少し先ですが、次の展覧会が開催予定です。
ミロ展 Joan Miró
東京都美術館 企画展示室
2025年3月1日(土)~7月6日(日)
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、ジュアン・ミロ財団、朝日新聞社、テレビ朝日
協賛:DNP大日本印刷
https://www.tobikan.jp/exhibition/2024_miro.html
まだほとんど情報がありませんが、すでに特設サイトも開設されています。
それから、都美のサイトではチラシも掲載されています。
https://www.tobikan.jp/media/pdf/2024/miro_flyer.pdf
とはいえ、「表面」と思われる画像が2種掲載されているだけです。「裏面」はまだできていないんですかね?
あと、早く知りたいのは巡回先です。どこに巡回するかということから、日本の美術館・美術展の状況が見えることがあるからです。関西だけか、名古屋もか、それ以外もか? それぞれで開催されるなら、会場の美術館はどこか?
なお、かつて、東京都美術館は「貸館」(会場貸し)がメインだという印象が強かったのですが、(すでにずいぶん昔になりますが)国立新美術館がその部分を十分に引き取ってくれたためか、大型企画がかなり増えたような気もします。現在開催中のデ・キリコ展も東京都美術館ですし。
最後に、「特設サイト」については、すでに、いつの間にか、ある程度大型の企画については当然という状態になってきています。以前も少し書きましたが、「特設にする」という点の功罪について、別途整理して書いてみたいと思っています。
所蔵作品を対象としたコレクション展ではありますが、東京都写真美術館で、次の展覧会が開催中です。
東京都写真美術館3F 展示室
TOPコレクション 時間旅行
千二百箇月の過去とかんずる方角から
2024.4.4(木)—7.7(日)
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4812.html
対象期間は全体で100年(1200か月)と非常に長いのですが、当然ですが、20世紀前半が含まれています。
以下、ウエブサイトに掲載されている「出品作家」ですが、これだけでも、「20世紀前半」という観点だけからでも、訪問する価値があることがお分かりになると思います。「木村専一コレクション」という名称も見えます。また、作品リストもご参照ください。
第一室 1924年—大正13年
【出品作家】小川月舟、高山正隆、福森白洋、ラースロー・モホイ=ナジ、宮沢賢治、マン・レイ ほか
第二室 昭和モダン街
【出品作家、出品作品】大久保好六、桑原甲子雄、杉浦非水、中山岩太、福原路草、堀野正雄 ほか
第三室 かつて ここで—「ヱビスビール」の記憶
【出品作家、出品作品】「ヱビスビール」関連資料、黒岩保美、宮本隆司
第四室 20世紀の旅—グラフ雑誌に見る時代相
【出品作家、出品作品】大束元、W.ユージン・スミス、雑誌『LIFE』、雑誌『アサヒグラフ』ほか
第五室 時空の旅—新生代沖積世(しんせいだいちゅうせきせい)
【出品作家】岩根愛、川田喜久治、北野謙、木村専一コレクション、佐藤時啓、高木庭次郎、原美樹子、宮沢賢治 ほか
これでコレクション展(所蔵作品展)なのですから、この美術館の所蔵作品の充実ぶりがよくわかります。
それにしても、今さら気づくのも変ですが、日本美術のモダニズムが始まった1920年代は、もう100年前になってしまったのですね。これからの、2020年代後半、2030年代に、100年前、すなわち、1920年代と1930年代の日本美術に焦点を当てたような企画、しかも、21世紀に入ってからの研究成果を存分に生かした企画が出現しないか、期待しているところです。
少し前になりますが、次の本が刊行されています。
もっと知りたいキュビスム アート・ビギナーズ・コレクション
松井裕美
東京美術
2023/10発売
価格 ¥2,420(本体¥2,200)
また、同じシリーズで、次の本が最近刊行されました。
もっと知りたいデ・キリコ - 生涯と作品 アート・ビギナーズ・コレクション
長尾 天
東京美術
2024/04発売
価格 ¥2,420(本体¥2,200)
この2冊は、最近この場所でもよくご紹介している展覧会企画2つにちなんで刊行されたのではないかと思いましたので、揃って選んでみました。
この「もっと知りたい○○ アート・ビギナーズ・コレクション」のシリーズでは、すでにかなりの数の本が刊行されています。確認できた範囲でも、2005年以降120冊に達するくらいは刊行されています。「アート・ビギナーズ・コレクション」と副題がついているように、初心者向けで、ページも100ページ足らずの簡潔な本ではありますが、オールカラーであり、この2冊だけを見ても、松井裕美さん、長尾天さんと、このテーマであれば最適と思われる気鋭の研究者による本で、内容も充実していますので、あなどれません。
