No.2149でご紹介した「ヒルマ・アフ・クリント展」が既に開始しております。
美術手帖で特集が組まれ(美術手帖では、昨年も一昨年も、しばらく展覧会企画に因んだ特集は存在しなかったのでは?)、芸術新潮でも特集が組まれていて、知名度の割に注目が集まっているようです。
展覧会には、当方も足を運びたいと思っておりますが、さて実現できるかどうか。
この企画に関して、特に関心があるのは、美術史の観点から見て、抽象絵画の系譜の中において、ヒルマ・アフ・クリントをどのように位置づけるのか、という点です。カンディンスキーは表現主義から、モンドリアンはキュビスムから、そして、これら2人とヒルマ・アフ・クリントは系統が異なるということなりそうですが、そうだとすれば、ヒルマ・アフ・クリントは「抽象絵画の第3の道」と評価できるのか? 例えば、アメリカのアーサー・ダヴとの位置関係もどうなるのか? これらの点について、この企画またはこの企画に関連して発表される文献により解き明かしていただければ、と思っております。
「先駆的」や「カンディンスキーよりも早い」という点ばかりが注目されているるような気がしますが、そればかりではなく、アフ・クリントには、抽象絵画の歴史、ひいては近代絵画史を見直す契機が潜んでいるのではないか、と思うのです。特に、「先駆的な抽象絵画」は、他にもあるのではないか、という気がしています。他の作家の作品についても、それを単なる模様や文様と分かつ役割を果たす「抽象への強固な意思」を発見することができるのではないか。そして、それを発見できていない今までの状況については、実は美術史側の問題が存在するのではないか。
アフ・クリントの作品・成立の経緯・その思想などを調べることは、様々な問題提起の可能性をはらんでいるのではないかと思っています。
遅ればせのご紹介ながら、次の展覧会が開催中です。
ル・コルビュジエ 諸芸術の綜合 1930-1965
パナソニック汐留美術館
2025年1月11日(土)〜 3月23日(日)
主催:パナソニック汐留美術館、朝日新聞社
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、在日スイス大使館、一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会、港区教育委員会
特別協力:ル・コルビュジエ財団、大成建設株式会社
協力:株式会社カッシーナ・イクスシー、Echelle-1
会場構成:ULTRA STUDIO
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/
作品リストもチラシも掲載されています。
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/pdf/list.pdf
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/pdf/leaf.pdf
「活動前半期に焦点をあてた「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」展(国立西洋美術館、2019年)に続き、40歳代以降の円熟期の創作にスポットをあてる日本ではじめての試みです。」と紹介が始められています。
作品リストを見ると、作品数が100点程度と相当な規模の企画で、大きく期待できます。
会期はもうあまり残っておりませんので申し訳ありませんが、ご関心のあるかたはぜひ急いでお出かけください。
先にご紹介しましたように、生成AIで、写真家の名前の欧文つづりと生没年について回答を求めたところ、思った以上にいい結果が出ました。No.2054、No,2055で調べた2023年4月から、かなり性能が良くなっている可能性を感じました。そこで、同じ質問をして、その性能の向上具合を調べることにしました。
対象のAIは、欧文つづりと生没年を調べた時と同じ、次の3つ。
Chat GPT(Open AI)とGemini(旧称Bard)(Google)とCopilot(Microsoft)
さらに、質問は、No.2054と同じ、次の質問です。
『1920年から1945年までに活躍した最も重要な日本の写真家を10人挙げて下さい。名前は漢字表記で、また生没年も併せて記載してください。』
1)まず、Chat GPT(Open AI)の結果です。
『1920年から1945年に活躍した日本の写真家の中で、特に重要とされる10名を以下に挙げます。名前は漢字表記で、生没年も併せて記載いたします。
これらの写真家たちは、1920年から1945年の間に日本の写真界で重要な役割を果たしました。彼らの作品や活動は、日本の写真史に大きな影響を与えています。』
2)続いて、Gemini(旧称Bard)(Google)の結果です。
