(つづき)
7)2014年:ジョルジョ・デ・キリコ展(2014年6月21日-8月22日:岩手県立美術館, 2014年8月30日-10月19日:浜松市美術館, 2014年10月25日-12月26日:パナソニック汐留ミュージアム)
Cat. 1:ポール・ギョームの肖像(1915、41.0x33.0cm。パリ市立近代美術館、レゾネ93番)
Cat. 2:福音書的な静物(1916、80.5x71.4、大阪中之島美術館、レゾネ113番)
Cat. 3:遠い女からの挨拶(1916、48.2x36.5、個人蔵、レゾネ120番)
Cat. 4:謎めいた憂愁(1919、62x49.5、パリ市立近代美術館、レゾネ146番)
ここで、「レゾネ」とは、No.2108にも記載しましたが、次の本です。
De Chirico: The Metaphysical Period, 1888-1919
Paolo Baldacci、Jeffrey Jennings
Bulfinch Press
1998
ISBN-10: 0821224999
ISBN-13: 978-0821224991
先に書いたことと異なり、今までも、かなり1910年代の作品は展示されていました。重複を除けば、10点に及びます。記憶違いの思い込みで、今まで1910年代の出品作はなかったかのようなことを書いてしまいすみません。
なお、今回のデ・キリコ展では、No.2118にありますとおり、1910年代の作品は12点(油彩に絞っても10点)ですから、やはり多いことは間違いありません。
ちなみに、また別の機会に書いてみたいと思いますが、以上のような情報くらい、ネット上のボタン一押しで、ササッとまとめて出てきてくれないものでしょうか? このような情報蒐集・整理こそ、AIの出番だと思いますが、それ以前に、ネット上のコンテンツ(情報)があまりに足りないという問題はどうしようもありません。
過去のデ・キリコの展覧会の展覧会カタログを調べて、1910年代の作品を拾ってみました。古い企画も含めて、以下の7展です。「モノクロ図版」と記載していなければ、カラー図版が掲載されています。
1)1973年-1974年:デ・キリコによるデ・キリコ展(神奈川県立近代美術館 , 1973.11.2-12.16 ; 東京セントラル美術館 , 1974.1.8-1.27 ; 京都国立近代美術館 , 1974.2.10-3.24 ; 愛知県美術館 , 1974.3.30-4.14、主催: 毎日新聞社)
Cat.1:母の像(1911、所蔵先記載なし、モノクロ図版、レゾネの14番)
2)1982年:「デ・キリコ」展 孤独と神秘の無言劇(1982年9月23日-10月27日:船橋・西武美術館, 1982年11月19日-12月15日:八尾西武ホール、主催: 西武美術館)
1910年代の作品はなし
3)1989年-1990年:「デ・キリコ」展(1989年10月18日-11月6日:新宿・小田急グランドギャラリー, 1989年11月18日-12月24日:高松市美術館:1990年2月21日-3月21日:大丸ミュージアム・梅田、主催: 読売新聞社)
Cat. 2:母の肖像(1911、85.5x62cm、ローマ国立近代美術館、レゾネ14番)
Cat. 3:ガルツェン夫人の肖像(1913。72.5x60cm、ローマ、個人蔵、レゾネ28番)
Cat. 4:詩人の郷愁(1914、89x39.5cm、ヴェネツィア、ペギー・グッゲンハイム財団、レゾネ74番)
Cat. 5:自画像(1919、80x65cm、ローマ、個人蔵、レゾネに該当なし)
Cat. 6:シチリア菓子(1919、29x46cm、ミラノ、マリア・パセッティ氏蔵、レゾネに該当なし)
4)1993年:デ・キリコ展1920-1950(1993年6月5日-7月11日, 千葉県立美術館、1993年7月16日-8月15日:東京都庭園美術館, 1993年8月28日-9月26日:ナビオ美術館, 1993年10月30日-12月5日:ふくやま美術館)
1910年代の作品はなし
5)2000年:デ・キリコ 終わりなき記憶の旅(2000年11月11日-2001年1月14日:Bunkamuraザ・ミュージアム, 2001年6月1日-6月24日:石川県立美術館, 2001年6圧30日-7月29日:大分市美術館, 2001年9月1日-10月2日:美術館「えき」KYOTO。日本経済新聞社)
Cat. 1:終わりなき旅(1914、88x39cm、ワズワース・アセニアム、レゾネ77番)
