本年もよろしくお願いいたします。
さて、恒例になっております「5大ニュース」、2021年は以下のとおり選んでみました。
1.展覧会
新型コロナという状況が継続していますが、それでも、美術館の皆さんはがんばっておられます。次の2件の展覧会です。
ソシエテ・イルフは前進する(福岡市美術館)
「写真の都」物語(名古屋市美術館)
・「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972 ―(1881)
展覧会についての「次点」は今回はありません。
2.書籍・文献
まずは写真集に関する文献2点をまとめて1件です。
別冊太陽『写真集を編む』
写真集の本/飯沢耕太郎
もう1件は年末に刊行された、次の本です。
「新興写真の先駆者 金丸重嶺/鳥海早喜」
・新興写真の先駆者 金丸重嶺(1978)
待望の本です。
そして、「書籍・文献」の次点としては、「ありのままのイメージ/甲斐義明」です。実物は手に取り少し読みましたが、あまりに大部であり、非常に面白そうで、強く興味を持っているものの、なかなか読むことはできていません。
3.展覧会・書籍以外
巨星墜つ、という感じですね。あらためてご冥福をお祈りいたします。
最後に、昨年は、美術書や展覧会に関連して電子化・バーチャル化についていろいろと考えてきましたが、本年も引き続き考えていきたいと思います。それにより「理想的な美術書や美術館や図書館」が実現できないかについても。
No.1977で「世界の写真家101(20世紀前半篇)」という展覧会企画を思いついた理由については後日、ということを書きました。
もともと、写真展は、標準的に、個々の写真家の個展・回顧展を希望していましたし、このスレにもそのような企画への希望を書いたこともあったと思います。
ところが、そろそろ、そのような個展・回顧展は無理ではないかと思うようになってきました。
その理由は2つ。
1.そもそも、当方が個展・回顧展を希望する写真家が、すでにマイナーになってきている。
2.もしも個展・回顧展をするのならば、20世紀後半以降にいくらでも候補の写真家がいるので、わざわざ企画が難しい(作品・資料が第二次世界大戦をはさんで散逸していたり、写真家ご本人がすでにご存命でないなど)20世紀前半の写真家(今まで企画されてこなかったような写真家)を選ぶことはごくまれになってきている。
ということで、それでも20世紀前半の写真家の作品をどうしても見たいのならば、グループ展、しかも、マイナーな写真家が必然的に選ばられるようなグル-プ展をあえて考えた、ということになります。20世紀前半で101人の写真家を選んだら、それはそれなりにマイナーな写真家も入ってくるだろうと思います。
よろしくお願いします。
それではまた来年。
ご健康にご留意ください。
ニューヨーク近代美術館で次の展覧会が開催されていました。
Fotoclubismo
Brazilian Modernist Photography, 1946–1964
May 8–Sep 26, 2021
MoMA
https://www.moma.org/calendar/exhibitions/5245
非常に興味深い企画です。日本では、さすがに開催困難な企画でしょう。
タイトルの「Fotoclubismo」はブラジルですからポルトガル語でしょう、自動翻訳をかけると「フォトクラブ」と出ます。このタイトルが言わんとしていることは、このmovementの担い手のほとんどがアマチュアだったということのようです。
具体的に取り上げられている写真家は以下の23人のようです。
Julio Agostinelli, Brazilian, born 1919
Gertrudes Altschul, Brazilian, born Germany. 1904–1962
Geraldo de Barros, Brazilian, 1923–1998
João Bizarro Da Nave Filho, Portuguese, born 1908
André Carneiro, Brazilian, 1922–2014
Dulce Carneiro, Brazilian, 1929–2018
Lucílio Corrêa Leite Filho, Brazilian, 1915–1990
Thomaz Farkas, Brazilian, born Hungary. 1924–2011
Ivo Ferreira da Silva, Brazilian, 1911–1986
María Freire, Uruguayan, 1917–2015
Gaspar Gasparian, Brazilian, 1899–1966
Marcel Giró, Spanish, 1912–2011
German Lorca, Brazilian, 1922–2021
Ademar Manarini, Brazilian, 1920–1989
Barbara Mors, Brazilian, born 1925
