以下は、美術館・図書館の未来(1906)に書いたことのある部分の詳細という位置づけにもなります。
デジタル庁が9月1日に設置されたから、というわけではありませんが、以前から困っていること、新しくて古い問題について書いてみます。
書籍(CDなど他の資料でも同じですが)が公立図書館や美術館等の図書室に所蔵されているか、借りられるのか、閲覧できるのかなどを調べる場合、住んでいる場所の近くの図書館ですぐに見つかればいいのですが、そうでない場合には、インターネット上の個別の図書館・図書室での検索や様々な横断検索をしなければなりません。場合によりますが、その検索回数が10回以上に及ぶことなど、実際にあります。
この状態は、各地方公共団体が、書籍等の検索システムをバラバラに導入し、また、その横断検索すらもバラバラに導入していることが原因であろうと思います。
そして、実は、この実態については、我々一般の利用者側よりも、図書館の職員や司書の皆さんのほうが、むしろ困っているのではないかと思います。
今後の希望ですが、もう書くまでもなく、ほとんど明らかですが、1つのサイトで1回の検索で、すべての情報が手に入る、というシステムの構築です。最近の言葉では、「ワン・ストップ・サービス」でしょうか。「カーリル」を含めて、いろいろと便利なネット上の横断検索はたくさんありますが、1回で検索を終わりにできなければ、意味はありません。検索に時間をかける時代はもう終わりにしたいのです。このようなシステムの構築は、強力なリーダーシップのもとで、多数の機関や団体が管理している膨大な書籍等の情報をいかに統合するかという問題だと思いますが、短時間のうちにこれができなければ、こういう言い方も抵抗はありますが、日本は欧米に負けます。
時間のかかる力仕事の面もありますが、新型コロナの中、働き手は、たくさんいるのではないでしょうか? といいますが、それはAIに適した仕事と言っていいのではないでしょうか?
そして、その「情報統合」「検索統合」はゴールではなく、当然にその先があります。それは、図書館・図書室間の相互連携(相互貸出)です。「その資料は、どこそこの図書館に所蔵されています。あとは、ご自由に直接連絡を取ってください。」ではこれまた意味は全くありません。相互貸し出しをもっと可能にするシステム作りが必要です。一部の「相貸」は実現されていますが、都道府県をまたぐ「相貸」には、まだまだ大きな障害があるのではないかと思います。例えば、北海道の図書館から沖縄の図書館に本を貸し出すなどというのは、手続きも費用(送料)も簡単な問題ではないかもしれません(CDなどは「相貸」自体が全く存在しないと理解しています)。しかし、その点が解決できなければ、「どうぞ、北海道まで見に行ってください」という、この新型コロナのある今後の社会では、ほとんど不可能か、極めて大きな無理を要求することになります。そこも含めて解決していただきたい。
もちろん、一般の公立図書館ではなく、特に、専門の機関の図書室などは貸出不可の資料ばかりだと思いますので、全部対象にせよとは申せません。しかし、貸出できない資料があるのであれば、さらにその「相互貸出」の先には、電子書籍の共有(書籍の電子化による共有)の模索・実現が待っています。
理想的には、国立国会図書館が将来そうなっていくのかもしれませんが、日本全国でただ1つの電子図書館があり、そこが全国からアクセスでき、どこに住んでいようが、いつでも、自宅や勤務先から、およそあらゆる書籍(和書に限られない、著しく貴重な図書も含む)を閲覧することができる、そういう世界が実現してほしいと願っています。とにかく、AmazonやGoogleなどに先を越されないようにしてください。ちなみに、著作権の問題はどう解決するのか、著作者の権利を守るという姿勢を一貫すれば、解決には道が見えるはずです。
実は、同じ問題が、書籍(やCD等)を購入しようとする場合(新刊・古書も含めて)にもおきています。書店、CDショップ、配信サービスなど、やはり、多くのサイトで検索を繰り返さなければなりません。こちらについても、ここでは詳説しませんが、今後、何とかしていただきたいところです。すでに、「価格比較サイト」のようなものがでてきていますが、結局中途半端なものにとどまっているようで、今のところ主流になるのは難しいようです。そもそも、公的、または公的側面のあるサービスとは異なり、「統合」は極めて難しいとは思います。
繰り返しますが、1回の検索で全部がわかる、そのようなシステムの構築を希望しています。
図書館もショップも、いずれも、どうぞよろしくお願いします。