次の本が刊行されているようです。
家族写真の歴史民俗学
川村 邦光
価格 ¥4,180(本体¥3,800)
ミネルヴァ書房(2024/11発売)
A5・376ページ
以前にも同じことを書いたかもしれませんが、写真史の対象は、すでに以前よりもかなり拡大してきており、今後もさらに拡大していくでしょう。
拡大の対象としては、写真家とは呼べない人たちによる写真作品、ということになるでしょう。まずは、画家、ジャーナリストなど著名な人々による写真、というカテゴリーが挙げられます。さらに、全く著名性のない、市井の人々による日常的な写真作品が、すでに写真史の対象となってきており、その例が、今回ご紹介する本です。個人的には、遅ればせながらとうとう出たな、という感じを持っており、写真史研究の「裾野の広がり」を示していると考えています。
ミネルヴァ書房という、写真史とはあまりなじみのない出版社からの刊行という点も、非常に興味深いと思います。
目次は以下のとおりです。
序 章 鶴見良行の家族写真論から
1 山田太一『岸辺のアルバム』の家族写真
2 家庭写真の歴史主義の時代と芸術主義の時代
3 家族写真と遺影
4 東日本大震災のなかの家族写真
第Ⅰ部 家族写真の来歴と展開
第一章 欧米の家族写真
1 家族肖像画から家族写真へ
2 家族写真の構図とスタイル
3 聖母子像と聖家族像の近代
コラム1 家族写真にみる故人物語――夏目漱石
第二章 日本の家族写真の来歴
1 日本人と写真の出会い
2 日本最初の夫婦写真
3 日本における初期の家族写真
4 幕末・維新期の家族写真
コラム2 家族写真にみる故人物語――与謝野晶子
第三章 日本の家族写真の展開
1 近代日本の定型的な家族写真スタイル
2 権威的な威信財と家族写真
3 戦争期の写真時代
コラム3 家族写真にみる故人物語――斎藤茂吉(1)
第四章 家族写真の変容
1 日本における親子写真
2 子供を中心にした写真へ
コラム4 家族写真にみる故人物語――斎藤茂吉(2)
第五章 子供写真と家族写真の存続
1 子供写真のスタイル
2 アマチュア・カメラマンのスナップ写真
3 フォーマル/インフォーマルな写真体験
コラム5 家族写真にみる故人物語――柳田國男(1)
第Ⅱ部 家族写真の写す社会と個人
第六章 天皇の家族写真
1 翻身する天皇とモーリス - スズキの家族写真論
2 戦中と敗戦後の天皇家族写真
3 天皇家族写真の現在と行方
4 原爆と家族写真
コラム6 家族写真にみる故人物語――柳田國男(2)
第七章 アマチュア写真家のスタイル――塩谷定好の抒情派子供写真
1 山陰のアマチュア写真家・塩谷定好
2 塩谷の写真技法と海辺の光景
3 塩谷の子供写真
コラム7 家族写真にみる故人物語――塚本博利
第八章 ドキュメンタリー家族写真――社会生活派の影山光洋
1 社会派カメラマン・影山光洋
2 敗戦前後の影山家の日々と家族写真
3 家族物語と国家物語、そして亡児の故人史
4 影山の家族写真スタイル、故人物語から故人史の編集へ
コラム8 東アジアの家族写真――台湾
第九章 家族写真のアート化と変貌
1 深瀬昌久の反家族写真
2 福島菊次郎のドキュメタリー反権力家族写真
コラム9 東アジアの家族写真――韓国(1)
第十章 家族写真スタイルの現在と諸相――多様化/複数化
1 家族の危機と家族の絆の家族写真
2 家族の絆の現状
3 年賀状の家族写真
4 展示される家族写真
5 発掘される家族写真――過去/未来への記憶の共同体を構築する
コラム10 東アジアの家族写真――韓国(2)
終 章 故人史を妄想する
1 懐旧的/予期的歴史化による物語創出
2 未完の故人史へ
参考文献
あとがき
人名索引
事項索引
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目次は以上です。
目次だけでワクワクします。この本も実物を早く見たいものです。
なお、著者の川村邦光というかたは、大阪大学名誉教授で、ご専門は写真史や美術ではなく、むしろ、宗教学、文化(人類)学、民俗学などのようです。