Paulo Pires da Silva, Brazilian, 1928–2015
Palmira Puig Giró, Spanish, 1912–1978
Eduardo Salvatore, Brazilian, 1914–2006
Aldo Augusto de Souza Lima, Brazilian, 1920–1971
Alzira Helena Teixeira, Brazilian, born 1934
Rubens Teixeira Scavone, Brazilian, 1925–2007
Maria Helena Valente da Cruz, Portuguese, born 1927
José Yalenti, Brazilian, 1895–1967
https://www.moma.org/artists/?exhibition_id=5245
MoMAのウエブサイト上で、展示された作品がかなり(ほとんど?)見ることができます。ご覧いただけばお分かりのとおり、これらの作品は、ぼぼ典型的なモダニズムの作品です。日本や欧米であれば、1920年代、1930年代に見られた表現です。明らかに、地域によって、時差があるのです。
ここで、申し上げたいことは、時間が経つに従い研究が進化するにつれ、また、世界の各地を見るにつけ、「20世紀前半」で時期を区切ることの意味が薄れてきているのではないか、ということです。日本の写真でさえ、1945年を境と考えることがだんだんと難しくなってきて、戦前戦後の写真が接続しているということがわかってきています。
第二次世界大戦の影響をあまり受けなかった(少なくとも戦場ではなかった)両アメリカ大陸であれば、なおさらでしょう。写真中心ではありませんが、「Art of the Forties」という展覧会が、正にMoMAで開催されたのは1991年で、すでに30年が経過しています。
https://www.moma.org/calendar/exhibitions/330
また、日本においても、「アジアのキュビスム」展が東京国立近代美術館で開催されたのは2005年ですが、この企画も、キュビスムの「時差」がある意味で示されていました。
https://www.jpf.go.jp/j/publish/asia_exhibition_history/35_05_cubism.html
要するに、「第二次世界短戦後だから別の時代」などと単純に切り分けられないということです。
最後に、モダニズムとはいえ、大変興味深いことに、よりつぶさに見ていくと、今回のブラジルの写真の中には、単純なモダニズムのみならず、明らかに戦後が入り込んできています。戦後へと直結している「ニュー・バウハウス的なもの」と、いわゆる「主観主義写真」と呼ばれる傾向です。その辺りも含めて、今一度、写真における第二次世界大戦という画期の意味・役割については、じっくりと考えてみなければならない、と思っています。
次の本がまもなく刊行予定です。
新興写真の先駆者 金丸重嶺
鳥海早喜
国書刊行会
2021/12/20
¥3,520
376ページ
金丸重嶺(かなまる・しげね)の本とは、大変驚きではあるものの、同時に待望の書籍です。
著者は日本大学の鳥海さんですが、個人的にも期待していた本です。まさに金丸重嶺の本を書いていただきたいと思っていましたし、逆に金丸重嶺の本ならこのかたしか書いていただける人がいないだろう、というところです。
別にこの本の刊行について知ってはいなかったのですが、偶然にもNo.1970の最後には、金丸重嶺の名前を挙げていて、その重要性の割になかなか取り上げられていないという不満が出ていたことがうかがわれます。
刊行後、なるべく早い時点で実物を見て見たいものです。その後、またご紹介したいと思います。
さて、次は、金丸重嶺の大回顧展ですかね? 著者紹介に挙げられている「金丸重嶺vs名取洋之助――オリンピック写真合戦 1936」(JCIIフォトサロン)も「写真家金丸重嶺 新興写真の時代 1926-1945」(日本大学芸術学部芸術資料館)も、企画としては貴重ですが、対象が限定的ですし、会場も大きな会場ではありませんでした。金丸重嶺の業績(写真に関する教育者としての業績も含む)の全体を紹介していただける大型企画を期待しています。そして、とうとう期待できる時期に達したと言えると思います。非常にうれしいことです。
それにしても、国書刊行会からは、日本写真史に関する書籍の刊行が相次いでいますね。この分野についてご専門の編集者のかたがおられるのでしょう。どのような本が刊行されているか、一度整理してみないといけないでしょう。
「世界の写真家101」と言っても、新書館の同名の書籍の話題ではありません。
1写真家1点の作品で全101点、そのような展覧会を開催していただきたい。
もちろん、「20世紀前半」で。
どの写真家にするかを考えるのも楽しみですが、すでに個人的な考えもあるのですが、さらに別途検討したいと思います。
なお、このアイデアが出てきた経緯についても、別途書いてみたいと思います。