以前、No,2045、No.2054、No,2055でChat GPTについて書いています。その際に試した例では、悲惨な結果でした。
その際とは違う整理だと思いますが、生成AIの問題点としては、大きく次のような点を挙げることができます。
・間違った回答をすることがある。しかも、「考察・見解・意見」の部分のみならず、「事実」の部分についても。特に、「事実」の場合には、その回答内容を全く知らない場合には、正しいのか間違っているのかを判断することができない。
・回答のリソースが、ネット上の限られた情報でしかない。これでは、十分な内容が期待できない可能性が高い。
とはいえ、生成AIは、急速にその性能を高めていると思います。今回、いい「ネタ」が出てきましたので、改めて生成AIが使い物になるのかどうかを確認するため、今回のフリーダ・カーロに関する写真家の欧文つづりと生没年を質問してみました。
テストに使った生成AIは、Chat GPT(Open AI)とGemini(旧称Bard)(Google)とCopilot(Microsoft)の3つです。
公平に比較をするため、次の同じ3つの文章で、質問をしてみました。
質問1:20世紀半ばに活動していた写真家バーニス・コルコの欧文つづりと生没年を教えてください。また、その欧文つづりと生没年の根拠も併せて教えてください。
質問2:20世紀半ばに活動していた写真家バーナード・シルバースタインの欧文つづりと生没年を教えてください。また、その欧文つづりと生没年の根拠も併せて教えてください。
質問3:20世紀半ばに活動していた写真家バーナード・G・シルバースタインの欧文つづりと生没年を教えてください。また、その欧文つづりと生没年の根拠も併せて教えてください。
わざわざ「質問2」を入れている意味は、回答をご覧いただくとわかります。いわば、AIへの「いじわる」です。逆に言えば、「質問3」は「質問2」で間違えたAIへの「おまけ」です。「質問2」で間違えなければ、「質問3」は使いません。
あらかじめ、当方が把握している情報は以下のとおりです。
バーニス・コルコ(Bernice Kolko, 1905–1970)
バーナード・シルバースタイン(Bernard Silverstein, Bernard G. Silverstein, Bernard Silberstein, Bernard G. Silberstein, 1905-1999)
さて、それぞれの回答は以下のとおりです。
Chat GPT(Open AI)の回答
回答1:20世紀半ばに活動していた写真家「バーニス・コルコ」の欧文つづりは「Bernice Kolko」、生没年は1905年から1970年です。この情報は、メキシコの国立芸術院(Instituto Nacional de Bellas Artes y Literatura)の公式ウェブサイトに掲載されている彼女の伝記に基づいています。
回答2:申し訳ございませんが、20世紀半ばに活動していた写真家「バーナード・シルバースタイン」についての情報を見つけることができませんでした。お名前の綴りや活動時期、関連する作品など、さらに詳しい情報をお持ちでしたら、ぜひお知らせください。そうすれば、より詳しく調査し、適切な情報を提供できるかもしれません。
回答3:20世紀半ばに活動していた写真家「バーナード・G・シルバースタイン」の欧文表記は「Bernard G. Silverstein」、生没年は1905年から1999年です。
彼は1930年代にメキシコシティでドキュメンタリー写真家として活動し、フリーダ・カーロやディエゴ・リベラの写真を撮影しました。
また、彼の作品はアートネットのウェブサイトでも紹介されています。
Gemini(旧称Bard)(Google)の回答
回答1:アメリカ合衆国の写真家、バーニス・コルコ(Berenice Kolko)の生没年は以下の通りです。
彼女は20世紀半ばに活動し、主にメキシコで作品を制作しました。
これらの生没年の情報は、以下の資料を参考にしています。
これらの情報源は、信頼できる美術館や図書館のウェブサイトであり、バーニス・コルコの生没年に関する信頼性の高い情報を提供しています。
回答2:欧文つづり: Bernard Silberstein
生没年: 1905年 - 1999年
根拠:
その他:
参考資料:
回答3:質問する必要はないと判断
(つづく)
(つづき)
巻末の「図版クレジット」の部分に欧文つづりが記載されている場合もありましたが、残念ながら、全部ではありません。仕方がないので、ネット上で調べて、生没年とともに補いました。ただし、ウォレス・マーリー、ウォレス・マーリーとカタカナ表記に揺れがある「Wallace Marly」の生没年はわかりませんでした(グーグル検索だけではなく、実はAIも使ったのですが、見つかりませんでした。なお、これに関連して、AIについては、後日書きます)。
