そろそろ、年度末が近づいてきていますので、来年度の各美術館(・博物館)の展覧会企画のスケジュールが出始めています。ただ、例年ですと、4月の年度開始直前まで公表されないというケースもあるので、まだまだ網羅的ではありません。
さて、これに関連して、以前から同じようなことを書いてきていますが、日本全国のこれからの展覧会のスケジュールを1回ですべて網羅的に検索できる、そういうようなサービスはないものでしょうか?(なお、本当の希望としては、「日本全国の」だけではなく「世界全体の」、また、「これからの」だけではなく、「過去のものも含めて」、ということなのですが、とりあえず、ここでは触れません。)
現在は、複数の美術館・博物館の展覧会情報をまとめているサイトがいくつかあるように見受けられますが、網羅的ではありません。結局は、1つ1つの美術館のサイトを見に行って、確認するしかないようです。その美術館の数が、10なのか、50なのか、はたまた100なのかは、調べる人によるでしょう。数が多ければ多いほど大変です。また、この検索方法には矛盾があって、希望する展覧会がどの美術館で開催するかわからないのに、はじめから美術館を特定しないと調べられない、という点です。結局、無限に時間がないと、または、仮に無限に時間があったとしても、網羅的に調べることは無理なのです。
そこで、どうしたらいいかを考えてみました。
まず、ある特定の組織が、また、ましてや特定の個人が、網羅的に情報を集めて発信するということは無理でしょう。中途半端になることが、容易に想像されます。ある程度以上の人数を抱えている組織であれば、マンパワー的には可能かもしれませんが、現在そういう網羅的な展覧会情報の発信がなされていないということは、コストの問題かもしれませんが、やはり不可能な側面が存在するのだと思います。
とすると、発想を逆転して、情報を発信する側が集めるのではなく、情報を発信する側に自動的に情報が集まって来る仕組みを作ればいいのです。展覧会情報に関するサイトを立ち上げ、その運営者が各美術館に情報提供を求めればいいわけです。セキュリティの問題があり得ますが、究極的には、サイトのページに各美術館から直接情報を入れてもらうようなシステムにすれば、運営側は、ほとんど何もしなくてもいいようになります。
かといって、誰でも運営者になれるかというと、例えば、当方個人が運営者を目指して、各美術館に情報を求めても、誰も応えてくれないでしょう。やはり、国や代表的な美術館、または大手の出版社のような、権威もあり、信頼も置けるような運営者である必要があります。
さて、こう書くと、簡単に実現できそうですが、これでもうまく行かないとしたら何が問題なのでしょうか?
まず、予算化などの問題があるでしょう。おそらく、このアイデア、2~3年はうまく行かないでしょう。とすると、年度ごとの予算、特に国や地方公共団体の予算にはなじみにくいでしょう。不可能ではないでしょうが、少なくとも、あまり乗り気になってくれるとは思えません。
もう1つすぐに考えられるのは、情報を出す側の各美術館の問題でしょう。すなわち、そんなものが必要だと考えていない、そういう発想がない、自分の美術館でウエブサイトを作成して公表しているのだから、それで十分だろうと。本気でそう考えているのだとしたら、自分で実際に探して見なさい、といってあげたいですね。「お題」として、例えば、2023年度に、「古賀春江」に関する展覧会が開催されるかどうかを、調べてください、と。どこの美術館で開催されるか、そもそも開催されるのかどうかもわからない、そんな企画を探す。完全に探そうとしたら、それがどんなに大変なことか、お分かりいただけると思います。要するに、どこまで調べても終わりがないのです。当方自身であれば、古賀春江ですから、神奈川県立近代美術館にでも質問をしてみるかな、と思いますが、いずれにしても、網羅的に検索するのは困難でしょう。さらに、それが、よりマイナーな作家であればどうするか、作家ではなく「テーマ」だとしたら、仮に特定の美術館に問い合わせをしようとしても、問い合わせ先の美術館すら見当がつかなくなるのではないでしょうか。そして究極的には、自分では思いつけないような作家であったりグループであったりテーマであったりすれば、今までも何回か書いていますように、ネット上の検索そのものになじまないわけですが、それでも、一覧になっていれば、相当に探しやすくなるでしょう。
あと、問題は「継続すること」です。ある程度以上の期間にわたる継続が必要ですが、それが保証できるのか? 50年継続できれば、過去の情報が蓄積され、自動的に「過去の展覧会情報」として活用できることになります。ようするに、長く継続できれば継続できるほど、価値は高まると思います。ただ、過去の展覧会の情報については、これからのスケジュールよりは、はるかに検索しやすく、ネット上の情報もそれなりに存在するため、要望は大きく減るかもしれません。
さて、ここまで書いてきましたが、やはり網羅的にしかも「ワンストップ」で各美術館の将来の展覧会を検索するなどということは、無理なんでしょうか? いずれにしても、どこかの組織が音頭を取っていただかないと、まったく進まないことだと思いますが、そのことが無理だということでしょうか?
なお、写真関係の展覧会だったら、かつてのアサヒカメラの情報が、比較的網羅的だったように思います。ただ、もう休刊してしまいました。また、月単位でしたので、ちょっと期間が短いですね。
それから、展覧会情報を美術館だけではなく、ギャラリーや画廊も含めて、かなり網羅的に掲載されている雑誌『ギャラリー』(ギャラリーステーション発行)があります。非常に重要な雑誌だと思います。しかし、美術館だけでも、美術展を目で調べるのは非常に大変です。また、月単位というのも、不満が残ります。
なお、展覧会のスケジュールの公表時期が遅いという問題については、No.2038で少し触れましたが(No.2040もご参照)、後日まとめてもう少し書きたいと思います。