遅ればせながら、直前になって初めて知ったのですが、渋谷の東急百貨店本店が2023年1月31日(火)で閉店、そのあとに「Shibuya Upper West Project」という再開発で、高層ビルを建てるそうです。そのため、Bunkamuraも2023年4月10日(月)から2027年度中(時期未定)まで長期休館ということで、その間も、一部、「ヒカリエ」9階のヒカリエホールなどで、展覧会を継続するとのことです。
https://www.bunkamura.co.jp/topics/6988.html
東急本店にはほとんど行ったことがなく、あまり印象はないのですが(むしろ、東急は東横店か日本橋店のイメージ)、1989年開館したというBunkamuraには、特に、ザ・ミュージアムだけではなく、B1の書店(丸善→Nadiff)に洋美術書が非常に多かったので、よく行きました。(渋谷Parcoにあった、「洋書ロゴス」とともに「はしご」しました。)
ザ・ミュージアムのほうも、今後再開するのですから、今ここで「思い出」を書くような場面ではありませんが、せっかくの機会ですので少し書いてみますと、セゾン美術館と比べると、先鋭さに欠ける、しかし、ときどき、「これは!」と思うような面白い企画がある、という感じで、何回か足を運んでいます。
以前もこの場で書いたかもしれませんが、その中でも、1992年(?)に開催された、「レニ・リーフェンシュタール展LIFE」については鮮烈な印象が残っています。展示されていた写真作品というよりは、むしろ、石岡瑛子さんによる、アート・ディレクション、会場設計の印象です。暗い会場全体の中で、天井からスポットで射される照明により浮かび上がる1点1点の写真作品、「写真展」というイメージから通常想像される設置された垂直な壁に写真が展示されているというものではなく、1点1点の写真ごとに作られた、縦方向直方体の「台」の上に、確かやや斜めに展示された各写真作品、そこに照明が照射されていて、幻想性さえ醸し出していました。とにかく一般の写真展(美術展)からはかけ離れたレイアウトで、大変驚いた記憶があります。ちなみに、石岡さんは、確か、これより以前に西武美術館(のちのセゾン美術館)で開催されたレニ・リーフェンシュタールの企画でも会場レイアウトをなさっていたので、おそらく、レニ・リーフェンシュタールがお好きなんでしょう。
あの、ザ・ミュージアムは、要するに、単なる天井の高い大きな「箱」型会場で、もともとは床の段差もなく(?)、手間やコストをかけさえすれば、どんな展示空間でも作り上げることができる、というものでした。そういう使い方は、今までなされていないのではないかと思いますが、舞台と椅子を置けばライブ会場やパフォーマンスの会場にもなるでしょうし、美術で言えば、極めて巨大なインスタレーション作品を1点だけ置く、ということもできるでしょう。ある意味、この石岡瑛子さんの方法は、この会場に対する1つの解答だったのだと思います。
バブル期に乱立した百貨店系の美術館の中で、今や東京で唯一残っているといっていいこの「Bunkamuraザ・ミュージアム」、この場所での再開を心待ちにしております。どういう全体設計になるのか、現在のものを踏襲するのか、変化をつけるのかについても興味深いところです。