以上ですが、巻末に、「掲載作品リスト」だけでなく、「掲載写真リスト」も欲しかったですね。さすがに、この著者でも、そこまでの発想はなかったものと思われます。というか、そういう視点・発想でこの書籍を見ているのは、当方だけかもしれません。
それにしても、これだけの写真作品が掲載されているというのも、この著者ならではと言えるでしょう。
ちなみに、今回の欧文つづりなどの検索の過程で発見した次の展覧会企画があります。著者がこの展覧会を参考にしている可能性はありますが、写真家がかなり重複しているものの、完全には重複していないので、よくはわかりません。
‘Mirror Mirror…Frida Kahlo Photographs’
21 May– 12 September, 2015
Throckmorton Fine Art
New York
http://www.cassone-art.com/art-news/2015/05/photographs-of-frida-kahlo-go-on-show-in-new-york/
上記サイトでは、more than 30 rare and vintage photographs of Frida Kahloとあり
写真家名として、
The exhibition features vintage and rare images of Frida Kahlo by Gisele Freund, Nickolas Muray, Emmy Lou Packard, Diego Rivera, Juan Guzman, Peter Juley, Bernard Silverstein, Carl Van Vechten, Edward Weston, Lucienne Bloch, Manuel Alvarez Bravo, Lola Alvarez Bravo, Mayo Brothers, Leo Matiz, Fritz Henle and Hector Garcia– as well as several works on paper by Kahlo.
とあります。
なお、写真家のうち「ギジェルモ・カーロ」(Guillermo Kahlo、1871年-1941年、なお、Wikipediaでは、「ギリェルモ・カーロ」と表記されています)とは、フリーダ・カーロの父親で、19歳の時(1891年)にドイツから移民したハンガリー系ユダヤ人で、メキシコで成功した写真家だということです。
以前、No.2146でご紹介した「藤田嗣治」の写真にも撮影者の名前が記載されていました(ただし、この企画を紹介している雑誌等では、写真が掲載されていても、マダム・ドーラの名前が記載されていないものもあり)。このように、写真家名まで(しかも欧文つづりまで)記載するという例がもっと増えることを強く希望いたします。
最後に、この本の出版社である「東京美術」とは、あの「もっと知りたい」シリーズ(アート・ビギナーズ・コレクション)の大量の刊行を継続している出版社です。
次の本が刊行されています。
フリーダ・カーロ作品集
堀尾眞紀子著
東京美術
2024年10月
3600円
単に、フリーダ・カーロの作品集であったならば、ここでご紹介することはなかったと思います。
では、なぜご紹介しているのか。
それは、この本には、フリーダ・カーロやその関係者を撮影した(大半は20世紀前半の)写真が多数掲載されており、しかもその多くには撮影者の名前(ただし、欧文つづりがないことは残念です)と撮影年が記載されているからなのです。写真作品の多くは、1ページに1作品で掲載されており、著者が絵画作品と同様の重きを置いていることがうかがわれます。しかも、おや、と思うような写真家名もあり、当方がぴんと来ない写真家名もある。とにかく、撮影者名まで記載されているというのは、極めて珍しい。本書に掲載されているような「誰が写っているか」が問題とされる写真作品の場合、たいていは、「誰が撮影したか」については注目されないからです。著者の堀尾眞紀子さんが、特別な意図をお持ちだったのかもしれません。なお、このかたは、フリーダ・カーロについて、以前にも著書を刊行なさっていて、フリーダ研究では日本における第一人者です。
掲載されている写真作品は、具体的には、以下に列挙するとおりです。カラー作品にはカラー作品と記載しました。
p2:24歳のフリーダ:イモージン・カニンガム撮影、1931年
p4:フリーダ、コヨアカンにて:マヌエル・アルバレス・ブラボ撮影、1937年頃
p9:竜舌蘭の傍らに立つフリーダ:トニー・フリッセル撮影、1937年(カラー作品)
