ニューヨーク近代美術館で次の展覧会が開催されていました。
Fotoclubismo
Brazilian Modernist Photography, 1946–1964
May 8–Sep 26, 2021
MoMA
https://www.moma.org/calendar/exhibitions/5245
非常に興味深い企画です。日本では、さすがに開催困難な企画でしょう。
タイトルの「Fotoclubismo」はブラジルですからポルトガル語でしょう、自動翻訳をかけると「フォトクラブ」と出ます。このタイトルが言わんとしていることは、このmovementの担い手のほとんどがアマチュアだったということのようです。
具体的に取り上げられている写真家は以下の23人のようです。
Julio Agostinelli, Brazilian, born 1919
Gertrudes Altschul, Brazilian, born Germany. 1904–1962
Geraldo de Barros, Brazilian, 1923–1998
João Bizarro Da Nave Filho, Portuguese, born 1908
André Carneiro, Brazilian, 1922–2014
Dulce Carneiro, Brazilian, 1929–2018
Lucílio Corrêa Leite Filho, Brazilian, 1915–1990
Thomaz Farkas, Brazilian, born Hungary. 1924–2011
Ivo Ferreira da Silva, Brazilian, 1911–1986
María Freire, Uruguayan, 1917–2015
Gaspar Gasparian, Brazilian, 1899–1966
Marcel Giró, Spanish, 1912–2011
German Lorca, Brazilian, 1922–2021
Ademar Manarini, Brazilian, 1920–1989
Barbara Mors, Brazilian, born 1925
Paulo Pires da Silva, Brazilian, 1928–2015
Palmira Puig Giró, Spanish, 1912–1978
Eduardo Salvatore, Brazilian, 1914–2006
Aldo Augusto de Souza Lima, Brazilian, 1920–1971
Alzira Helena Teixeira, Brazilian, born 1934
Rubens Teixeira Scavone, Brazilian, 1925–2007
Maria Helena Valente da Cruz, Portuguese, born 1927
José Yalenti, Brazilian, 1895–1967
https://www.moma.org/artists/?exhibition_id=5245
MoMAのウエブサイト上で、展示された作品がかなり(ほとんど?)見ることができます。ご覧いただけばお分かりのとおり、これらの作品は、ぼぼ典型的なモダニズムの作品です。日本や欧米であれば、1920年代、1930年代に見られた表現です。明らかに、地域によって、時差があるのです。
ここで、申し上げたいことは、時間が経つに従い研究が進化するにつれ、また、世界の各地を見るにつけ、「20世紀前半」で時期を区切ることの意味が薄れてきているのではないか、ということです。日本の写真でさえ、1945年を境と考えることがだんだんと難しくなってきて、戦前戦後の写真が接続しているということがわかってきています。
第二次世界大戦の影響をあまり受けなかった(少なくとも戦場ではなかった)両アメリカ大陸であれば、なおさらでしょう。写真中心ではありませんが、「Art of the Forties」という展覧会が、正にMoMAで開催されたのは1991年で、すでに30年が経過しています。
https://www.moma.org/calendar/exhibitions/330
また、日本においても、「アジアのキュビスム」展が東京国立近代美術館で開催されたのは2005年ですが、この企画も、キュビスムの「時差」がある意味で示されていました。
https://www.jpf.go.jp/j/publish/asia_exhibition_history/35_05_cubism.html
要するに、「第二次世界短戦後だから別の時代」などと単純に切り分けられないということです。
最後に、モダニズムとはいえ、大変興味深いことに、よりつぶさに見ていくと、今回のブラジルの写真の中には、単純なモダニズムのみならず、明らかに戦後が入り込んできています。戦後へと直結している「ニュー・バウハウス的なもの」と、いわゆる「主観主義写真」と呼ばれる傾向です。その辺りも含めて、今一度、写真における第二次世界大戦という画期の意味・役割については、じっくりと考えてみなければならない、と思っています。