他の作家の作品についても、それを単なる模様や文様と分かつ役割を果たす「抽象への強固な意思」を発見することができるのではないか。そして、それを発見できていない今までの状況については、実は美術史側の問題が存在するのではないか。
アフ・クリントの作品・成立の経緯・その思想などを調べることは、様々な問題提起の可能性をはらんでいるのではないかと思っています。
遅ればせのご紹介ながら、次の展覧会が開催中です。
ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965
パナソニック汐留美術館
2025年1月11日(土)〜 3月23日(日)
主催:パナソニック汐留美術館、朝日新聞社
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、在日スイス大使館、一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会、港区教育委員会
特別協力:ル・コルビュジエ財団、大成建設株式会社
協力:株式会社カッシーナ・イクスシー、Echelle-1
会場構成:ULTRA STUDIO
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/
作品リストもチラシも掲載されています。
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/pdf/list.pdf
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/pdf/leaf.pdf
「活動前半期に焦点をあてた「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」展(国立西洋美術館、2019年)に続き、40歳代以降の円熟期の創作にスポットをあてる日本ではじめての試みです。」と紹介が始められています。
作品リストを見ると、作品数が100点程度と相当な規模の企画で、大きく期待できます。
会期はもうあまり残っておりませんので申し訳ありませんが、ご関心のあるかたはぜひ急いでお出かけください。
先にご紹介しましたように、生成AIで、写真家の名前の欧文つづりと生没年について回答を求めたところ、思った以上にいい結果が出ました。No.2054、No,2055で調べた2023年4月から、かなり性能が良くなっている可能性を感じました。そこで、同じ質問をして、その性能の向上具合を調べることにしました。
対象のAIは、欧文つづりと生没年を調べた時と同じ、次の3つ。
Chat GPT(Open AI)とGemini(旧称Bard)(Google)とCopilot(Microsoft)
さらに、質問は、No.2054と同じ、次の質問です。
『1920年から1945年までに活躍した最も重要な日本の写真家を10人挙げて下さい。名前は漢字表記で、また生没年も併せて記載してください。』
1)まず、Chat GPT(Open AI)の結果です。
『1920年から1945年に活躍した日本の写真家の中で、特に重要とされる10名を以下に挙げます。名前は漢字表記で、生没年も併せて記載いたします。
これらの写真家たちは、1920年から1945年の間に日本の写真界で重要な役割を果たしました。彼らの作品や活動は、日本の写真史に大きな影響を与えています。』
2)続いて、Gemini(旧称Bard)(Google)の結果です。
『1920年から1945年までに活躍した日本の重要な写真家10人を、漢字表記と生没年付きでご紹介します。
これらの写真家は、日本の写真史において重要な役割を果たし、後の世代に大きな影響を与えました。彼らの作品は、日本の社会や文化、人々の生活を捉え、時代を記録する貴重な資料となっています。』
3)最後に、Copilot(Microsoft)の結果です。
『こちらが1920年から1945年までに活躍した日本の写真家のリストです:
これらの写真家たちは、日本の写真史において非常に重要な貢献をしています。興味深いですね!どの写真家についてもっと知りたいですか?』
以上ですが、やはり、いろいろと問題が残っています。非常に評価が難しいですが、100点満点で何点くらいかを考えてみましょう。
1)Chat GPT(Open AI)
挙げられた10人中、大竹省二以外は、戦前の写真家ですから、かなり高得点と言わねばなりません。前回は10人中2人(木村伊兵衛と福原信三)しか戦前の写真家ではなかったので、目を見張るような「進化」です。しかし、「10人の戦前の写真家」に入っていてしかるべき、重要な写真家である安井仲治、中山岩太、小石清、野島康三が4人とも抜けています。この4人を落とすことはできないでしょう。以上から、60点としたいと思います。
2)Gemini(旧称Bard)(Google)
今回の3つのAIの中で最も悪い結果を出して来ました。10人中5人は戦後の写真家。しかも、川田喜久治の名前を間違えている。さらに、上に記載しました重要な写真家の4人、安井仲治、中山岩太、小石清、野島康三も含まれていない。これは、30店~40点でしょう。最後に、名取洋之助は、本当に「雑誌『LIFE』の日本人スタッフ」でしたっけ?
3)Copilot(Microsoft)
この回答は、3つのうち最も点数が付けにくいものです。写真家ではない「岡田桑三」が含まれている(しかし、「独逸国際移動写真展」の招致(村山知義とともに)という写真に関係した重要な活動もある)。それ以外に、戦後の写真家といえるのは川島浩1人だけ。ということは、残り8人は戦前の写真家といえることになり(実際には、植田正治が重複していて7人)、しかも、上記重要な写真家4人のうち安井仲治、中山岩太を含んでいるという、大きく評価できるポイントがあります。ところが、中山岩太の名前を間違えている(生没年も間違えている、なお安井仲治も生没年が間違っている)。安井仲治も藤本四八も植田正治も名前の読み方を間違えている(名前の読み方を書いてくれなどと、こちらから求めてはいないのだが?)。以上を踏まえて、せっかく安井仲治と中山岩太が入っているのですが、ChatGPTと同じ60点としたいと思います。
ちなみに、上に書いてあるものを除き、個別の生没年が正しいかどうかはいちいちチェックしていません。ただ、誘惑に負けて、最初の2人、植田正治と土門拳の生没年を確認しましたが、いずれも間違いでした。
以上ですが、ひとことで言えば、「このレベルでは、どのAIもまだまだ使えない」ということです。回答について評価できる人間が見て確認しないと、そのままの内容では、未だに怖くて使い物にならない、ということです。
加えて、予想できない間違いをするという点もAIの怖さとして感じました。例えば、「安井仲治」という名前はあっているのに、読み方も生没年も違うという間違い。名前があれば、ネット上でいくらでも情報があり、読み方も生没年も確認の方法があるはずなのに、結局間違っている。確認を怠ったのか、それとも、それ以外の理由があるのか不明です。人間のほうがかえって間違えないと思います。
なお、今回は、前回と同じ質問にするため、あえて「情報の出典」についての質問は追加しませんでした。「やすいちゅうじ」や「中山岩太郎」がどこから来た間違いなのか別途確認してもいいかもしれませんが、あまり生産的ではないでしょう。
他方、No,2055で試した質問は、次の通りです。
『写真家である高橋渡(1900-1944)の詳細な経歴を教えて下さい。』
前回(2024年4月)のChat GPTの間違いだらけの回答(あまりにひどくてこのブログに掲載もできませんでした)とは異なり、今回は、3つの生成AIとも、及第点の回答を出して来ましたので、ここには掲載いたしません。Wikipediaや東京都写真美術館のサイトを参照して回答を生成しているようです。少なくともWikipediaの記事などは、前回の時点にも存在していましたが、前回は参照を怠っているのですね。
また1年くらいたったら、生成AIに対して同じ質問(1920年から1945年までに活躍した最も重要な日本の写真家を10人)をしてみようと思います。「代表する10人」ような質問は、質問する側がよく知っている分野であれば、各生成AIの能力を比較して評価することに適した質問と言えるかもしれません。