展覧会企画「キュビスム展 美の革命」ですが、現在、国立西洋美術館の会期は終了し、京都市京セラ美術館の会期が始まっていますが、その展覧会カタログの情報を入手しましたので、以下ご紹介します。
まず、目次です。
芸術の大革命 p. 10
ブリジット・レアル
キュビスムを理解するために――いくつかの視点 p. 16
田中正之
カタログ
1章 キュビスム以前――その源泉
「技師、野生人、職人――キュビスムの始まりにおけるセザンヌ、ゴーガン、ルソー」 p.26
シルヴィ・パトリ
「アール・ネーグルの物語――現代の視点から」 p. 37
柳沢史明
2章 プリミティヴィスム
「20世紀西洋美術史におけるアフリカ芸術の衝撃:最初の出会い」 p. 40
エレーヌ・ジュベール
3章 キュビスムの誕生――セザンヌに導かれて
「セザンヌの教え」 p. 52
松浦寿夫
4章 ブラックとピカソーーザイルで結ばれた二人(1909-1914)
「ブラックとピカソーーザイルで結ばれた二人(1909-1914)」 p. 62
ブリジット・レアル
5章 フェルナン・レジェとファン・グリス
「フェルナン・レジェとファン・グリス(1910-1914)」 p. 80
久保田有寿
6章 サロンにおけるキュビスム
「パリのサロンにおけるキュビスム(1911-1914)」 p. 92
クリスティアン・ブリアン
7章 同時主義とオルフィスム――ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー
「同時主義とオルフィスム――ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー」 p. 108
ブリジット・レアル
8章 デュシャン兄弟とピュトー・グループ
「デュシャン兄弟とピュトー・グループ」 p. 118
松井裕美
9章 メゾン・キュビスト
「メゾン・キュビスト」 p. 130
天野知香
10章 芸術家アトリエ「ラ・リッシュ」
「ラ・リッシュとキュビスムの啓示」 p. 138
ソフィー・クレップス
11章 東欧から来たパリの芸術家たち
「フェラ、エッティンゲン、シュルヴァージュ」 p. 156
ジャン=クロード・マルカデ
12章 立体未来主義
「ラリオーノフ、プーニー、ゴンチャローワ」 p. 164
ジャン=クロード・マルカデ
13章 キュビスムと第一次世界大戦
「キュビスムと第一次世界大戦」 p. 174
河本真理
14章 キュビスム以降
「キュビスム以降」 p. 190
村上博哉
「これは痙攣する幾何学だ!」 新聞・雑誌の報道におけるキュビスム(1908-1919) p. 209
アリアヌ・クーロンドル
奇想のキュビスム:大衆文化におけるキューブの変容(1911-1914) p. 216
マクシミリアン・タインハルト
キュビスムと女性芸術家――6人の出品作家を中心に p. 223
久保田有寿
1950年代、アンドレ・ロートと日本――キュビスムを巡る試論 p. 229
中山摩衣子
関連年表 p. 234
出品作家解説 p. 240
主要参考文献 p. 247
デ・キリコ展については、No.2072とNo.2087でご紹介しておりますが、東京都美術館のチラシを見ることができましたの、少し情報を追加します。1910年代の作品の出品情報です。
チラシには、1910年代の作品が3点掲載されています。1点目は、ポスターやウエブサイトなどでも、本展を象徴する作品として使われている作品です。3点目もウエブサイトに掲題されている作品です。
・《形而上的なミューズたち》1918年 油彩・カンヴァス カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館(フランチェスコ・フェデリコ・チェッルーティ美術財団より長期貸与)
・《沈黙の像(アリアドネ)》1913年 油彩・カンヴァス ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館
・《予言者》1914-15年 油彩・カンヴァス ニューヨーク近代美術館(James Thrall Soby Bequest)
これら3点に加えて、ウエブサイトに掲載されている1910年代の作品は、以下の2点。
https://dechirico.exhibit.jp/gallery.html
・《福音的な静物I》1916年 油彩・カンヴァス 大阪中之島美術館
・《弟の肖像》1910年 油彩・カンヴァス ベルリン国立美術館
以上ですが、さらに増えるでしょうか?
