先に「今後も開催される可能性が低い企画」として名前を挙げたマレ-ヴィチ、グリス、タンギーの3作家について、日本語の文献が刊行されているか、少し見てみたいと思います。
マレーヴィチは、翻訳を含めて、作品集がいくつかあります。
気づいただけでも、次の3冊があります。特に、2冊目のものは非常に大部で重いです(278ページ/33㎝のようです)。なお、3冊とも「翻訳」であることにも注意が必要です。要するに、日本では、オリジナルのマーヴィチの作品集を制作することが難しい(需要がない)のであろう、ということです。
マレーヴィチ画集
マレーヴィチ∥[画](マレーヴィチ,カジミール・セヴェリノヴィチ)
ジャン=クロード・マルカデ∥著(マルカデ,ジャン・クロード)
五十殿利治∥訳(オムカ,トシハル)
リブロポート
1994.7
マレーヴィチ 現代美術の巨匠
セルジュ・フォーシュロー∥著佐和/瑛子∥訳
美術出版社
1995/01
カジミール・マレーヴィチ ニューベーシック・アート・シリーズ
ジル・ネレ∥著〔Toshio Miyamoto∥訳〕
タッシェン・ジャパン
2009/11
次に、タンギーについて、日本では作品集は刊行されていないですが、次の2冊の本があります。なお、長尾天さんは、デ・キリコについての著作もあります。
語るタンギー
タンギー [著], 長尾天 編訳
水声社
2016.1
イヴ・タンギー : アーチの増殖
長尾天 著
水声社
2014.12
いや、古い本ですが、次の作品集を発見しました。ただ、公立図書館で簡単に発見できるだろうか?
イヴ・タンギー(シュルレアリスムと画家叢書「骰子の7の目」 / ジャン・ソセ編 ; 第9巻)
ダニエル・マルシュソー著 ; 飯島耕一訳
河出書房新社 ,
1978.6. -
最後に、グリスについては、日本語では作品集も評論もありません。と書いていたら、古くて、薄そうな本ですが、次のものを発見しました。ただ、この本も目にすることは難しいのではないかと懸念します。
フアン・グリス / 東野芳明解説
(ファブリ世界名画集 ; 97)
平凡社
1973
さて、余談ですが、上でマレーヴィチの作品集としてご紹介した本のうち美術出版社で翻訳している本ですが、「現代美術の巨匠」というシリーズの1冊です。このシリーズは、20世紀前半の作家のコンパクトな作品集をシリーズとして10冊以上まとめているもので、大変有用です。海外でも各国語版があるようで、Poligrapha、Rizzoli、Abbevilleなどで刊行されているようです。日本語版もかなり冊数がありますが、以前どのような作家が含まれているかまとめてご紹介したような記憶があるのですが、ちょっと探してみましょう。
さて、その海外の版の中に、グリスの作品集もあったと思うのですが、日本語には翻訳されていません。美術出版社が刊行するときに、漏れてしまったのでしょう。グリスの日本における知名度のなさを物語っているように感じます。(ただ、今回探しても、本当に海外で刊行されているのかは確認できませんでした。)
また、タンギーについては、当方が美術に深入りしていった1990年頃に、Prestelからでしょうか、カラー図版の多い大部の作品集が刊行されていたのを書店で見て(池袋のアール・ヴィヴァンか?)、欲しいと思ったのですが、経済的な余裕がなく購入するには至りませんでした。今回探してみましたが、該当するような書籍は発見できませんでした。1980年代に刊行された本でしょうか?
最後に、このような有名な3作家であれば、欧米では展覧会が開催されていますし、その際の展覧会カタログもいろいろと刊行されています。そのような洋美術書が、もしも東京に行くことが可能であれば、東京国立近代美術館のアートライブラリや国立新美術館のアートライブラリーで閲覧やコピーをすることができます。可能なかたはぜひお試しください。
最後に、上記のとおり、昔に見た記憶のある、グリスとタンギーの本を発見できませんでした。試行錯誤して探したのですがダメでした。何か、こういう作家ごとの情報が、ワンストップで簡単に手に入る、そういう便利なサービスはないでしょうか? 不便で仕方がありません。そういったことはAIに期待したらいいんでしょうか? でも、そのような個別の書籍に関する情報がネット上に存在しなければ、AIに情報を整理してもらうこと(そのうえで回答してもらうこと)は無理でしょうね。