アジア遊学146
民国期美術へのまなざし
辛亥革命百年の眺望
瀧本弘之 編
勉誠出版
ISBN 978-4-585-22612-3
刊行年月 2011年10月
判型・製本 A5判・並製 240 頁
定価:2,640円(本体 2,400円)
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=&products_id=100042
目次
序説 民国期美術に向けた「断想」 瀧本弘之
一、伝統藝術の地殻変動
金城と一九二〇年代の北京画壇 戦暁梅
日中美術交流最盛期の様相 吉田千鶴子
書画文墨趣味のネットワーク 松村茂樹
民国期における書画骨董の日本への将来をめぐって
─アロー号事件から山中定次郎・原田吾朗まで 風見治子
ある外交官が見た中国近代絵画
─須磨弥吉郎の東西美術批評を手がかりに 呉孟晋
二、新興藝術の動向
魯迅と中国新興版画 奈良和夫
傅抱石と新興版画の周辺
─『木刻的技法』の出版をめぐって 瀧本弘之
劉海粟と石井柏亭
─『日本新美術的新印象』と「滬上日誌」をめぐって 東家友子
中華独立美術協会の結成と挫折
─一九三〇年代の広州・上海・東京の美術ネットワーク 蔡濤(大森健雄・訳)
中国人留学生と新興木版画
─一九三〇年代の東京における活動の一端を探る 小谷一郎
三、美術における周縁分野の拡大
戦前に「剪紙の美」を追い求めた日本人
─柳宗悦、中丸平一郎から伊東祐信まで 三山陵
「アジアの旅人」エリザベス・キース
─英国人女性浮世絵師誕生までの活動を追って 畑山康幸
満洲に活躍した異色玩具コレクター
─須知善一の数奇な生涯とその遺産 中尾徳仁
海を超えた美術
─廈門美専・南洋美専の創始者、林学大をめぐって 羽田ジェシカ
あとがき 瀧本弘之
少し前ですが、次の本が刊行されています。目次も併せてご紹介いたします。
アジア遊学269
近代中国美術の辺界
越境する作品、交錯する藝術家
瀧本弘之・戦暁梅 編
勉誠出版
ISBN 978-4-585-32515-4
刊行年月 2022年5月
判型・製本 A5判・並製 372 頁
定価:3,850円(本体 3,500円)
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=101292
目次
序説 「近代中国美術の辺界」への随想 瀧本弘之
Ⅰ 美術をめぐって、美術を超えて
「西湖藝展」開催の経緯―「斎藤佳三資料」を手がかりに 吉田千鶴子
上海租界のフランス語新聞にみる近代中国美術―林風眠と杭州国立藝術院を中心に 趙怡
一九三〇年代の北平画壇のグリンプス 瀧本弘之
長尾雨山の近代日中美術交流における貢献 松村茂樹
魯迅とケーテ・コルヴィッツ―日本プロレタリア美術運動との関わりを中心に
東家 友子
太平洋の対岸へ発信された「辺区像」―中国共産党の海外宣伝事業に使われた「延安木版画」を解析する 陳琦
戯劇改良運動初期の石版戯曲年画「二十四世紀新茶花」について 三山陵
京劇俳優梅蘭芳と日本美術界の交流について 佐々木幹
Ⅱ 日本に行く画家、中国に行く画家
徐悲鴻と文展作品―そこから得たもの 華天雪 (翻訳:林佳美/翻訳協力:李趙雪)
[コラム]嶺南画派と日本 李趙雪
広東から来た前衛画家―一九三〇年代の東京における李仲生の画業について 呉孟晋
[コラム]近代中国における「裸体画論争」―日本との比較を視野に入れて 龔珏
朝鮮近現代美術史を歩んだ洋画家・鄭温女―ある女子美術専門学校卒業生の生涯 畑山康幸
[コラム]顕現と隠蔽―従軍画家の描いた戦時中の中国 劉建輝
Ⅲ 中国美術品の収蔵、中国美術史の記述
チェコのコレクターと近代中国絵画 オリボバ・ルツィエ(翻訳:東家友子)
近代書画碑帖収蔵史について 下田章平
廉泉「小萬柳堂書画コレクション」の初来日再考―『南湖東遊日記』を主な手掛かりに 戦暁梅
