次の本が刊行されています。
男性のいない美術史―女性芸術家たちが描くもうひとつの物語(THE STORY OF ART WITHOUT MEN)
著者:ケイティ・ヘッセル,〈Katy Hessel〉
翻訳:鮫島 圭代
パイインターナショナル
2025/09発売
価格 ¥7,480(本体¥6,800)
かなり聞いたことのない名前(作家名)が含まれています。
1900年~1950年のすべての図版の作者の名前を記載にしたかったのですが、量的に無理なので、写真作品図版に限って、撮影者として付されている名前を掲げます。
クロード・カアン
ハンナ・ヘッヒ
ゲルトルート・アルント
ドラ・マール
リー・ミラー
ティナ・モドッティ
ドロシア・ラング
この範囲では、それほどめずらしい名前が挙がっているわけではありません。
この本の大きな問題としては、美術家の名前の欧文つづりがないことです。
以前も同じことを書いていることがありますが、「翻訳もの」なのだから、欧文つづりは、間違いなく「もともとそこにあった」はずです。それを残しさえすれば終わりだったのですが、欧文つづりがないと、それを見つけ出すのは、ケースバイケースではありますが、なかなか厄介です。特に、あまり著名でない作家については。
例えば、巻末の「索引」だけでも、欧文つづりを残す、という発想がなかったのでしょうか?
ただ、同様に巻末に掲載されている「挿絵一覧と写真の謝辞」が、原著の原文そのままのようですので、もしかすると、これで作家名のつづりの大部分をカバーできるかもしれません。
さて、最後に、中身から、1点だけ重要な内容を。
160ページ以降に、「レディメイド」について、マルセル・デュシャンより先んじていたかもしれない、さらには、デュシャンの「泉」の真の作者かもしれない、として、バロネス・エルザ・フォン・フライターク=ローリングホーフェン(Elsa Baroness von Freytag-Loringhoven、1874~1927)という作家が挙げられています。
この点はすでに有名なことなのかもしれませんが、当方はここで初めて知りました。
最後に目次を掲げておきます。
目次
訳者まえがき
はじめに
第1部 道を切り拓く 1500年頃‐1900年頃
第1章―芸術のカノン(正典)を彩る女性たちの自画像
第2章―栄光に満ちた芸術表現の時代
第3章―写実主義から心霊主義へ
第2部 芸術を近代化させたものとは 1870年頃‐1950年頃
第4章―戦争、アイデンティティ、パリの前衛芸術
第5章―第一次世界大戦の余波
第6章―アメリカ大陸におけるモダニズム
第7章―戦争、新しい技法・メディアの台頭)
第3部 戦後の女性たち 1945年頃‐1970年頃
第8章―素晴らしき実験精神の時代
第9章―政治的変化と新たな抽象芸術
第10章―身体
第11章―新しい伝統を編む
第4部 自分で手綱を握る 1970年頃‐2000年頃
第12章―フェミニズムの時代
第13章―1980年代
第14章―1990年代
第15章―イギリスにおける急進的変革
第5部 「美術の物語」の執筆は今も続く 2000年‐現在
第16章―史の語りにおける脱植民地化と、伝統の再構築
第17章―21世紀における具象表現
第18章―2020年代
用語集
年表
注釈と参考文献
挿絵一覧と写真の謝辞
謝辞
著者について
索引
先にご紹介した「開封・戦後日本の印刷広告: 『プレスアルト』同梱広告傑作選〈1949-1977〉」は、プレスアルトの戦後の部分を中心にしていました。しかし、プレスアルトは戦前から刊行されていますが、戦前の部分は、どうやら次の復刻版くらいしか資料はないようです。
なお、この本は当然のごとく、もう入手は不可能です。ただ、在庫があっても、個人で所有できるような価格ではありませんね。
復刻版 『プレスアルト』 (全3巻)+別巻CD-ROM
嶋田 厚 編
津金澤 聰廣 編
出版社:柏書房
定価:181,500円(本体 165,000円)
刊行:1996/07/01
ISBN:4760113053
ページ数:1,324
https://www.kashiwashobo.co.jp/book/4760113053
『昭和12年から昭和19年までに73号を発行した作品付広告・宣伝批評誌を完全復刻。山名文夫,亀倉雄策,原弘ら戦後の広告界を支えた著名人が登場。従来の広告・宣伝史の改変をも迫る資料。奇跡的に保存されていた作品180点をCD-ROMに収録。』
ということです。
3巻の概要は以下のとおりです、
