次の本が最近刊行されました。
自然写真の平成30年とフォトグラファー 進化するネイチャーフォト
日本自然科学写真協会・編
海野和男、湊和男、中島宏章、武田晋一、森本一宏、三宅岳、GOTO AKI、戸塚学、石黒久美、伊地知国夫
小学館
2019年
「自然写真家250人と作品350冊を紹介」ということなので、この本自体も面白いのですが、この本は次の本の続篇として刊行されているとのことです。
自然写真50年史(自然写真五〇年史) ネイチャーフォト一五〇〇冊の歩み
竹村 嘉夫・豊田 芳州 著
文一総合出版
1995.10
ところが、こちらの本も、戦後(第二次世界大戦後)のみをカバーしていて、戦前はほとんどその内容に含まれていません。
戦前には、「自然写真」は存在しなかったのでしょうか?
確かに、自然写真はカメラという機器の技術的性能(例えば、短時間の露光や十分な光のないところで、どれだけ(細かいところまで)撮影できるか、など)によるところが大きく、技術の発展に伴って発展してきたという面はあります。が、しかし、戦前に自然写真がなかったわけではありません。
例えば、山岳写真については、東京都写真美術館で開催された「山を愛する写真家たち 日本山岳写真の系譜」(1999年)では、明治以来の系譜が紹介されており、
http://topmuseum.jp/contents/details/i_1999_2000/1999_008_b.pdf
2014年の「黒部と槍」では、冠松次郎と穂苅三寿雄という、戦前の巨匠二人が紹介されています。
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2145.html
他方、以前ご紹介しましたが、日本写真史(上)(鳥原学・中公新書)では、博物学・植物学の観点から、武田久吉と下村兼史が取り上げられています。(なお、この二人については、「自然写真50年史」でも「前史」ということで簡単に触れられています。)
さらに、自然を撮影した風景写真がピクトリアリスムと極めて親和性が高く、様々な作品が残されていることも周知のとおりです。
ということで、ぜひ、日本の戦前を(そして無理を承知で申し上げるならば海外の戦前も含めて)対象とした、本格的な「自然写真史」の書籍の刊行や展覧会企画をお願いしたいところです。
どうぞよろしくお願いいたします。