外国人宣教師の目線でつくられた土山湾孤児院の黄楊人形―天理参考館所蔵資料を例にして 中尾徳仁
[コラム]「徐家匯板聖徒像」の発見 瀧本弘之
書を編み込んだ中国美術通史 菅野智明
[コラム]ベトナム絵画の「父」と「兄」―画家ナム・ソンの美術論 二村淳子
あとがき 戦暁梅
年号対照表
いやいや、こんな本があったのかというような、すごいテーマの本ですね。勉誠出版というのは、恐ろしい出版社です。
ただ、もっとすごいことは、以前に、同出版社からほぼ同じテーマで、すでに2冊の本が刊行されていることです。以下のとおりです。今回はじめて気づいたという当方も相当にぬかっていたのですが。
ただ、残念なことにといいますか、予想されていたとおりにといいますか、「絵画作品」が主体であって、「写真作品」については、触れている論文はないようです。今後に期待いたします。そして、実際に期待できると思います。
また、実物を見ることができた今回の書籍、また目次だけしか見ることのできていない過去の2冊から判断して、どうも、ほとんどの論文は「各論」で、なかなか素人には入り込みにくい内容になっているのではないかと思います。中華民国期(20世紀前半)の美術の状況の概要を、年表やグループの系統図も使って網羅的に紹介していただくような、全体像がわかる論文が欲しいところです。その論文において、すでに収録されている各論分の全体の中での位置づけも見えてきて、わかりやすくなるのではないかと愚考いたします。
アジア遊学168
近代中国美術の胎動
瀧本弘之・戦暁梅 編
勉誠出版
ISBN 978-4-585-22634-5
刊行年月 2013年11月
判型・製本 A5判・並製 248 頁
定価:2,640円(本体 2,400円)
https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=&products_id=100279
目次
序 論 瀧本弘之
①伝統絵画の革新
北京画壇の周辺 戦暁梅
〈コラム〉中国初の国家博物館―古物陳列所 戦暁梅
呉昌碩が日本にもたらしたもの 松村茂樹
〈コラム〉碑学の発展と金石書画の興起 松村茂樹
呉友如―清末から民国へ 三山陵
〈コラム〉カタイ幻想を西洋に伝達した「外銷画」 瀧本弘之
〈コラム〉土山湾画館 東家友子
〈コラム〉周湘―未解明の早期美術教育家 東家友子
民国期の伝統版画に就いて 瀧本弘之
〈コラム〉月份牌 三山陵
②新興藝術の動向
前衛絵画の「代理戦争」 呉孟晋
〈コラム〉決瀾社の画家たち 呉孟晋
魯迅とドイツ版画 東家友子
〈コラム〉魯迅と美術 奈良和夫
〈コラム〉木刻青年たち 瀧本弘之
③国際化と交流の流れ
斎藤佳三と林風眠 吉田千鶴子
陳抱一と日本 劉建輝
〈コラム〉競い合う徐悲鴻と劉海粟 瀧本弘之
傅抱石と日本 前田環
〈コラム〉民国期全国美術展の開催 瀧本弘之
(つづく)
次の書籍が刊行されています。
写真図説 占領下の大阪・関西 - 昭和20年(1945)~昭和30年(1955)
毎日新聞大阪本社・編/橋爪 紳也・編著
創元社
2022/06発売
価格 ¥2,970(本体¥2,700)
毎日新聞社の写真による写真集です。こういうタイプの写真集は、いきおい東京中心になることが多いのですが、「大阪・関西」となっている点に、最大の特徴があるように思います。
戦後だけが対象かと思えば、1945年に大阪を何度も襲った空襲の写真も含まれています。確かに、期間としては「1945年」も入っていますから、含まれていてもおかしくはありませんが、本のタイトルが「占領下の」となっているので、その前の時期に当たる空襲まで含まれているとは思いませんでした。やや誤解を生むタイトルであったといわざるを得ません。少なくとも、当方は見逃すところでした。
