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帝国日本のプロパガンダ - 「戦争熱」を煽った宣伝と報道
貴志 俊彦
中公新書
2022/06発売
価格 ¥924(本体¥840)
大変興味深い本です。かならずしも、写真やデザイン(ポスターなど)に特化した本ではなさそうですが、プロパガンダ史全体を概観できるというメリットがありそうです。
なお、「NIPPON」や「FRONT」の図版はありませんが(本文でも触れられていないようです)、「写真週報」の表紙写真は掲載されています。他方、映画の役割が重要であったことがわかります。
以下目次です。なお、巻末の「参考文献」も、先に進むための手掛かりとなるため大いに便利です。
目次
まえがき
序章 戦争と宣伝
・帝国日本の空間イメージ
・帝国日本の崩壊
・プロパガンダ=宣伝の主体
第1章 日清戦争期―版画報道の流行(一八九〇年代)
1 戦争と同期する帝国日本のメディア、演劇
・「戦争錦絵」の登場
・錦絵業者の歓喜
・錦絵と新旧演劇との交差
・「平壌の戦い」と清軍イメージ
2 石版画が伝える大清帝国の「戦勝」報道
・『点石斎画報』に見られる愛国主義
・「戦勝報道」の根幹にあるもの
3 欧州メディアが伝える東アジアの戦争風景
・新聞の細密画
・写実的な戦場イラスト
・「戦争熱」の炎上と収束
第2章 日露戦争期―「戦勝神話」の流布(一九〇〇年代)
1 帝国日本に浸透する写真、絵葉書、活動写真
・広報外交とメディア・ナショナリズム
・戦況写真の登場
・写真利用の多様化
・絵葉書ブームの到来
・活動写真=映画の登場
2 ロシア帝国で流行する民衆版画と写真術
・農村部に広まったルボーク
・奉天会戦の悲劇
・都市部に普及した絵葉書や画冊
・「戦争熱」から「革命熱」へ
第3章 第一次世界大戦期―日独戦争をめぐる報道選択(一九一〇年代)
1 青島の戦いをめぐる報道
・戦争の発端
・日独報道合戦
・出版業界への波及
・戦争画・戦争映画の人気
2 南洋群島の日独戦争
・西太平洋への帝国日本の進出
・ドイツ人捕虜の視覚化
・プロパガンダ史の画期点
第4章 中国、米国の反日運動―報道と政治の関係(一九二〇年代)
1 済南事件と日貨排斥をめぐる日中の報道
・国民革命軍と日本軍の衝突
・戦況写真の空輸
・戦況写真のリアリティ
・映画ブームの到来
・上海での反日運動の組織化
2 排日移民法をめぐる日本の報道
・米国の反日運動
・「排米熱」の高まり
第5章 台湾霧社事件と満洲事変―新聞社と軍の接近(一九三〇年代前期)
1 露社事件をめぐる報道と政争
・セデック族の集団蜂起
・事件写真とニュース映画
・虐殺の連鎖
・露社事件の政治化
2 満洲事変報道と戦況写真
・満洲事変の捉え方
・『朝日』論説の大転換
・満洲を伝えるビジュアル・メディア
・満洲と台湾での戦況報道
第6章 日中戦争期―国家プロパガンダの絶頂期(一九三〇年代後期)
1 国産映画の流行
・写真宣伝
・映画のスペクタクル
・映画とプロパガンダ
・戦時下の博覧会ブーム
・軍事映画ブーム
2 複数の「満蒙問題」
・朝日所蔵の「富士倉庫資料」
・三つの重大事件
第7章 アジア太平洋戦争期―ビジュアル報道の衰退(一九四〇年代前期)
1 国家総動員体制下の言論封殺
・新聞メディアの「死」
・軍宣伝班と軍報道班
・大本営発表の虚構
・大東亜共栄圏構想の流布
・台湾沖航空戦の「誤報」
2 国防のための台湾の「内地化」
・台湾軍司令部の検閲
・特別志願兵制度
・台湾での徴兵
・南方戦線の報道
終章 敗戦直後―占領統治のためのプロパガンダ(一九四〇年代後期)
1 多様な「終戦」像
・「終戦の日」の解釈
・ひとつひとつの「終戦」
2 GHQ占領下の日本
・占領統治の開始
・占領下の検閲と教育啓蒙活動
3 米軍占領下の沖縄
・米軍政のもとで
・米軍のプロパガンダ工作
あとがき
参考文献
図版出典一覧
目次は以上です。
なお、著者の貴志俊彦さんとは、以前、JCIIの白山眞理さんと一緒に「華北交通」の写真についての次の本を刊行した方です。
京都大学人文科学研究所所蔵華北交通写真資料集成
貴志 俊彦/白山 眞理・編
国書刊行会
2016/11発売
価格 ¥28,600(本体¥26,000)