以前から、ネット上の検索については、いろいろと苦情を書いていますが、なかなか検索に関する技術が発展せず、21世紀になってからもよくなっていない、という現状があります。
以前にも書きましたように、もし「人」という単位で考えねばならないのであれば、数百人の美術家や写真家を対象と考えていますので、いちいちそんな人数で頻繁に(いやたったの1回でも)検索することは無理ですし、また、自分が知らない美術家や写真家の情報のほうがむしろほしい、という、現在の「検索機能」の思想とは相容れない希望もあるため、現時点での検索に頼ることはできません。
すぐに思いつくアイデアをあえて言えば、網羅的な表現、例えば「20世紀前半の美術」で検索すればいい、ということになりますが、そんな検索では、いったい何万件、何億件の情報がヒットすることになるか、逆に、「20世紀前半」ではなく、「戦間期」「1920年代」「1930年代」という表現を使っているサイト、または、時期的なことに何も触れていないサイトは、ヒットしてくれないことになりそうです。
他方、仮にヒットした件数を絞ることができたとしても、多くの人が知っている、ありふれた情報が先に出てくるでしょう。とりあえず、そういう情報は必要ありません。今までネット上には存在しなかった、そういう意味での新しい情報こそほしいのですがそれに絞る方法はあるでしょうか。個々のページが最近作成されたかどうか、最近公開されたかどうか、で結果を絞る方法はあるようですが、ここで求めている「新しさ」は、個々のページの新ではなく、掲載されている情報の「初出性」という意味での新しさですから、絞る方法はなかなかなさそうです。
今回は、ここから先を書きたかったのですが、正直もう検索には飽き飽きしています。別な表現を使いますと、検索に時間を使いたくないと思っています。
そこで、情報が向こうから勝手に飛び込んでくるような仕組みをお願いしたいと思っています。ある種の検索では、「アラームリスト」「アラートリスト」のようなものがあり、定めた条件と表現が一致するものがメールで知らされるというようなサービスですが、GoogleやAmazonではそういうサービスはないようです。仮にあったとしても、上記のとおり、個別の人名などと一致させるアラームでは、件数が膨大になり、必要不要の区分けする手間がかかりすぎて意味がありません。これを、例えば「20世紀前半の美術・写真」などの表現で、そのまま何万件のアラームが出るわけではなく、当方が希望する情報に絞ってアラームを出してくれるサービス、名付けて「飛び込んでくる情報」というサービスをぜひ実用化していただきたいと思います。情報を絞るという判断は、もちろんAIにお願いしたいのですが、その絞る条件の詳細は頼む側の人間が明確化しなければならないわけですが、その絞る手間も含めてAIに頼りたいところです。
スーパーコンピューターならば、何かを示してくれるでしょうか? それとも、こんなことでも、まったく見当違いなのでしょうか?
どこにお願いしたらいいのかも全く分かりませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
次のサイトが2021年3月30日に公開されました。
Tokyo Museum Collection : 東京都立博物館・美術館収蔵品検索
https://museumcollection.tokyo/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000235.000038211.html
「検索対象となる資料・作品は計40万点以上になる予定」だそうです。
以前のサイト『TOKYO DIGITAL MUSEUM』を発展させたものらしいのですが、どこがよくなったのでしょうか?
対象作品展数が増えた(増える)こと? 一部の作品などに解説がついたこと?
リリースを読んでも、よくわからないのですが、まあ、検索できること自体はいいことなので、とりあえずは喜べばいいでしょう。
ただ、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の時代なのに、たったこれだけなのでしょうか?
2つの方向で提案してみます。
1つは、対象の博物館・美術館の拡大です。都立の6館だけというのは、いかにも少ない、少なすぎる。はっきりいって、ほとんど意味がない。例えば、東京都の中にはあたりまえですが区や市がたくあんあって、区立や市立の博物館・美術館・資料館・記念館などもたくさんあります。少なくとも、これらはすべて含めていただくべきでしょう。同じ東京都内なんですから。
しかし、そんなものでは全く足りません。国立の美術館や博物館との連携はもちろん、全国の都道府県・市町村や私立の美術館の所蔵作品も一度に検索できなければ意味がありません。確かに、東京都がどのような作品を所蔵しているのかを調べたいという場合もまれにはあるでしょう。しかし、一般的には、むしろ逆で、ある作家のある作品が、どの美術館等に所蔵されているかを調べたい、ということなのではないでしょうか?