Cat. 2:福音書的な静物I(1916、80.5x71.4、大阪中之島美術館、レゾネ113番)
6)2005年:巨匠デ・キリコ展 東洋の理想(2005年7月16日-8月28日 北九州市立美術館, 2005年9月14日-10月2日 大丸ミュ-ジアム梅田, 2005年10月6日-10月25日 大丸ミュ-ジアム東京, 2005年11月3日-11月20日 松坂屋美術館(名古屋)、2006年2月4日-3月21日:徳島県立近代美術館, 2006年3月29日-4月10日:大丸札幌店7階ホール。NHK)
1910年代の作品はなし
「平凡社創業110周年記念出版」として、「FRONT」が全3巻で再復刻されました。
1989年復刻版よりは安くなっているのですが、それでも、さすがに高い。
『1989年復刻版はオリジナルの判型どおりA3サイズで制作されましたが(最後の2冊はもともとB4)、本書は各号をB4(変型判、横257mm・縦360mm)サイズに縮刷したうえで合本にしています。また復刻版の付録だった解説小冊子も、再刊に合わせ、新たな解説をくわえて本書に合本収録しました。
縮刷合本に際しては、デジタルリマスター技術により1989年復刻版の印刷を再現しましたが、版面の制約により一部レイアウトに変更を加えています。』
ということです。
書誌情報、目次は以下のとおりです。
復刻保存版 FRONT Ⅰ 海軍号・満州国建設号・空軍(航空戦力)号/平凡社
出版年月 2024/01
ISBN 9784582738315
判型・ページ数 B4 260ページ
定価22,000円(本体20,000円+税)
https://www.heibonsha.co.jp/book/b636813.html
『復刻保存版 FRONT Ⅰ』目次
海軍号
満州国建設号
空軍(航空戦力)号
解説
モダンなグラフィズムの捻ねじれと合理/柏木博
写真史のなかの『FRONT』/飯沢耕太郎
『フロント』をめぐる国際派知識人群像/山口昌男
対外宣伝誌『FRONT』の記録/多川精一
「海軍号」英語版
写真史のなかの〔FRONT〕1922‐1947
『FRONT』のデザイン:海軍号・満州国建設号・空軍(航空戦力)号/松田行正
*松田行正執筆「『FRONT』のデザイン」は、[復刻保存版]刊行に際しての書き下ろしです。
復刻保存版 FRONT Ⅱ 陸軍号・落下傘部隊号・鉄(生産力)号/平凡社
出版年月 2024/03
ISBN 9784582738322
判型・ページ数 B4 242ページ
定価22,000円(本体20,000円+税)
https://www.heibonsha.co.jp/book/b640567.html
『復刻保存版 FRONT II』目次
陸軍号
落下傘部隊号
鉄(生産力)号
解説
『FRONT』を創った人びと/多川精一
ライカ、『フロント』、東方社写真部/菊池俊吉
『日記』1942―43/今泉武治
父、岡田桑三――東方社初代理事長――のこと/岡田一男
ざっくばらん――戦時下の特殊出版社物語/山室太柁雄
「陸軍号」全訳/「落下傘部隊号」抄訳
『FRONT』のデザイン:陸軍号・落下傘部隊号・鉄(生産力)号/松田行正
*松田行正執筆「『FRONT』のデザイン」は、[復刻保存版]刊行に際しての書き下ろしです。
復刻保存版 FRONT Ⅲ 華北建設号・フィリピン号・インド号・戦時東京号/平凡社
出版年月 2024/05
ISBN 9784582738339
判型・ページ数 B4 272ページ
定価22,000円(本体20,000円+税)
https://www.heibonsha.co.jp/book/b643610.html
『復刻保存版 FRONT III』目次
華北建設号
フィリピン号
インド号
戦時東京号
解説
淡路町からの眺め──東方社(対ロシア)へ愛をこめて/山口昌男
すごい道楽雑誌/天野祐吉
『FRONT』、その制作現場/多川精一
なんだか面白いんですよ、会社の中が──/三神勲
一編集部員として/中野菊夫
野々宮ビル地下、暗室しごと/浅野隆
横浜事件と東方社と/海老原光義
『FRONT』のデザイン 華北建設号・フィリピン号・インド号・戦時東京号/松田行正
*松田行正執筆「『FRONT』のデザイン」は、[復刻保存版]刊行に際しての書き下ろしです。
今回のデ・キリコ展(東京都美術館)に展示されている「作品リスト」が公開されています。ただし、公式サイトではなく、東京都美術館のサイトだけです。なぜでしょうか?