なお、以上5点については、次の書籍にも掲載されているので、1910年代の作品であることは間違いないでしょう。公式に認められているということになります。
De Chirico: The Metaphysical Period, 1888-1919
Paolo Baldacci、Jeffrey Jennings
Bulfinch Press
1998
ISBN-10: 0821224999
ISBN-13: 978-0821224991
当方が見た過去3回のデ・キリコ展(2000~2001年のBunkamura他の展覧会は除く、No.2072ご参照)では、1910年代の作品は含まれていなかったので、今回の企画は、その点だけでも画期的だと思います。とはいえ、上記書籍によれば、1910年代の形而上絵画だけで100点を越えているので、もしも5点だけでは「わずか」ということになってしまうでしょう。
最後に、都美のチラシが展覧会サイトに掲載されているかと調べてみましたが、掲載されていないようです。どうして掲載しないのでしょうか? すでに、そこにあるのですから、掲載することは容易です。何か、展覧会サイトにできる限り情報を集めて行こうという、そういう意識というか感覚というか、そういうものが欠落しているように思えてなりません。このような状態では、出品作品リストが掲載されることも危ぶまれます。
なお、東京都美術館のサイトには、チラシは掲載されています。
https://www.tobikan.jp/exhibition/2024_dechirico.html
次の本が刊行予定です。
放送大学教材 西洋の美学・美術史
小田部 胤久/宮下 規久朗
放送大学教育振興会
2024/03/20発売
価格 ¥3,960(本体¥3,600)
20世紀前半との関連は薄そうではありますが、興味深い内容です。
実際、20世紀美術についても、美学の観点からイズム横断的に深く解説した書籍が刊行されてもいいと思うのですが。20世紀美術については、もっぱらイズム同士の違いを際立たせた、全体の流れを説明するという傾向が強すぎるのではないかと懸念しています。ニューヨーク近代美術館の「キュビスムと抽象芸術」展(1936年)カタログに掲載された、アルフレッド・バー・Jr(Alfred Hamilton Barr Jr. (January 28, 1902 – August 15, 1981) )の系統図ではないですが、その方がわかりやすいためだとは思いますが。
以下、本書の目次です。
目次
美学の成立―感性的認識の学から芸術の哲学へ
美学の展開―芸術作品の存在論、感性論、身体美学
美―快とのかかわりに即して
美―知覚とのかかわりに即して
美的範疇―美の変貌
芸術の成立―模倣する技術から美しい技術へ
芸術の変貌―革新を支えるもの
創作と解釈―その循環構造をめぐって
聖像と偶像―宗教美術の始まり
聖母と美術―信仰を育んだイメージ
幻視と召命―キリスト教美術の本質
死と追悼―墓廟と記念碑
飲食と食材―風俗画と静物画
性と裸体―ヌードの歴史と意味
自然と人間―風景画と自然表現
東京ステーションギャラリーで巡回の最後を飾る「安井仲治」展が2月23日(金・祝)から4月14日(日)まで開催中ですが、「安井仲治」展についての次のウエブサイトで興味深いことを発見しました。
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202402_yasui.html
ページの右上に「日本語 EN Others」とあります。
日本語と次の「EN」(英語)はわかりますが、その次の「Others」とは何でしょうか?
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/translation/
このページを開けると、
Automatic Translation Service
自動翻訳サービスのご利用について
とあり、
中文(简化字)
中文(繁體字)
한국어(韓国語)
の3か国語への自動翻訳が掲載されています。
実際このページの末尾には、「自動翻訳システムによる機械翻訳のため、必ずしも正確な翻訳であるとは限りません。」と自信なさ気に記載されていますが、発想としては、とても素晴らしいアイデアです。
確かに、自動翻訳の質を評価することは当方にはできないのですが、こういった「試み」は、ぜひ今後も、他の企画、他館などに広がって行って欲しいと願っています。「マンパワー的に(英語以外の)翻訳が難しいからもう諦める」、というのではなく、AIを適宜活用していこう、という方向性です。
しかも、中国・韓国だけでなく、ヨーロッパの言語や東南アジア・南アジア・中東などの言語も含めて。
よろしくお願いします。
次の展覧会が開催予定です。
TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション
東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 2024年5月21日(火)~8月25日(日)
大阪中之島美術館 2024年9月14日(土)~12月8日(日)
https://www.momat.go.jp/exhibitions/558
「総勢110名の作家による、絵画、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など150点あまりの作品で34のトリオを組み、それをテーマやコンセプトに応じて7つの章に分けて紹介することで、20世紀初頭から現代までのモダンアートの新たな見方を提案し、その魅力を浮かびあがらせます。」ということで、20世紀前半が対象に含まれていることは間違いありませんが、まだ全貌が明らかになっておらず、期待できるのかどうかがよくわかりません。
今後の情報を待ちましょう。