特に、デ・キリコのほうは、なかなか展覧会では見ることができないような、1910年代の形而上作品の代表作の図版をかなり網羅的に掲載しており、見るだけでも楽しめます。
他方、キュビスムのほうですが、そもそも、同じ量の本で、一作家と1つのイズムを紹介することに無理があります。その意味では、作者の松井さんが悪いわけではありませんが、どうしても、図版だけで考えてみても物足りない感じがします。それでも、ソ連、チェコまで含めたヨーロッパ各国、そして、アメリカ・メキシコ。さらには日本までこの1冊でカバーしているのですから、むしろ見事というしかありません。
しかし、この物足りなさは、展覧会企画「パリ ポンビドゥーセンター キュビスム展 美の革命」にも同様に言えることなのです。
キュビスム系統の作品を残している作家は、ざっと考えても50人、広めに数えれば100人に上るでしょう。そして、その中でも、さすがにピカソであれば、講談社の「ピカソ全集」で、キュビスム作品もかなり見ることができますが、ブラックですら、和書ではあまり見られないのではないかと懸念します。ましてや、グリスやグレーズやメッツァンジェとなると、あれだけキュビスムを代表しているにもかかわらず、これらの作家単独を対象とした書籍が日本で刊行されることも、日本での個展(回顧展)の企画も、ほとんど期待できません。ちなみに、レジェやドロ-ネー夫妻については、日本でも展覧会がありました。今後も可能性があるでしょう。クプカも展覧会がありましたが(1994年3月18日-5月8日:愛知県美術館, 1994年5月21日-6月26日:宮城県美術館, 1994年7月9日-8月28日:世田谷美術館。東京新聞)、クプカ展が開催されたときは、「よくぞ」と非常に驚いたものです。当方が生きている間には、クプカ展が日本で開催されることはもう二度とないのではないかと懸念します。
いずれにしましても、キュビスムの(またはキュビスム的な)作品を残している個々の作家ごとの和書の刊行が無理なのですから、キュビスム全体を対象として、しかも、図版をある程度網羅した書籍を刊行すれば、それで、マイナーな作家の作品も含まれるのではないかと思います。そういった書籍の刊行を熱望いたします。
ただ、キュビスムの作品図版を広く網羅的に収録するとなると、いったい何ページの本が必要になるのか、と心配になります。しかし、そういった本が、手許に欲しいのです。「マグリット400」ならぬ、「キュビスム400」(いや、400では足りないか)のような本が。ぜひとも。
ちなみに、最近は特に洋美術書に関する情報が十分に手許に入ってきていないのですが、もし洋書であれば、キュビスムに関して網羅的な図版が収録された書籍は存在するのでしょうか? そういう書籍を発見する方法はあるのでしょうか? 最初から想像できますが、グーグル検索やAmazonの検索で、そのような検索をしても、絶対に発見できません。残念ながら時間の無駄になるだけです。AIを活用した検索、といったことが言われ始めていますが、AIの活用で、そのような検索、すなわち書名、著者などの書誌情報からの検索ではなく、書籍の「内容からの検索」ができるようにならないものでしょうか? ただ、おそらく、AIをいくら活用したとしても、もともとネット上に情報がないと「検索」はできないと思いますので、この場でもよく書いている「ネット上のコンテンツの絶対的な不足」(ネット上の情報の絶対的な不足)が足枷になるんでしょう。とすると、現時点で、いや、今後もかなりの期間有効であり続ける方法は、原始的ではありますが、結局は、「詳しい人(専門家)に質問する」ということに落ち着くのでしょう。
なお最後に些末なことですみませんが、「もっと知りたいキュビスム」のほうで、作家の名前に欧文つづりを入れておいていただきたかったところです。最近は、インターネットでつづりなどすぐに見つけられるとは思いますが、Wikipedia日本語版にも項目が作成されていないようなマイナーな作家も含まれていますので、最後の図版索引のところにつづりがあれば、それでよかったのにな、と思います。今後の参考になればと幸いです。
(つづき)
7)2014年:ジョルジョ・デ・キリコ展(2014年6月21日-8月22日:岩手県立美術館, 2014年8月30日-10月19日:浜松市美術館, 2014年10月25日-12月26日:パナソニック汐留ミュージアム)
Cat. 1:ポール・ギョームの肖像(1915、41.0x33.0cm。パリ市立近代美術館、レゾネ93番)