p11:カンヴァスに向かうフリーダ:マヌエル・アルバレス・ブラボ撮影、1937年
p12:フリーダの家族と親族。左端が男装のフリーダ、前列右は妹クリスティーナ:ギジェルモ・カーロ撮影、1926年
p16:18歳のフリーダ:ギジェルモ・カーロ撮影、1926年2月7日
p28:フリーダとディエゴ、サンフランシスコにて:エドワード・ウェストン撮影、1930年12月
p33:キスをするフリーダとディエゴ。デトロイト美術館のコートヤードにて、制作中のディエゴの壁画の前で:W・J・ステットラー撮影、1932年8月24日(W. J. Stettler, 1892-1956))
p38:窓辺のフリーダ。サンフランシスコにて:ポール&ピーターA・ジュレイ撮影、1930年頃(Paul & Peter A. Juley; Paul Juley, Paul Peter Juley, 1890-1975, Peter A. Juley, Peter Anton Juley, 1862-1937)
p45:サンフランシスコに上陸したフリーダとディエゴ:マヌエル・アルバレス・ブラーボ撮影、1930年
p46:フリーダとディエゴ・デトロイト、フォード・リバー・ルージュ工場にて:ルシエン・ブロッホ撮影、1932年(Lucienne Bloch, 1909-1999)
p57:《首飾りをつけた自画像》とフリーダ。ニューヨーク、バルビゾン・プラザ・ホテルにて:ルシエン・ブロッホ撮影、1933年
p34:サボテンの垣根の前に立つフリーダ。サンアンヘルにて:マーティン・ムンカッチ撮影、1934年
p66:ディエゴとフリーダ、サンアンヘルにて:マーティン・ムンカッチ撮影、1934年
p69:《ちょっとした刺し傷》とフリーダ。額にはまだ血痕のような絵の具は塗られていない:ウォレス・マーリー撮影、1938年頃(Wallace Marly, 生没年はわからず)
p73:フリーダ:イサム・ノグチ撮影、1930年代
p74:イサム・ノグチ:エドワード・ウェストン撮影、1935年
p75:フリーダ:イサム・ノグチ撮影、1930年代
p76:(左から)トロツキーの妻ナターリャ、フリーダ、トロツキー、マックス・シャハトマン。シャハトマンは、アメリカにおけるトロツキズムの党派、社会主義労働者党の創始者:撮影者記載なし、1937年
p80:(左から)トロツキー、リベラ、ブルトン:フリッツ・バッハ撮影、1938年(Fritz Bach, German, 1890-1972)
p81:トロツキーの亡骸を乗せた霊柩車と、それを見送る群集。メキシコシティ、トロツキーの葬列にて:フリッツ・バッハ撮影、1938年
p82:ディマスを見つめるフリーダ。ディマスはディエゴが名づけ親になった少年で、ディエゴの絵のモデルにもなった。この2年後に亡くなり、フリーダによる作品《死せるディマス》(右頁)がある:シルヴィア・サルミ撮影、1935年頃(Sylvia Salmi, 1909-1977)
p88:フリーダとニコラス・ムライ:ニコラス・ムライ撮影、1939年
p89:赤いショールのフリーダ。ニューヨークにて:ニコラス・ムライ撮影、1939年(カラー作品)
p90:フリーダとニコラス・ムライ。「青い館」のアトリエにて:ニコラス・ムライ撮影、1941年
p103:《傷ついたテーブル》(1940年)を描くフリーダ:バーナード・シルバースタイン撮影、1940年頃(Bernard Silverstein, Bernard G. Silverstein, Bernard Silberstein, Bernard G. Silberstein, 1905-1999)
p104:フリーダとディエゴ。「青い館」のアトリエにて:撮影者記載なし、1948年
p106:ピカソ館でのフリーダ。メキシコシティにて:フローレンス・アークイン撮影、1944年(Florence Arquin, 1900-1974)
p109:物思いに耽るフリーダ:ロラ・アルバレス・ブラーボ撮影、1944年頃
p121:《いつも私の心にいるディエゴ》を描くフリーダと、それを見守るディエゴ:バーナード・シルバースタイン撮影、1940年頃
p126:猿を抱くディエゴとフリーダ:ウォレス・マーレイ撮影、1948年(Wallace Marly, 生没年はわからず)
p144:食卓のフリーダとディエゴ。「青い館」にて:エミー・ルー・パッカード撮影、1941年9月(Emmy Lou Packard, 1914-1998)
p151:ベッドのフリーダ。両手にはたくさんの指輪が輝く:バーニス・コルコ撮影、1954年(Bernice Kolko, 1905–1970)
p154:「青い家」の庭に立つフリーダ:ジゼル・フロイント撮影、1951年