目次
第1巻:昭和12年~14年・第1号~第33号
第2回:昭和15年~16年・第34号~第50号
第3巻:昭和17年~19年・第51号~第73号、解題、総目次、他
念のため、ご紹介まで。
次の本が刊行される予定です。
ラジオと写真家: 「声」の日本写真小史・1925-1944
松實輝彦
創元社
発売日 : 2025/12/19
3080円
ソフトカバー : 272ページ
おおお、『広告写真のモダニズム 写真家・中山岩太と一九三〇年代』(青弓社)の著者でもある松實さんの新刊です。
思いもつかないようなテーマ、題材ですね、さすがです。創元社も面白い本を出版するものです。
登場する写真家としては、福原信三、中山岩太、木村伊兵衛という名前が挙がっています。
楽しみです。
なお、この本を調べている間に、次の少し昔の本も、いまさらながら発見しましたので、ご紹介します。戦後が対象ではありますが、「プレスアルト」についての本とは珍しい。
開封・戦後日本の印刷広告: 『プレスアルト』同梱広告傑作選〈1949-1977〉
竹内 幸絵 (編), 石田 あゆう, 植木 啓子, 北廣 麻貴, 熊倉 一紗, 佐藤 守弘, 寺本 美奈子, 松實 輝彦, 村瀬 敬子, 輪島 裕介
創元社
発売日 : 2020/3/10
4950円
240ページ
大阪中之島美術館の2025年度の企画(2155)でご紹介しました、大阪中之島美術館の「シュルレアリスム 拡大するイメージ 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」(2025.12.13 – 2026.03.08)ですが、詳細な紹介が公表されていました。
https://nakka-art.jp/exhibition-post/surrealism-2025/
出品作品リストはまだありませんが、チラシは掲載されています。
https://nakka-art.jp/wp10/wp-content/uploads/2025/06/Surrealism_flyer_0710.pdf
三重県立美術館長の速水豊さんの講演会もあります。
中之島美術館の紹介ページには、出品される作品の図版がいくつか掲載されていますが、その中で気になるのは、2点も掲載されているヴォルスの写真作品です。
1点は、
ヴォルス/《美しい肉片》/1939年/個人蔵
もう1点は、
ヴォルス/《無題》/1937 / 1979年の再プリント/横浜美術館
です。
ヴォルスは、画家としての活動のほうが知られていると思いますが、このように写真作品でも注目すべき作品を残しています。
横浜美術館が所蔵しているという点のほうはなるほどと思うにしても、ヴォルスの作品を個人のかた(しかも、他の作品の所蔵館が皆日本であることから推測して、日本の個人)が所有なさっているんですね。驚くべきことです。
それにしても、楽しみな内容です。
No.2170でご紹介した「野島康三と斎藤与里 ―美を掴む手、美を興す眼」ですが、くわしい情報が公表されていました。
まずは、埼玉県立近代美術館のページ
https://pref.spec.ed.jp/momas/2025nojima_yori
続けて、プレスリリースです。(しばしば、プレスリリースのほうが情報が詳しいことがあります)
企画展「野島康三と斎藤与里 ―美を掴む手、美を興す眼」を開催.pdf
展示作品数はまだわかりませんが、期待できますね。
絵画は他の作家の作品も展示されるようですが、写真は野島だけのようです。
野島康三研究の第一人者で、渋谷区立松濤美術館の学芸員であった、光田由里さん(現在は多摩美術大学アートアーカイヴセンター所長・大学院教授ということのようです)の講演会もあります。
そして本企画ご担当の学芸員は、次のお二人です。
鴫原 悠(しぎはら はるか):主担当
西尾真名(にしお まな):副担当
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/24752/06_kingendaibijutu.pdf
https://www.pref.saitama.lg.jp/f2216/bunkazai/gakugeiin-bank.html#kingendaibijutu
この埼玉県の「学芸員データバンク」というのは、情報公開がここまで来たか、という感じで感心しましたが、一方で、ご本人の写真まで掲載しているのは、ちょっと危険ではないかとも思いました。