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開催してほしい展覧会(20世紀前半篇)

美術書検索の新しい方法~書店法式・書棚法式(2042)

以前からも、ネット上の美術書の検索に対する様々な批判を書いていますが、今回は1つのアイデアをご紹介します。なお、これは、美術書に限られず、どのような分野の書籍についても使用可能なアイデアです。

 

ここで取り上げる批判は、書籍の検索が、タイトル(またはあらかじめ設定されているキーワード)、著者、出版社などの特定の情報や語句でしか検索できない、ということ。逆に言えば、キーワードというよりは、もっとあいまいな「テーマ」のようなもの、例えば「1920年代・1930年代の日本の前衛的な写真」などで検索できるようにならないか、という批判です。

 

なお、Webcat Plusの「連想検索」というものがありますが、これは、あくまでも「キーワード主義」であり、当方が期待しているものとは違うようです。例えば「1920年代・1930年代の日本の前衛的な写真」」で検索を試してみると、「1920年代」・「1930年代」という言葉を拾ってくれているようですが、必ずしも、「写真」に限定されておらず、また、何よりの問題は、ヒットする件数が膨大になってしまう、という点です。いつも必ず同じ件数ではないのかもしれませんが、当方が検索した時は、250万件を超えていました。この流れで考えると、件数が多いのは仕方がないとして、その中で、重要なのは、優先度をどう付してくれるのか(どういう順番で表示されるのか)、という点です。しかし、それは、「検索文」にくどくどと記載しないと駄目なのではないかと思います。その意味では、通常の検索と大きくは変わらないのでしょう。

http://webcatplus.nii.ac.jp/

ちなみに、「1920年代・1930年代の日本の前衛的な写真についての2000年以降に刊行された資料」と限定するつもりで再検索すると、ヒット件数が350万件以上とかえって増加してしまいました。

 

この方向はさらに検討すべきだとして、今回は一旦、その批判の方向はやめて、まったく違うことを考えてみます。

当方としては、ネットよりも実際の書店に足を運んだ方が、思いがけない本を発見できます。それは、何故でしょうか?

従来、書店で本を探す時に、自分がどうしていたか、また、現在もどうしているかを考えてみます。もちろん、ある特定の本を探しに行くときもあり、そのような場合には、大きな書店では、店内の「在庫検索機」で検索をして、示された書棚に向かいます。しかし、そうでない場合には、どうするでしょうか?

まず、美術や写真や建築の棚を見に行きます。それぞれの棚をざっと見ます。知っている本が並ぶ中、見慣れない本があったりしますので、それらの本を見ます。また、「平積み」の本を特に注意して見ます、新刊であったり注目されている本であったりするだうからです。

 

これです。これをネットで実現できないものでしょうか?

おそらく、ネット書店には、なかなかそんな発想は出てこないのではないでしょう。あたかも、アナログの書店に回帰するようなものだからです。しかし、11点を検索し続けねばならない従来のネット書店の検索とは異なる大きなメリットがあります。それは、あらかじめ選ばれ分類されて並べられている書籍を「ざっと」一覧することができる、そして、自分で選んでいるわけではないからこそ、「意外な」本を発見できる可能性が高い、ということです。

具体的に考えてみると、例えば、「美術」の本棚を作っていただき、それが閲覧できるようにしていただくのです。そして、どの本を選んで棚に並べるのかについては、例えば、「大型書店」「中型書店」「小規模書店」「美術書専門店」などの「書店のジャンル」を作っていただき、それぞれ何らかの基準を設定して選んでいただければいいわけです。そんな基準は実際にはなかなか難しいのかもしれませんが、しかし、現実には、世の中にたくさんある各書店では、すべて何らかの基準で本を選んでいるはずです。逆に、基準もなく、全部の本を並べるなどという発想は、ネット書店特有のものです。そして、完全に人間の手を離れることは困難かもしれませんが、AIを使えば、ある程度自動化できるはずです。「ジャンル」「発行日」「売れ行き」「専門的なのか一般向けなのか」などのデータの管理は、ネット書店が正に得意とすることで、それらに基づき、書店の棚のように並べれば、出来上がりです。

最大のネックかもしれないことは、ネット書店では「背表紙」の画像を持っていないのではないかということ。ネットで背表紙を掲載している例を、ほとんど見たことがありません。「書棚」にするためには、背表紙が必要になりますから。しかし、発想を変えて、背表紙ではなく、通常の表表紙を並べるということも可能でしょう。もちろん、サイバー上のスペースを多く使わなくてはならなくなり、本を探すこともより大変にはなるでしょうが。

 

これが実現すれば、利用者は書店感覚で本を選ぶことができます。いちいち検索する必要はなく、行きたい書店(規模や専門書店なのかどうかなど)を選択し、自分が見たい棚を選択すれば、書店に行った時のように、書籍の背表紙(または表表紙)をざっと見ることができます。また、「平積み」してある本は、特に注目することができます。

 

そして、究極的な希望としては、自分専用の書店や書棚(ジャンルを超えて、関心のあるすべての本が並ぶような)を作ってもらう、ということでしょう。美術というような非常に大きな枠ではなく、自分だったら特に関心があるという本が優先的に並ぶという書店・書棚です。もう、書棚ごと買い占めたくなるようなそんな品揃えをお願いしたい。現在、「ビッグデータ」を使っているといわれるAmazonなどでは「お薦め」の本やCDなどがネットのページに表示されたりメールで送られてきたりしていますが、その質の低さは目を覆うものがあります、先日(たまたま)調べた本をいまさらまたメールで知らせてきてどうするの、すでに持っている本を改めて知らせてもらってもなあ、などという感じです。当方が見たこともないような本を推薦してきておくれ、と心から言いたいところですが、現在のデータやAIのレベルではまだまだ無理なのでしょうか? とともに、自己批判的に書くと、もっと自分のほうから積極的に情報を提供しなければ(どんな本を希望している、どんな本を持っている)、AIにある程度以上の能力があったとしても、適切な選択や推薦は難しいのだと思います。その意味では、この「書店法式・書棚法式」でも、内容の充実を図るためには、日々情報を提供することが必要になるでしょう。そういう意味では、「検索」することは不要でも、やはり、ユーザー参加型のサービスであることは間違いありません。

 

なお、このような書店・書棚の美術分野では、もちろん、あらゆる国の洋美術書も含めて並べていただくことを想定しています。もちろん、今すぐは無理なのでしょうが。

 

さらには、現在、もう販売されていない過去の書籍も並ぶようにしていただきたい、もうこうなると書店を超えて「図書館」になるわけで、もちろん、中身の1ページ1ページも見られないと意味がないわけですが、このような本の中身を見ることもできるような、世界中のあらゆる本が所蔵されている、ネット上の自分専用の図書館ができること、それが最終的な希望ですね。これは、ジャンルを限らなければ、Googleが見ている夢と同じことになるのかもしれません。

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Akihoshi Yokoran
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