p156:ベッドのフリーダ。「青い館」にて:ジゼル・フロイント撮影、1951年
p157:デモ更新中のフリーダ。後列中央はディエゴ、その下はファン・オゴルマン:撮影者記載なし、1954年
p160:ベッドで絵を描くフリーダと、それを見つめる少年:ファン・グスマン撮影、1954年頃(Juan Guzmán (born Hans Gutmann, also known as "Juanito",1911–1982)
p174:青い館の中庭:ジゼル・フロイント撮影、1951年
p177:フリーダとディエゴ:ファン・グスマン撮影、1950年
p180:ショロ犬を抱くフリーダ:エクトール・ガルシア撮影、1952年(Hector Garcia Cobo, Héctor García Cobo, 1923-2012)
(以上、全40点、「ブラボ」と「ブラーボ」の表記の揺れは、原文のままです、著者撮影の作品は省略。)
これ以外に、p182からp185にかけての「年譜」のページに、16点の小さな写真が掲載されていますが、こちらについては、撮影者の記載は全くないため、省略します。
2025年度の展覧会予定として、次の企画を発見しました。
特集 中山岩太
兵庫県立美術館
第1期:2025年4月24日(木)~7月13日(日)
第2期:2025年7月18日(金)~9月28日(日)
第3期:2025年10月3日(金)~12月14日(日)
久しぶりの中山岩太展です。おそらく、以下の企画以来でしょう。
>甦る中山岩太:モダニズムの光と影/東京都写真美術館/2008年12月13日(土)-2009年2月8日(日)
一昨年2023年開催の「安井仲治展」とは異なり、「特別展」ではなく「コレクション展」の位置づけですが、会期が3回に分かれているというのは、「コレクション展」のスペースでは、「全貌」を紹介するには足りな過ぎて、2回でも足りないということでしょう。
3回に分かれているということは全体として内容が充実しているということを意味するでしょうから、その点に関しては望ましいと思います。しかし、関西に住んでいればまだいいのですが、それ以外の地域に住んでいる場合には、3回とも訪問することはなかなか困難です。本来は、美術館として、常設展(コレクション展)に関してもこの程度の企画を1回で開催できる程度のスペースを持っていることが望ましいと思うのですが、関西を代表する美術館の1つである兵庫県立美術館ですら、それは難しい、ということが現実なのでしょう。
では、1回だけ訪問するとして、どの回にするのがいいのでしょう? もしも、時系列的に紹介するという内容であれば、最後の第3回が最も充実していると言えるかもしれません。時系列的とも限りませんので、今後の情報次第ですね。
コレクション展ですから、図録は制作されないのだと思います。数ページの(無料配布される)パンフレットのようなものは制作されるかもしれません。確か、1995年に同館で「コレクション展」として開催された「ハナヤ勘兵衛展」では、出品リストを含んだ、そういう資料が制作されていたと思います。
また、コレクション展ですから、関東など他の地方への巡回もないでしょう。残念です。
まだ詳細な情報が出てきておりませんので、今後の発信に期待いたします。
よろしくお願いいたします。
なお、ご担当の学芸員は、相良周作さん、または、小林公さんでしょうか?
ところで、中山岩太もいいのですが、小石清展はどうなのでしょうか? むしろ、中山岩太展以上に永らく開催されていないのは、小石清展です。ぜひ、企画・開催をお願いいたします。
兵庫県立美術館にお願いするしかないのでは、と思っています(いや、もう1つだけ大阪中之島美術館が可能性があるかも)。
よろしくお願いいたします。
そろそろ、2025年度の各美術館の企画の情報が出はじめる時期ですね。
大阪中之島美術館の2025年度の企画が公表されていました。
その中から2件ご紹介します。
【展覧会名】新時代のヴィーナス!アール・デコ100年展
【会期】2025年10月4日(土)– 2026年1月4日(日)
【主催】大阪中之島美術館 ほか
【会場】大阪中之島美術館 5階展示室
女性と関わりの深いデザイン作品に焦点を当てる、ということのようですので、今までの「アール・デコ展」になかった特色がありそうで期待できます。
そしてもう1件。
【展覧会名】シュルレアリスム 拡大するイメージ 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ(仮称)
【会期】2025年12月13日(土)– 2026年3月8日(日)
【主催】大阪中之島美術館
【会場】大阪中之島美術館 4階展示室
こちらもデザインに重点があるようですが、面白そうです。
今後、詳細な情報がでてくることを待ちたいと思います。
巡回にも期待します。