そして、対象の博物館・美術館等については、究極的には、「目指せ、世界全体」、でしょうね。
もう1つは、検索対象(物)の拡大です。必要な情報は、あたりまえですが、美術作品だけではありません。
この「Tokyo Museum Collection」の中に「資料・アーカイブ、蔵書検索」というページがありましたので、「もしかして」と期待したら、
https://museumcollection.tokyo/related-sites/
単なるリンクの紹介で、各美術館等のサイトで個別に検索してください、というものでした。
そんなバカな。これらを全部統合して、1つのサイトで、芸術に関する綜合的なデータベースを構築する、1回検索すれば、作品だけではなく、書籍等の資料やネット上の情報など、あらゆる情報がすべて集まる、そうあるべきです、そうでなければなりません。検索に時間を使っていた時代はもう終わるべきです。
2つの提案とも、対応していただくためにはかなりの手間と時間がかかることでしょう。
しかし、ここで検討すべきは、といいますか、すでに検討されている、または検討が進んでいると思いますが、情報の統合を人間がするのではなく、すべてAIにしてもらうということです。人間はほんの少しかかわるだけにとどめ、AIに一晩で統合してもらう、そういうことを目指すべきです。
こういう動き直ちに取らないと、またもや欧米にルール作りや情報のコントロールについて負けてしまうのではないでしょうか。
いずれにしても、情報を探すことについて、あっちにいったりこっちにいったり、何回も同じ検索語を入力したりと、いつまでこのような不便な世の中に我慢しなければならないんでしょうか。死ぬまで無理なんでしょうか?
なお、もう1点著作権による制約の問題があります。それは、今までも所々で書いていますが、またの機会に改めて書いてみたいと思います。
以前ご紹介しました名古屋市美術館の「写真の都物語」ですが、展覧会自体はもう終了してしまいましたが、その展覧会カタログに該当する書籍が国書刊行会から刊行されています。前回の、やはり竹葉丈さんの企画「異郷のモダニズム」(2017年)と同じ状況ですね。
なお、本展に関する過去2回の投稿は以下のとおり。
・「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972 ―(1881)
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/photography
(2021年2月6日(土)~3月28日(日))
ぜひ、書店や公立図書館でご覧いただきたいと思いますが、ここでは、1945年までについて、掲載された写真家を列挙いたします。
(なお、I, II, IIIの間では重複している場合も記載いたしました)
I 写真芸術のはじめ 日高長太郎と<愛友写真倶楽部>
日高長太郎
山本五郎
大橋松太郎
益子愛太郎
松浦幸陽
榊原青葉
蜂須賀周三
松山岩根
永田蘇堂
津坂淳
高田皆義
II モダン都市の位相 「新興写真」の台頭と実験
海部誠也
紅村清彦
松浦幸陽
佐溝勢光
成田春陽
小足良之助
今井信男
永田二龍
高田皆義
稲垣泰三
小此木光也
小島祐三
渡邊政勝
木村秀利
坂田稔
山本勘助(悍右)
III シュルレアリスムか、アブストラクトか 「前衛写真」の隆盛と分裂
高田皆義
坂田稔
下郷羊雄
田島二男
稲垣泰三
佐藤季雄
山本悍右
後藤敬一郎
高橋善一
服部義文
これら1人1人について、「写真家経歴」のようなページですべて経歴が掲載されていればよかったのですが、主要な写真家には本文の解説に記載があるものの、それ以外の写真家については経歴の記載がありません。
なお、これらの写真家は、この書籍に掲載された作品の写真家ですので、展覧会での出品作品の写真家とは(わずかな)「ずれ」があるかもしれません。ご注意ください。
最後にせっかくですので、1945年までの3章について、目次を掲載しておきます。
I 写真芸術のはじめ 日高長太郎と<愛友写真倶楽部>
日高長太郎 初期写真/山本五郎 初期写真/日高長太郎の完成作品(ゴム印画)とレタッチ/<愛友写真倶楽部>第一世代全盛期の作品/愛友写真倶楽部第1回展覧会『画集』/写真画集『白陽』/芸術写真研究雑誌『銀乃壺』
II モダン都市の位相 「新興写真」の台頭と実験
日常スナップ/光と影の構図/女を撮る/舞台写真/マチエールとモンタージュ/ディストーションとマニピュレーション
III シュルレアリスムか、アブストラクトか 「前衛写真」の隆盛と分裂
”半静物”― ―屋外で静物を組む/新即物主義の徹底/超現実主義写真集『メセム属』/<レディ・メイド>オブジェの発見/モンタージュ・シュルレアリスム/フォト・アブストラクト― ―抽象的造影と民家・民藝への接近
次のようなサイトを発見しました。
Bakunen
Rare Photobooks, Records, Art Store
フランスにあるようなのですが、日本の写真集やレコードを中心とした中古品店です。