『1920年から1945年までに活躍した日本の重要な写真家10人を、漢字表記と生没年付きでご紹介します。
これらの写真家は、日本の写真史において重要な役割を果たし、後の世代に大きな影響を与えました。彼らの作品は、日本の社会や文化、人々の生活を捉え、時代を記録する貴重な資料となっています。』
3)最後に、Copilot(Microsoft)の結果です。
『こちらが1920年から1945年までに活躍した日本の写真家のリストです:
これらの写真家たちは、日本の写真史において非常に重要な貢献をしています。興味深いですね!どの写真家についてもっと知りたいですか?』
以上ですが、やはり、いろいろと問題が残っています。非常に評価が難しいですが、100点満点で何点くらいかを考えてみましょう。
1)Chat GPT(Open AI)
挙げられた10人中、大竹省二以外は、戦前の写真家ですから、かなり高得点と言わねばなりません。前回は10人中2人(木村伊兵衛と福原信三)しか戦前の写真家ではなかったので、目を見張るような「進化」です。しかし、「10人の戦前の写真家」に入っていてしかるべき、重要な写真家である安井仲治、中山岩太、小石清、野島康三が4人とも抜けています。この4人を落とすことはできないでしょう。以上から、60点としたいと思います。
2)Gemini(旧称Bard)(Google)
今回の3つのAIの中で最も悪い結果を出して来ました。10人中5人は戦後の写真家。しかも、川田喜久治の名前を間違えている。さらに、上に記載しました重要な写真家の4人、安井仲治、中山岩太、小石清、野島康三も含まれていない。これは、30店~40点でしょう。最後に、名取洋之助は、本当に「雑誌『LIFE』の日本人スタッフ」でしたっけ?
3)Copilot(Microsoft)
この回答は、3つのうち最も点数が付けにくいものです。写真家ではない「岡田桑三」が含まれている(しかし、「独逸国際移動写真展」の招致(村山知義とともに)という写真に関係した重要な活動もある)。それ以外に、戦後の写真家といえるのは川島浩1人だけ。ということは、残り8人は戦前の写真家といえることになり(実際には、植田正治が重複していて7人)、しかも、上記重要な写真家4人のうち安井仲治、中山岩太を含んでいるという、大きく評価できるポイントがあります。ところが、中山岩太の名前を間違えている(生没年も間違えている、なお安井仲治も生没年が間違っている)。安井仲治も藤本四八も植田正治も名前の読み方を間違えている(名前の読み方を書いてくれなどと、こちらから求めてはいないのだが?)。以上を踏まえて、せっかく安井仲治と中山岩太が入っているのですが、ChatGPTと同じ60点としたいと思います。
ちなみに、上に書いてあるものを除き、個別の生没年が正しいかどうかはいちいちチェックしていません。ただ、誘惑に負けて、最初の2人、植田正治と土門拳の生没年を確認しましたが、いずれも間違いでした。
以上ですが、ひとことで言えば、「このレベルでは、どのAIもまだまだ使えない」ということです。回答について評価できる人間が見て確認しないと、そのままの内容では、未だに怖くて使い物にならない、ということです。
加えて、予想できない間違いをするという点もAIの怖さとして感じました。例えば、「安井仲治」という名前はあっているのに、読み方も生没年も違うという間違い。名前があれば、ネット上でいくらでも情報があり、読み方も生没年も確認の方法があるはずなのに、結局間違っている。確認を怠ったのか、それとも、それ以外の理由があるのか不明です。人間のほうがかえって間違えないと思います。
なお、今回は、前回と同じ質問にするため、あえて「情報の出典」についての質問は追加しませんでした。「やすいちゅうじ」や「中山岩太郎」がどこから来た間違いなのか別途確認してもいいかもしれませんが、あまり生産的ではないでしょう。
他方、No,2055で試した質問は、次の通りです。
『写真家である高橋渡(1900-1944)の詳細な経歴を教えて下さい。』
前回(2024年4月)のChat GPTの間違いだらけの回答(あまりにひどくてこのブログに掲載もできませんでした)とは異なり、今回は、3つの生成AIとも、及第点の回答を出して来ましたので、ここには掲載いたしません。Wikipediaや東京都写真美術館のサイトを参照して回答を生成しているようです。少なくともWikipediaの記事などは、前回の時点にも存在していましたが、前回は参照を怠っているのですね。
また1年くらいたったら、生成AIに対して同じ質問(1920年から1945年までに活躍した最も重要な日本の写真家を10人)をしてみようと思います。「代表する10人」ような質問は、質問する側がよく知っている分野であれば、各生成AIの能力を比較して評価することに適した質問と言えるかもしれません。