あと、撮影者が誰なのか、という点の調査や、本書における記載・言及はもっとあってしかるべきだったでしょう。もちろん、1枚1枚について、誰が撮影者なのかを調査すること、ましてや、それを確定することは不可能であり、それを求めているのではありません。例えば、当時の毎日新聞の写真部の歴代部長(p202には、「高田正雄」という部長名が唐突に挙がっていますが、それにとどまっています)はどなたで、所属していた写真家(カメラマン)は誰々であった、また、写真部の戦前からの沿革はこれこれで、当時の写真部の状況はこれこれこんな感じであった、ゆえに、これらの者が撮影していたということが推測される、といったような記述で十分です。それとも、それだけの記録すら毎日新聞社には残っていないのでしょうか? そうだとするならば、非常に嘆かわしいことです。
それにしても、「写真」のパワーは、こういうテーマの場合に最大限に発揮されますね。「絵画」ではこうはいきません。数量的にも本書に掲載されているくらいの数量の絵を描くことは無理ですし、またリアリティにも格段の差が出てしまいます。
以下、目次を掲載しておきます。
目次
はじめに
◇序章 占領期における報道写真をめぐって
――大空襲・占領・復興期の時代背景 (橋爪紳也)
◇第1章 大空襲と焼け野原
◇第2章 占領下の街
◇第3章 戦後復興の人と暮らし
毎日新聞紙面から①「進駐機に同乗・空から戦災大阪を一望」
毎日新聞紙面から②「聯合軍・関西進駐を開始」
毎日新聞紙面から③「闇市静かに閉鎖」
おわりに 毎日新聞社大阪本社 情報調査部長 長谷川容子
参考文献
索引
最後に、個人的な希望としては、もう別の書籍としてということになりますが、1945年の空襲だけではなく、「太平洋戦争下の大阪・関西」くらいに対象を広げた写真を書籍にまとめていただければありがたいです。橋爪さんの「序章」には本書のことを「初弾」と書いておられるので、第2弾、第3弾を期待いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
次の本が刊行予定です。
原爆写真を追う - 東方社カメラマン林重男とヒロシマ・ナガサキ
林重男/井上祐子
みずき書林(2022年11月末発売予定?)
価格 ¥2,860(本体¥2,600)
著者の井上祐子さんは、以前から東方社や戦争(太平洋戦争だけではなく、日清・日露戦争も)に関連する写真を、広く追っておられる方で、以前もこのスレでご紹介したことがありました。
今回の著書は、タイトルからして、戦後の写真についての本ではありますが、「東方社」という言葉もサブタイトルにありますので、戦前とのつながりについても記載されているかもしれないと、ご紹介いたしました。
実物を拝見できれば、その辺りについて再度ご紹介したいところです。
なお、本書は、林重男『爆心地ヒロシマに入る―カメラマンは何を見たか』(岩波書店、1992年初版)に詳細な評伝と注を加えて再編集したもの、だそうです。この岩波の本は、岩波ジュニア新書のようです。
https://www.mizukishorin.com/25-3%E5%8E%9F%E7%88%86%E5%86%99%E7%9C%9F%E3%82%92%E8%BF%BD%E3%81%86
最後に目次を掲載しておきます。
はじめに
第Ⅰ部 爆心地ヒロシマに入る――カメラマンは何を見たか 附補注
第Ⅱ部 解説 原爆と東方社――写真家・林重男小伝
参考文献
掲載図版一覧
あとがき
次の本が刊行予定です。
写真をアートにした男 石原悦郎とツァイト・フォト・サロン
粟生田弓
価格 ¥880(本体¥800)
小学館(2022/12/06発売)
2016年10月に単行本として小学館から刊行されたときにもご紹介いたしましたが、何と文庫化されるんですね。
内容は変わらないとは思いますが、まだお読みではない方は、ぜひこの機会に。
しかし、ツァイト・フォト・サロンは、なぜ後継者が育たずに閉廊してしまったのでしょうか、不思議です。