戦前の本も多くあり、この品ぞろえは極めて恐ろしい。このレベルの店は日本でもすぐには見つからないでしょう。なぜこんな店が海外に存在するのでしょうか。不思議です。
twitterもあります
https://twitter.com/bakunen_photo
世の中には、本当に想像を超えるものが存在するものです。
それにしても、店名の「Bakunen」ですが、
獏念
爆燃
いったい、意味は何でしょうね?
他方、Google Booksにも掲載されていて、一部のページも見ることができますが、極めて幸いなことに掲載作品のページも見ることができました。以下のとおり。
Chapter 1
1.1 Nakayama Iwata, Untitled, May 1932 (18)
1.2 Koishi Kiyoshi, Is There Something Funny?, January 1934 (22)
1.3 Ei-Kyū, 'For a Free Production of Photograms', August 1930 (27)
1.4 Ei-Kyū, from The Reason for Sleep, 1936 (29)
1.5 Matsubara Jūzō, Untitled, 1934-1935 (31)
1.6 Matsubara Jūzō, Untitled, 1936 (32)
1.7 Matsubara Jūzō, Liberated Fantasy, 1936-1937 (33)
Chapter 2
2.1 Imai Shigeru, A Cheerful Traveller (1936), October 1938 (40)
2.2 Yamanaka Chirū, ll y a un océan facile, 1937 (41)
2.3 Yamanaka Chirū, Collage, June 1937 (44)
2.4 Yamamoto Kansuke, Collage, 1938 (50)
2.5 Ei-Kyū, Real, 1937 (51)
2.6 Hanawa Gingo, Complex Imagination, 1938 (54)
2.7 Nagata Isshū, Nerval, Dream and Life, July 1938 (57)
2.8 Nagata Isshū, Untitled, 1930-1939 (58)
2.9 Nagata Isshū, Fire Mountain, 1939 (59)
2.10 Abe Yoshifumi, A Shot of Mount Yake, July 1940 (60)
Chapter 3
3.1 Hanawa Gingo, Light and Dark Flower and Yasui Nakaji, Butterfly, September 1938 (72)
3.2 Hirai Terushichi, Blue Sky, September 1938 (75)
3.3 Yasui Nakaji, Composition: Gyroscope, 1938 (76)
3.4 Hirai Terushichi, Fantasy of the Moon, 1938 (76)
3.5 Hirai Terushichi, Altar, July 1938 (79)
3.6 Ueda Bizan, Delighted, 1940 (81)
3.7 Hirai Terushichi, Face, 1940 (83)
3.8 Hanawa Gingo, 'Dream of Spring in Broad Daylight', July 1938 (85)
3.9 Hanawa Gingo, 'Dream of Spring in Broad Daylight', July 1938 (86)
3.10 Ikemiya Seijirō, Shadow, October 1938 (88)
Chapter 4
4.1 Koishi Kiyoshi, 'Record of a Camera Trip to Kamikōchi', October 1938 (98)
4.2 Sakata Minoru, Edible Animal Mud, February 1939 (101)
4.3 Shimozato Yoshio, Two Dorment Volcanoes, February 1939 (103)
4.4 Sakata Minoru, Four and Shimozato Yoshio, A Balloon Giving Birth, June 1939 (105)
4.5 Shimozato Yoshio, from Mesemu zoku: Chōgenjitsushugi shashinshū, 1-10, 1940 (108)
4.6 Various artists, edited by Shimozato Yoshio, from Mesemu zoku: Chōgenjitsushugi shashinshū, A-J, 1940 (109)