次の展覧会が開催中です。
東京大空襲80年-新たな記録を探し続けて-
すみだ郷土文化資料館3階展示室
開催期間:令和7年2月15日(土曜日)から令和7年5月25日(日曜日)まで
開館時間:午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週月曜日・毎月第4火曜日(それぞれ祝日の場合は翌平日)
入館料」個人100円、団体(20人以上)1人80円、中学生以下と、身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と介助の方は無料。
https://www.city.sumida.lg.jp/sisetu_info/siryou/kyoudobunka/info/kushu06.html
チラシも
https://www.city.sumida.lg.jp/sisetu_info/siryou/kyoudobunka/info/kushu06.files/kushu06.pdf
パンフレットに当たるもの
https://www.city.sumida.lg.jp/sisetu_info/siryou/kyoudobunka/info/kushu06.files/miyako70.pdf
もウエブサイトに掲載されています。
関連イベントとして、次の2つも開催予定です。
・証言映像上映会と講演会「東京大空襲とすみだ」
講師 多田井 利房氏・深谷 陽子氏(スミダSGEP)
令和7年3月1日(土曜日)午後1時から午後3時まで
先着40名 入館料のみ
・空襲体験画ギャラリートークと平和祈念コンサート
令和7年3月9日(日曜日)午後1時から午後2時40分まで
先着40名 入館料のみ
https://www.city.sumida.lg.jp/sisetu_info/siryou/kyoudobunka/schedule.html
https://www.city.sumida.lg.jp/sisetu_info/siryou/kyoudobunka/info/0603talk.html
展示の規模(作品が何点展示されるのかなど)がすぐにはわかりませんが、非常に興味深い企画です。特に、両国の工藤写真館の初代、工藤哲朗という写真家の写真を調査し、展示していることが注目されます。このため、一部の写真について撮影者として工藤哲朗の名前があります。東京大空襲の写真について(警視庁のカメラマン以外の)撮影者が特定されているというのは、珍しいことなのではないかと思います。
このような、空襲に限らず、太平洋戦争を記録した写真は、少しずつでしょうが、今後もまだまだ出てくるのではないかと思いますので、期待できます。
今回の企画の説明などを読んでいると、東京大空襲(より広くは太平洋戦争)の実相について、実は、まだまだ分かっていないことが多い、それも基本的な部分で、ということがわかります。
引き続き、全国でこのような企画が増えて行って欲しいと思います。
なお、本企画のご担当の学芸員は石橋星志さんというかたです。
同館の次回の展示も、東京大空襲を対象とした企画だそうですが、次年度(2025年度)になるためか、まだ上記サイトでは詳細は公表されていません。
最後に、「太平洋戦争」の関係の写真(空襲、原爆、庶民の暮らしなど)は、かなりたくさんあり、しかも、全国各地で発見され、保管されていると思います。このような情報について、ぜひとも、データベースを構築して1つに情報をまとめていただきたい。そして、そのデータベースを用いれば、「太平洋戦争に関して(この地域の)このような写真が必要だ」というときに、どの書籍や資料を見ればいいのか、または、どの機関(資料館、博物館など)に問い合わせればいいのかが、すぐにわかる、という状態にしていただきたい。今のままでは、あまりに情報がばらばらで、適切な情報を発見することが困難な状態になっていると思います。
そのデータベースの一元化を、どの機関が実施するのかは、当方には判断できませんが、例えば、いきなり全国一元化は難しいかとも思いますので、まずは、都道府県や地方ごとにある程度のかたまりでまとめ、それらの「まとまり」をさらに一元化に向けてまとめるという複数のステップに分ける方法が、現実性があるように思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
(つづき)
Copilot(Microsoft)の回答
回答1:バーニス・コルコの欧文つづりは Berenice Abbott です。彼女の生年月日は 1898年7月17日、没年月日は 1991年12月9日 です[1][2][3]。
この情報の根拠として、以下のような信頼できる情報源があります:
他に知りたいことがあれば、どうぞお知らせください!
