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開催してほしい展覧会(20世紀前半篇)

キュビスムに関して網羅的かつ図版の多い和書はないのか?(2122)

少し前になりますが、次の本が刊行されています。

 

もっと知りたいキュビスム アート・ビギナーズ・コレクション

松井裕美

東京美術

2023/10発売

価格 ¥2,420(本体¥2,200

 

また、同じシリーズで、次の本が最近刊行されました。

 

もっと知りたいデ・キリコ - 生涯と作品 アート・ビギナーズ・コレクション

長尾

東京美術

2024/04発売

価格 ¥2,420(本体¥2,200

 

この2冊は、最近この場所でもよくご紹介している展覧会企画2つにちなんで刊行されたのではないかと思いましたので、揃って選んでみました。

 

この「もっと知りたい○○ アート・ビギナーズ・コレクション」のシリーズでは、すでにかなりの数の本が刊行されています。確認できた範囲でも、2005年以降120冊に達するくらいは刊行されています。「アート・ビギナーズ・コレクション」と副題がついているように、初心者向けで、ページも100ページ足らずの簡潔な本ではありますが、オールカラーであり、この2冊だけを見ても、松井裕美さん、長尾天さんと、このテーマであれば最適と思われる気鋭の研究者による本で、内容も充実していますので、あなどれません。

 

特に、デ・キリコのほうは、なかなか展覧会では見ることができないような、1910年代の形而上作品の代表作の図版をかなり網羅的に掲載しており、見るだけでも楽しめます。

 

他方、キュビスムのほうですが、そもそも、同じ量の本で、一作家と1つのイズムを紹介することに無理があります。その意味では、作者の松井さんが悪いわけではありませんが、どうしても、図版だけで考えてみても物足りない感じがします。それでも、ソ連、チェコまで含めたヨーロッパ各国、そして、アメリカ・メキシコ。さらには日本までこの1冊でカバーしているのですから、むしろ見事というしかありません。

しかし、この物足りなさは、展覧会企画「パリ ポンビドゥーセンター キュビスム展 美の革命」にも同様に言えることなのです。

キュビスム系統の作品を残している作家は、ざっと考えても50人、広めに数えれば100人に上るでしょう。そして、その中でも、さすがにピカソであれば、講談社の「ピカソ全集」で、キュビスム作品もかなり見ることができますが、ブラックですら、和書ではあまり見られないのではないかと懸念します。ましてや、グリスやグレーズやメッツァンジェとなると、あれだけキュビスムを代表しているにもかかわらず、これらの作家単独を対象とした書籍が日本で刊行されることも、日本での個展(回顧展)の企画も、ほとんど期待できません。ちなみに、レジェやドロ-ネー夫妻については、日本でも展覧会がありました。今後も可能性があるでしょう。クプカも展覧会がありましたが(1994318-58:愛知県美術館, 1994521-626:宮城県美術館, 199479-828:世田谷美術館。東京新聞)、クプカ展が開催されたときは、「よくぞ」と非常に驚いたものです。当方が生きている間には、クプカ展が日本で開催されることはもう二度とないのではないかと懸念します。

いずれにしましても、キュビスムの(またはキュビスム的な)作品を残している個々の作家ごとの和書の刊行が無理なのですから、キュビスム全体を対象として、しかも、図版をある程度網羅した書籍を刊行すれば、それで、マイナーな作家の作品も含まれるのではないかと思います。そういった書籍の刊行を熱望いたします。

ただ、キュビスムの作品図版を広く網羅的に収録するとなると、いったい何ページの本が必要になるのか、と心配になります。しかし、そういった本が、手許に欲しいのです。「マグリット400」ならぬ、「キュビスム400」(いや、400では足りないか)のような本が。ぜひとも。

ちなみに、最近は特に洋美術書に関する情報が十分に手許に入ってきていないのですが、もし洋書であれば、キュビスムに関して網羅的な図版が収録された書籍は存在するのでしょうか? そういう書籍を発見する方法はあるのでしょうか? 最初から想像できますが、グーグル検索やAmazonの検索で、そのような検索をしても、絶対に発見できません。残念ながら時間の無駄になるだけです。AIを活用した検索、といったことが言われ始めていますが、AIの活用で、そのような検索、すなわち書名、著者などの書誌情報からの検索ではなく、書籍の「内容からの検索」ができるようにならないものでしょうか? ただ、おそらく、AIをいくら活用したとしても、もともとネット上に情報がないと「検索」はできないと思いますので、この場でもよく書いている「ネット上のコンテンツの絶対的な不足」(ネット上の情報の絶対的な不足)が足枷になるんでしょう。とすると、現時点で、いや、今後もかなりの期間有効であり続ける方法は、原始的ではありますが、結局は、「詳しい人(専門家)に質問する」ということに落ち着くのでしょう。

 

なお最後に些末なことですみませんが、「もっと知りたいキュビスム」のほうで、作家の名前に欧文つづりを入れておいていただきたかったところです。最近は、インターネットでつづりなどすぐに見つけられるとは思いますが、Wikipedia日本語版にも項目が作成されていないようなマイナーな作家も含まれていますので、最後の図版索引のところにつづりがあれば、それでよかったのにな、と思います。今後の参考になればと幸いです。

 

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Akihoshi Yokoran
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