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開催してほしい展覧会(20世紀前半篇)

100年前の「フェイク画像」(2067)

次の記事をNHKのサイトで発見しました。

 

100年前の「フェイク画像」 関東大震災でも拡散したデマ(2023621日付)

https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/select-news/20230619_01.html

 

この記事の基になっているのは、以下の論文です。

 

「関東大震災写真の改ざんやねつ造の事例」沼田清

https://www.histeq.jp/kaishi/HE34/HE34_103_113_Numata.pdf

『歴史地震』(歴史地震学会)第34号(2019年)

 

この論文の主題は、改竄や捏造ではありますが、むしろ、当方が非常に危ういと感じたのは、そういう意図的なものだけではなく、意図しない(キャプションなどの)「誤り(誤解)」と、改竄・捏造・誤りに気付けずに、(他意なく、悪意なく)複製して拡散してしまうという行為です。

 

現在も、複製や拡散はSNSで日常的に行われていることですが(というか、以前に比べ、複製や拡散は、非常に数が増加していると言えます)、その中で、過去の事例ではなく、現時点で進行中の新しい事項、すなわちフェイクニュース・フェイク画像(写真だけでなく、ニュース自体も)が大きな問題となっています。

例えば、当方も、戦前の日本の写真家Aの作品が写真家Bの作品としてSNS上で紹介されているといった最近のケースを見かけたことがあり、この誤った情報をSNS上で誰か(例えば、日本の写真をよく知らない外国人)が「孫引き」などして、それが連鎖的に継続しようものなら、もう何が真実かわからなくなってしまうおそれがあります。知らない情報の信頼性には非常に注意しなければなりません。

なお、やや異なる問題ですが、各種検索エンジンの「画像検索」において美術家・写真家の人名で検索すると、作品や顔写真が出てきますが、その作品や顔写真が、その美術家・写真家の作品や顔写真ではないことがあります。しばしばあることなので、多くの人は理解していると思います。「検索」は、ネットに掲載されている情報に基づく結果ですから、元の「掲載されている情報」が間違っていたら、「検索」も間違った結果になること、現時点ではやむを得ないことです。将来的に、画像に限らず、AIが間違った情報を排除するような検索になってくれることを強く望むとともに、検索をした人が、間違った検索結果をうのみしないこと(さらに拡散しないこと)を期待します。

 

なお、自分の写真作品に「手を加える」という行為自体が否定されるわけではないと考えています。例えば、デフォルマシオンやフォトモンタージュといった技法が否定されることはありません。むしろ問題なのは、制作された写真作品の取扱い方(提示の仕方)です。改変された写真作品を、(悪意のありなしにかかわらず)「真実」のように提示すること、そこに問題があるというべきです。この2つの違いについては、十分に注意しておかねばなりません。

そして、このSNSの時代、制作者にその意図がなかったとしても、いつの間にか(特に制作からかなりの時間が経っていると、当時の状況を理解していない者も増加し、そのような)第三者により、「改変作品」が(悪意があるにしろないにしろ)「真実」として取り扱われる危険性がかなり高まってしまうということにも、十分に注意せねばなりません。

要するに、「改変」は何でも構わないということでもなく、「改変」(特に、明らかに「真実」ではないとわかる(という点に人を惹きつける力のある)「改変」ではなく、「真実」と受け取られかねないようなタイプの「改変」)というのは非常に危険だということがわかります。制作する側も、充分な注釈をつけるなどの適切な対応が必要ということでしょう。

 

なお、今回の話題の発端は「関東大震災」で、「改変」は民間主導でしたが、「第二次世界大戦」になると。今度は日本政府主導の「改変」が横行するようになっていったのではないかと思います。

例えば、『FRONT』などに見られるような「改変」の一部は、すでに許されない領域に足を踏み入れてしまっているといっていいのでしょう。

 

画像の「改変」の危険性については、今後も注目していかねばなりません。

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Akihoshi Yokoran
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