Cat. 2:福音書的な静物(1916、80.5x71.4、大阪中之島美術館、レゾネ113番)
Cat. 3:遠い女からの挨拶(1916、48.2x36.5、個人蔵、レゾネ120番)
Cat. 4:謎めいた憂愁(1919、62x49.5、パリ市立近代美術館、レゾネ146番)
ここで、「レゾネ」とは、No.2108にも記載しましたが、次の本です。
De Chirico: The Metaphysical Period, 1888-1919
Paolo Baldacci、Jeffrey Jennings
Bulfinch Press
1998
ISBN-10: 0821224999
ISBN-13: 978-0821224991
先に書いたことと異なり、今までも、かなり1910年代の作品は展示されていました。重複を除けば、10点に及びます。記憶違いの思い込みで、今まで1910年代の出品作はなかったかのようなことを書いてしまいすみません。
なお、今回のデ・キリコ展では、No.2118にありますとおり、1910年代の作品は12点(油彩に絞っても10点)ですから、やはり多いことは間違いありません。
ちなみに、また別の機会に書いてみたいと思いますが、以上のような情報くらい、ネット上のボタン一押しで、ササッとまとめて出てきてくれないものでしょうか? このような情報蒐集・整理こそ、AIの出番だと思いますが、それ以前に、ネット上のコンテンツ(情報)があまりに足りないという問題はどうしようもありません。
過去のデ・キリコの展覧会の展覧会カタログを調べて、1910年代の作品を拾ってみました。古い企画も含めて、以下の7展です。「モノクロ図版」と記載していなければ、カラー図版が掲載されています。
1)1973年-1974年:デ・キリコによるデ・キリコ展(神奈川県立近代美術館 , 1973.11.2-12.16 ; 東京セントラル美術館 , 1974.1.8-1.27 ; 京都国立近代美術館 , 1974.2.10-3.24 ; 愛知県美術館 , 1974.3.30-4.14、主催: 毎日新聞社)
Cat.1:母の像(1911、所蔵先記載なし、モノクロ図版、レゾネの14番)
2)1982年:「デ・キリコ」展 孤独と神秘の無言劇(1982年9月23日-10月27日:船橋・西武美術館, 1982年11月19日-12月15日:八尾西武ホール、主催: 西武美術館)
1910年代の作品はなし
3)1989年-1990年:「デ・キリコ」展(1989年10月18日-11月6日:新宿・小田急グランドギャラリー, 1989年11月18日-12月24日:高松市美術館:1990年2月21日-3月21日:大丸ミュージアム・梅田、主催: 読売新聞社)
Cat. 2:母の肖像(1911、85.5x62cm、ローマ国立近代美術館、レゾネ14番)
Cat. 3:ガルツェン夫人の肖像(1913。72.5x60cm、ローマ、個人蔵、レゾネ28番)
Cat. 4:詩人の郷愁(1914、89x39.5cm、ヴェネツィア、ペギー・グッゲンハイム財団、レゾネ74番)
Cat. 5:自画像(1919、80x65cm、ローマ、個人蔵、レゾネに該当なし)
Cat. 6:シチリア菓子(1919、29x46cm、ミラノ、マリア・パセッティ氏蔵、レゾネに該当なし)
4)1993年:デ・キリコ展1920-1950(1993年6月5日-7月11日, 千葉県立美術館、1993年7月16日-8月15日:東京都庭園美術館, 1993年8月28日-9月26日:ナビオ美術館, 1993年10月30日-12月5日:ふくやま美術館)
1910年代の作品はなし
5)2000年:デ・キリコ 終わりなき記憶の旅(2000年11月11日-2001年1月14日:Bunkamuraザ・ミュージアム, 2001年6月1日-6月24日:石川県立美術館, 2001年6圧30日-7月29日:大分市美術館, 2001年9月1日-10月2日:美術館「えき」KYOTO。日本経済新聞社)
Cat. 1:終わりなき旅(1914、88x39cm、ワズワース・アセニアム、レゾネ77番)
Cat. 2:福音書的な静物I(1916、80.5x71.4、大阪中之島美術館、レゾネ113番)
6)2005年:巨匠デ・キリコ展 東洋の理想(2005年7月16日-8月28日 北九州市立美術館, 2005年9月14日-10月2日 大丸ミュ-ジアム梅田, 2005年10月6日-10月25日 大丸ミュ-ジアム東京, 2005年11月3日-11月20日 松坂屋美術館(名古屋)、2006年2月4日-3月21日:徳島県立近代美術館, 2006年3月29日-4月10日:大丸札幌店7階ホール。NHK)
1910年代の作品はなし