次の本を読んでいます。もう少しで読み終わりますが、まだ途中です。
シュルレアリスム絵画と日本 イメージの受容と創造
速水豊
NHKブックス1135
2009年
刊行が2009年ですから、すでに刊行から15年が過ぎてしまいましたが、今さらながら読んでいます。刊行された当時に入手していたのに、今までなぜほっておいたのか、質問しないでください。
1920年代末から1930年代半ばにかけての、「初期のシュルレアリスム」とも言える(ダリの影響がまだ大きくない時期)、古賀春江、福沢一郎、三岸好太郎、飯田操朗の4名を中心に、それぞれの作品が海外のどの作品をどのように参照して制作されたのかを詳細に後追いしつつ、当時の作家本人による文章も敷衍して、巷でよく言われているような説をうのみにせずに、丁寧に、彼らのシュルレアリスムとは何だったのかを丁寧に解き明かしています。素晴らしいとしか言いようがありません。
例えば、古賀春江については、「シュルレアリスムではなく、モダニズム絵画に過ぎない」という説がしばしば言われるように思いますが、これが正しいのかどうか?(この本は、そういう論の立て方ではないのですが) 他方、福沢一郎は、その滞欧作品やその後の後進育成的な活動から、日本戦前期のシュルレアリスムの中心と言われるようなこともありますが、本当にそうなのか。また、三岸好太郎の末期の変転極まりない作品群は、いったい何を意味しているか、なお、「蝶や貝(殻)がもともとシュルレアリスム的なものであった」という説についても言及があります。
ただ、不満も残ります。例えば、
・古賀春江の死後、その作品や思想は、どう受け継がれていったのか、または、受け継がれなかったのか?
・東郷青児、阿部金剛についても、シュルレアリスム後、他の方向へ向かったという理由も含めて、もう少し探っていただきたかった。
・福沢一郎のその後の活動における、シュルレアリスムの意味は何だったのか? もう少し先まで、具体的に作品を追っていただきたかった。
これらは、もうこの本には入りきらない内容ではあろうとは思いますが。
さらに、他の文献を見て行かねばなりません。
なお、最後に、この本には「ピエール・ロワ」の名前が何度も登場しました。今後、日本でのまとまった作品集、評論、展覧会企画が強く期待されます。
よろしくおねがいいたします。