すでに、昨日4月27日(土)に東京都美術館で開始している「デ・キリコ展」ですが、これに関連して、次の本が刊行されています。
芸術AERA―見れば見るほど深みにハマる快感デ・キリコ大特集
朝日新聞出版・編
朝日新聞出版
2024/04発売
価格 ¥1,848(本体¥1,680)
まさに始まったばかりの「デ・キリコ展」に合わせた特集ムックです。同展の主催の1つに「朝日新聞社」が入っていますので、相乗効果を狙っているのでしょう。
こういう展覧会企画にあやかったような本はどうも苦手、とも思うのですが、他でもないデ・キリコですので、今回はあえて、詳しく見てみました。
さすがに、それほど深い内容ではありませんが、図版も多く、「来日しないデ・キリコ ギャラリー」というページを設け1910年代の作品9点を紹介している点など、注目できる部分はありました。
ところで、このムックで、特に気になった点は、以下の2点です。
まず、このムックには、前述のデ・キリコの1910年代の作品に限らず、出展されない作品の図版や、デ・キリコ以外の作家の作品図版も掲載されています。そして、出品されない作品図版の下には、必ず「本展には、出品されません」としつこく注記が書かれています。あまりにしつこいなと思いましたが、これほど徹底しないと、勘違いする読者がいる、さらには、過去に編集部に対してクレーム(出品されると思って展覧会に行ってみたら、出品されていなかった、どうしてくれるんだ、といった)があったのかもしれません。何か、ぎすぎすしたものを感じます
次に、前出の「来日しないデ・キリコ ギャラリー」の作品9点ですが、このうち3点は、横長の作品で、おそらく、図版をなるべく大きく掲載したいという事情だったのではないかと思いますが、横向き、すなわち、本を90度回転させないと正しい向きにならないという配置になっています。
こういう場合、通常の美術書であれば、どうしていたでしょうか? おそらく「折り込み」という手法を使って、本を90度回転するということを防いでいたのかと思います。ムックに「折り込み」を期待するのは難しいのかもしれません。
「2点」と書いた癖にもう1つだけ、個人的な好みによるコメントですが、デ。キリコには、「ヘクトールとアンドロマケ(の別れ)」という有名な作品・モチーフがあって、生涯を通じて、20~30点は描いているのではないでしょうか? そういう意味では、このムックでも、もっと大きく取り上げるべきだったのかと思います。特に、1910年代の「ヘクトールとアンドロマケ」も掲載していただきたかった。
ところで、「芸術AERA」と銘打った出版は今回が初めてのようですが、「AERA」では、過去にも芸術(展覧会)関係のムックが出版されています。
まず、「AERA Art Collection」というムックが刊行されています。次の2冊を発見しました。
「マティス 自由なフォルム」完全ガイドブック AERA Art Collection
朝日新聞出版・編
朝日新聞出版
2024/02発売
価格 ¥1,650(本体¥1,500)
「モネ連作の情景」完全ガイドブック AERA Art Collection
朝日新聞出版・編
朝日新聞出版
2023/10発売
価格 ¥1,650(本体¥1,500)
さらに、「AERA BOOK」というシリーズの中に、美術関係のムックもありました。次の2冊です。
「マティス展」完全ガイドブック AERA BOOK
朝日新聞出版・編
朝日新聞出版
2023/03発売
「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」完全ガイドブック AERA BOOK
朝日新聞出版・編
朝日新聞出版
2023/01発売
価格 ¥1,650(本体¥1,500)
これで網羅的とは言えませんが、いずれにしても、ここ最近の刊行のようですね。
また、刊行の時期から判断すると、
AERA BOOK→AERA Art Collection→芸術AERA
と進化しているのかもしれません。
今後は、海外作家だけではなく、日本人作家やグループ展についても、同様のムックの刊行を期待しています。
よろしくお願いします。