Chapter 5
5.1 Abe Yoshifumi, Working at Night, 1938 (126)
5.2 Abe Yoshifumi, Flow, February 1939 (127)
5.3 Shimozato Yoshio, The Ninth Continent, April 1939 (128)
5.4 Imai Shigeru, Still Life, August 1939 (129)
5.5 Takahashi Wataru, Spirit of the Sea, June 1938 (131)
5.6 Takahashi Wataru, '____', June 1939 (133)
5.7 Yamanaka Chirū, 'Sakata Minoru's Artwork', January 1939 (135)
5.8 Sakata Minoru, Parage, 1939 (137)
5.9 Sakata Minoru, Sphere, 1939 (138)
Chapter 6
6.1 Abe Yoshifumi, Two Poses, March 1939 (143)
6.2 Abe Yoshifumi, Two Landscapes, February 1940 (144)
6.3 Hasegawa Saburō, Sliding Door, September 1939 (148)
6.4 Konomi Giichirō, Untitled, October 1939 (149)
6.5 Konomi Giichirō, White Door, January 1940 (151)
6.6 Yamanaka Chirū, 'Occasional Thoughts on Plastic Photography', July 1940 (152)
6.7 Sakata Minoru, Zōkei shashin, 1941 (158)
6.8 Shimozato Yoshio, Garments, Zōkei shashin, 1941 (159)
6.9 Tajima Tsugio, Diishcloth Embroidery and Piles of Folded Newspapers, Zōkei shashin, 1941 (160)
6.10a Yamamoto Kansuke, Birdcage at a Buddhist Temple, 1940 (162)
6.10b Yamamoto Kansuke, Untitled, 1940 (162)
6.11 Yamamoto Kansuke, Landscape, 1940 (162)
以上でリストは終わりです。見慣れた名前がたくさんあります。こういう情報がネット上で取ることができるようになると、世の中の情報の流通が前に進んでいるような気がします。
いくつか気になることを。
まず、この分野の日本語の基本資料である「日本近代写真の成立と展開」の展覧会カタログの掲載作品とはあまり重複しません。おそらく雑誌掲載の作品の転載が多いのではないかと思っています(作品の制作年だけではなく「制作月・発表月」が記載されているケースが多いので)。ここは、この本の実物を見てみないとよくわかりません。
次に、写真家の名前ですが、大文字を文頭にしか使っていないこの表記だと、知らない人には、どちらが苗字かわからないですね。それは困ります。日本人が見るのであれば、間違える可能性は低いのですが。そもそもが、今後、本当に「苗字が前」を強力に推進していくのでしょうか? 過去の資料のほとんどが「苗字が後」であるにもかかわらず。
最後に、写真家名の表記、タイトルの英語表記に、以前の英訳と比べて「ぶれ」がありますね。これも困ることです。
例えば、瑛九のEi-KyūとEi-Q。
また、平井輝七さんの「月の夢想」も単数(Fantasy of the Moon)なのか複数(Fantasies of the Moon)なのか。
さらに、以前から気になっている、「長音」の取り扱いですね。日本ではむしろほとんど使われていない「ĀāĒēĪīŌōŪū」を使うのかどうか。使ったほうが、外国の皆さんにとっては発音しやすいのでしょうが、日本で普及していくのかどうかの問題です。「長音」は、キーボードでは打つことができず、文字コード(文字参照・実体参照)を使わないと入力できないという面倒さも、普及を妨げている原因でしょう。
このあたりの欧文表記、そろそろ統一が必要ではないかと思います。でも、他のかたの資料についてとやかく言える立場にはなくて、というのも、自分が英訳をする場合には、以前の資料を全部さらって、齟齬がないようにして、、、などということは現実的にできていません。不統一な表記の原因の1つになっていなければいいのですが。
以上ですが、さて、この本ですが、実物を見ることができるかどうか。