「1920年代・1930年代の日本の写真」というと、もうちょうど100年前になります。
昨年は、東京都写真美術館で「アヴァンガルド勃興」という非常に優れた企画がありましたが、あのような内容のことを言っているのでしょうか?
いいえ違います。
あの企画は、お気づきのとおり、東京、大阪、名古屋、福岡といった、大都市近辺の状況を紹介したものです。
それ以外の日本の各地については、情報が不足していてわからない点が多く残りますが、同様の新興写真や前衛写真が一般的であったとは、どうしても考えられません。とすれば、「日本」の中でも「それ以外の日本の各地」のほうが広いわけです。
さらに、仮に大都市圏であったとしても、新興写真や前衛写真を撮影していた人間は、先鋭的な(ごく)一部ではないか、と推測されます。新興写真や前衛写真を見て楽しんでいる人は多くいたのかもしれませんが、そのような人々が皆、そのような写真作品を制作しているとは思えません。
そう疑い出すと、「1920年代・1930年代の日本の写真」の一般的傾向が、あっという間によくわからないものになって来るのではないかと思います。
ぜひ、大都市圏以外の日本の各地域において、または大都市圏でもより幅広く、日本の1920年代・1930年代における写真がどういうものであったかについて、なお一層掘り起こしを実施していただきたいと思います。そして、ごく一般的な当時の人々が撮影していた「1920年代・1930年代の日本の写真」、より一般的な100年前の日本の写真を探り出していただきたい。そういう企画の実現を願っております。