No.1942で掲載作家をご紹介した『世界の美術家』について、今回はコメントを。
とにかく、20世紀前半についてたったの30名。いくらなんでも少ない、という感じです。
類書で見ると、『世界美術家大全』は20世紀前半だけで128名。20世紀に限定した本ですが、『20世紀の美術家500』は仮に20世紀前半と後半で半分半分だとすると、20世紀前半だけで250名(ただし1人当たり1ページ1作品で解説もほとんどない)。
対象期間を長く設定する場合には、1冊の本で多くの美術家を収録するということにはどうしても無理があります。
ただ、個人的には、20世紀前半だけで1000名は欲しい。そんな本を希望します。「紙」で無理ならば、電子書籍で。
また、この本は、「美術家」に集中しすぎていて、イズムごとの解説もほとんどありません。例えば、モディリアーニのページに「未来派」の小さな説明欄が入っていますが、文脈から考えてもこれには無理があります。20世紀前半に限っていえば、この時代は「イズムの時代」なので、イズムに言及しなかったことは失敗と言わざるを得ません。
ちなみに、デ・キリコも全く出てこないですし、写真家も一切出てこない。とても残念です。
ところで、不思議なことに、この本の中には執筆者の名前が掲載されていません。掲載されていないのだから、それで仕方ありませんが、いったいどういう意味なんでしょうか? 出版社の編集部で執筆した、という意味なのでしょうか? いずれにしても、執筆者の名前を明らかにしようという意図がなかったということでしょう。
なお、訳者の名前はありました。定木大介、吉田旬子。その他は以下のとおり。
編集協力:株式会社リリーフ・システムズ
装丁:斎藤伸二
校正:株式会社麦秋アートセンター
編集:天野潤平+近藤純
最後に、作家名の欧文つづりが掲載されていませんが、もはや、インターネットでいくらでも欧文つづりを調べられる時代になりましたし、この本のような30名レベルであれば、そもそも日本語の情報があふれていますので、欧文つづりが掲載されていないことへの批判は、少なくともこの本に関しては、もういいと思っています。