先にNo.2095とNo.2099、No.2100、No.2101でご紹介した「日本写真史 写真雑誌 1874-1985」について、ようやく公立図書館から借りることができたのですが、困ったことがありましたので、少し書いてみたいと思います。
まず、内容についてですが、日本で刊行されているので、次の本
The Japanese photobook 1912-1990
Kaneko Ryuichi, Manfred Heiting
Steidl (Göttingen)
2017
ISBN: 9783958291768
で見られたような内容の間違いはないと思います。その点は安心していいと思っています。(「The Japanese photobook 1912-1990」については、Nos,1535, 1536, 1537, 1538, 1547, 1548, 1566, 1592, 1597, 1607, 1608, 1639, 1640, 1641, 1642, 1643, 1644, 1645, 1647, 1648, 1649, 1650, 1652, 1750をご参照)
他方、形式的なことですが、造本的な点では、編著者というよりは、むしろ出版社のほうの常識に疑問を感じるような問題点がありましたので、記載してみたいと思います。
まず、この本を「個人」が、しかも、当方のような研究者でもないような素人が購入することはあるでしょうか? 税込22000円という価格から考えて、ほとんどありえないでしょう。そして、以前ご紹介した目次からおわかりのとおり、ほぼ5分の4が戦後を対象としているということから(戦前は500ページ中100ページ強)、当方個人にとっては購入はなおさらあり得ないでしょう。
とすると、今回のように公立図書館から借りて、必要な部分をコピーするという対応が一般的かと思います。書籍を借りることができない(閲覧しかできない)、国立国会図書館や各美術館の図書室の場合には、その場でコピーをする(コピーを依頼する)ということになるでしょう。
さて、この「コピーをする」という観点から、3点を指摘したいと思います。
1.本のサイズ
海外市場を意識しているためでしょうか、この本のサイズは、A4ではない、特殊なサイズです。このような特殊なサイズだと、コピーするときには、大変困ります。
なお、平凡社の紹介ページには「A4」とあります。ずいぶんいい加減ですね。
https://www.heibonsha.co.jp/book/b639160.html
もしかすると、同社刊行の次の2冊と同じサイズに揃えたのかもしれません。この2冊の正確なサイズは覚えていませんが、今回の本と同様、少し変わったサイズだった記憶があります。
日本写真史1840-1945/日本写真協会編/1971年
日本現代写真史 1945→95/日本写真協会編/2000年
とはいえ、このサイズという点はコピーする際に拡大縮小をすればいいので、「やむを得ない」と考えています。
ただ、国立国会図書館や各美術館図書室では、拡大縮小はできないことに注意すべきです。なぜできないのか、その根拠は知らないのですが、もしも著作権法上の制限だとしたら、何と形式的なことで制限するのだろうかと、あきれます。(別の公立図書館で)借りることができるならば、いくらでも自分で拡大縮小ができますし、一旦原寸でコピーしたものを、あとで拡大縮小もできるので(紙の無駄になりますし、画質も悪くなりますが)、このような制限は実質的には意味がありません。むしろ、拡大縮小不可となっている理由は、図書館・図書室のコピーの担当者のかたの手間の問題でしょう。いちいち要求を受け入れていたのではきりがないですし、仮に拡大縮小も受け付けるとしたら、サイズ間違いや、画面からはみ出るなどを含めて、失敗が続出するのではないかと思います。それを防止することが、むしろ主たる目的ではないでしょうか?
2.テキストが、ページの端や「のど(gutter)」にかかっている。
これは、致命的な問題です。実際にコピーをした方、しようとした方ならば、それがどんなに大きな問題かお分かりだと思います(この本だけではなく、他の本でも)。
そもそも、そんな端にテキストを配置する必要はまったくありませんので、なぜわざわざそうしたのか(または放置したのか)の理由が理解できません。少なくとも、出版社(の編集)側から、「こんなに端やのどのところにテキストを配置したら、コピーするときに問題になりますよ」という注意喚起がなされるべきだったと思います。そうならなかったこと(または、その指摘が無視されたこと?)も理解不可能です。
3.写真図版が「のど」の近くに配置されている、さらには、「のど」にかかっている(「のど」をまたいで配置されている)
第2点に加えて、この点も致命的です。のどの部分の写真はよく見えません。逆に、写真をなぜ「のど」にかかるような位置に置く必要があったのでしょうか? あえて見えにくくしたかったのでしょうか? さすがに、そんなはずはないでしょう。
例えば、84ページから85ページにかけての「日本観光写真壁画」(1937年?)のように、切れ目なく極端に横長の図版の場合には、「のど」にかかっていてもやむを得ないでしょう(だた、以前であれば、このような図版は、「折り込み」にしていたのではないでしょうか? コストを削減しようとしたのでしょうか?)。しかし、それ以外の場合には、図版の配置やサイズを変えることによっていくらでも避けることができたはずですし、そうすべきでした。
これはコピーする際だけの問題ではありません。この本を手にするすべての人にとって不便な点です。本当に見づらい。第2点と同じように出版社の編集者が、どうしてその点に意を尽くさなかったのか、理解に苦しみます。
以上ですが、内容が優れている本なだけに、このような形式的な点で問題があるということは、なおさら残念です。
なお、まさか違うとは思いますが、念のために書いておきますと、この本は、「のど」の部分がすっかり見えるように、(本が傷むほど、または、本が壊れるほど)「開き切る」ことが求められる本なのだ、ということなのでしょうか?
少なくとも、借りている本に対してそんなことは怖くてできません。