以前No.1962で、美術書は、図版と文章の両方が掲載されているので、ページをそのまま電子化することも多いのではないか、そうするとコンピュータの画面上では文字が小さくて読みにくいので、いちいち文字を拡大して読むことになり、手間もかかり、美術書は電子化(電子版)に向かないのではないか、ということを書きました。
ここで、もう1点、美術書が電子化(電子版)に向かないのではないかという点に思い至りました。
美術書の大きなポイントの1つは、申し上げるまでもなく「図版」です。最大のポイントといってもいいかもしれません。そして、図版が良質であることを「売り」にしている美術書も多いと思います。特に美術全集といったものは、最近はそもそも刊行されませんが、図版の質を重視し、印刷映えのする用紙を用いて、大きなサイズの図版を多く掲載していたりします。だからこそ、美術全集の本などは大きく重くて持ち運びが大変となり、電子化することで図書館で借りる時の大変さを解消できるのではないか、などと書いたこともありました。(No.1958。なお、入手しやすくなるという可能性についてNo.1941もご参照ください)
しかし、大きな図版、たとえばA4縦サイズでもかなり迫力がありますが、これをコンピュータの画面で表示したらどうなるでしょうか? 特殊なサイズのモニターをお使いの方であれば別でしょうが、通常のパソコンの画面であれば、A4縦のサイズなど表示できません。全体を見るためには縮小するしかありません。逆に元のサイズを維持しようとすると、今度は全体が画面に表示されません。
この点は極めて致命的であるように思います。
なお、電子版であれば、もともとのサイズよりも拡大することができ、そのことで細部は見やすくなるのかと思いますが、それとこれとは別の話です。
「図版」という特別な事情により、やはり美術書は電子化に向かないのではないか、なかなか電子版は普及しないのではないか、という懸念が生じてきます。
この点については、今後もさらに考えてみたいと思います。