References
[1] Berenice Abbott - Wikipedia
[2] Berenice Abbott | Amon Carter Museum of American Art
[3] Abbott, Berenice (1898–1991) - Encyclopedia.com
回答2:バーナード・シルバースタインの欧文つづりは Bernard Silverstein です。彼の生年月日は 1927年12月3日、没年月日は 2003年2月1日 です[1][2]。
この情報の根拠として、以下のような信頼できる情報源があります:
他に知りたいことがあれば、どうぞお知らせください!
References
[1] Bernard Silverstein 1927 - 2003 - AncientFaces
[2] Bernard Silverstein (1927-2003) - Find a Grave Memorial
回答3:バーナード・G・シルバースタインの欧文つづりは Bernard G. Silberstein です。彼の生年月日は 1905年1月23日、没年月日は 1999年11月21日 です[1][2]。
この情報の根拠として、以下のような信頼できる情報源があります:
他に知りたいことがあれば、どうぞお知らせください!
References
[1] Bernard G. Silberstein Biography | Annex Galleries Fine Prints
[2] Bernard G. Silverstein - Artnet
回答は以上ですが、以下、それぞれを評価してみます。
(Chat GPT(Open AI)の回答の評価)
100点満点中66点ですね。
回答2にはびっくりしました。「わからない」という回答は、むしろ利用者からの信頼性を得られるように思います。以前ならば、こういう回答は出てこなかったのではないかと勝手に推測しています。これに備えて考えた、ミドルネーム「G.」を追加するという方法で回答を得ることができました。この点は、むしろ「AIに対してどういう方法で質問することがいいのか」という点についてのヒントになるかもしれません。
(Gemini(旧称Bard)(Google)の回答の評価)
これは、100点と言わざるを得ません。「問3」も省略しました。
(Copilotの回答の評価)
100点満点中33点ですね。
回答1は、予想外ながら、全く別人のベレニス・アボットと取り違えています。
回答2は、つづりはあっているものの、Referencesを見ても、写真家かどうかはわかりません(その情報は登録(free trialあり)しないと見られない)。また、AIには提供していない情報ですが、「フリーダ・カーロ作品集」には、彼の1940年頃の写真が掲載されており、1927年生まれが正しいとすると、13歳ごろに撮影した写真が掲載されていることになりますので、この生没年が正しい可能性は極めて低いでしょう。そして、次の「回答3」から、回答2が間違いであることがわかりました。
回答3:ミドルネームの「G」を入れたら、正しいと思われる回答を得られました。回答2と回答3の違いが生じるということは、新しい発見です。
なお、バーナード・シルバースタインですが、自分で検索した時も、「Silverstein」とするサイトと,「Silberstein」とするサイトがあり、現時点ではどちらが正しいのかはわかりませんでした。したがって、上記では、いずれも正解としています。
今後生成AI発展のためにどういう方向性が考えられるかについては、後日また考えてみたいと思います。
なお、上記結果からすると、Gemini(旧称Bard)(Google)が最も信頼がおけるようですが、事はそう単純ではありません。後日、別な質問への回答結果について別項にて書いてみたいと思います。そこでは、この3つのうち、Gemini(旧称Bard)(Google)の回答が最も質が低くなりました。