https://www.tobikan.jp/media/pdf/2024/dechirico_worklist.pdf
さて、この中の1910年代の作品は、以下の12点でした。過去の「デ・キリコ」展と比較しても、格段に多いですね。
7 弟の肖像 1910 油彩/カンヴァス 119 ×75cm ベルリン国立美術館
10 山上への行列 1910 油彩/カンヴァス 50 ×50cm ブレシア市立美術館
11 沈黙の像(アリアドネ) 1913 油彩/カンヴァス 99.5 ×125.5cm ノルトライン =ヴェストファーレン州立美術館(デュッセルドルフ)
12 大きな塔 1915 ( ? ) 油彩/カンヴァス 81.5 ×36cm 個人蔵
16 運命の神殿 1914 油彩/カンヴァス 33.3×41cm フィラデルフィア美術館
17 福音書的な静物 I 1916 油彩/カンヴァス 80.5×71.4cm 大阪中之島美術館
18 形而上のコンポジション 1916 油彩/カンヴァス 33.5×26.7cm ジャン・エンツォ・スペローネ・コレクション
19 * サラミのある静物 1919 油彩/カンヴァス 30.8×40.4cm トリノ市立近現代美術館
25 予言者 1914–15 油彩/カンヴァス 89.6×70.1cm ニューヨーク近代美術館
26 * 哲学者と詩人 1916 鉛筆/紙 28.1×21.8cm ローマ国立近現代美術館
27 * 貞淑な花嫁 1917 鉛筆/紙 32×22cm ローマ国立近現代美術館
28 形而上的なミューズたち 1918 油彩/カンヴァス 54.3×35cm カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館(フランチェスコ・フェデリコ・チェッ ルーティ美術財団より長期貸与)(トリノ)
(ただし、Cat. No.26とCat. No.27は、油彩ではありません。)
神戸市立博物館でも同じ出品内容なんでしょうか?
先にNo.2095とNo.2099、No.2100、No.2101でご紹介した「日本写真史 写真雑誌 1874-1985」について、ようやく公立図書館から借りることができたのですが、困ったことがありましたので、少し書いてみたいと思います。
まず、内容についてですが、日本で刊行されているので、次の本
The Japanese photobook 1912-1990
Kaneko Ryuichi, Manfred Heiting
Steidl (Göttingen)
2017
ISBN: 9783958291768
で見られたような内容の間違いはないと思います。その点は安心していいと思っています。(「The Japanese photobook 1912-1990」については、Nos,1535, 1536, 1537, 1538, 1547, 1548, 1566, 1592, 1597, 1607, 1608, 1639, 1640, 1641, 1642, 1643, 1644, 1645, 1647, 1648, 1649, 1650, 1652, 1750をご参照)
他方、形式的なことですが、造本的な点では、編著者というよりは、むしろ出版社のほうの常識に疑問を感じるような問題点がありましたので、記載してみたいと思います。
まず、この本を「個人」が、しかも、当方のような研究者でもないような素人が購入することはあるでしょうか? 税込22000円という価格から考えて、ほとんどありえないでしょう。そして、以前ご紹介した目次からおわかりのとおり、ほぼ5分の4が戦後を対象としているということから(戦前は500ページ中100ページ強)、当方個人にとっては購入はなおさらあり得ないでしょう。
とすると、今回のように公立図書館から借りて、必要な部分をコピーするという対応が一般的かと思います。書籍を借りることができない(閲覧しかできない)、国立国会図書館や各美術館の図書室の場合には、その場でコピーをする(コピーを依頼する)ということになるでしょう。
さて、この「コピーをする」という観点から、3点を指摘したいと思います。
1.本のサイズ
海外市場を意識しているためでしょうか、この本のサイズは、A4ではない、特殊なサイズです。このような特殊なサイズだと、コピーするときには、大変困ります。
なお、平凡社の紹介ページには「A4」とあります。ずいぶんいい加減ですね。
https://www.heibonsha.co.jp/book/b639160.html
もしかすると、同社刊行の次の2冊と同じサイズに揃えたのかもしれません。この2冊の正確なサイズは覚えていませんが、今回の本と同様、少し変わったサイズだった記憶があります。
日本写真史1840-1945/日本写真協会編/1971年
日本現代写真史 1945→95/日本写真協会編/2000年
とはいえ、このサイズという点はコピーする際に拡大縮小をすればいいので、「やむを得ない」と考えています。
ただ、国立国会図書館や各美術館図書室では、拡大縮小はできないことに注意すべきです。なぜできないのか、その根拠は知らないのですが、もしも著作権法上の制限だとしたら、何と形式的なことで制限するのだろうかと、あきれます。(別の公立図書館で)借りることができるならば、いくらでも自分で拡大縮小ができますし、一旦原寸でコピーしたものを、あとで拡大縮小もできるので(紙の無駄になりますし、画質も悪くなりますが)、このような制限は実質的には意味がありません。むしろ、拡大縮小不可となっている理由は、図書館・図書室のコピーの担当者のかたの手間の問題でしょう。いちいち要求を受け入れていたのではきりがないですし、仮に拡大縮小も受け付けるとしたら、サイズ間違いや、画面からはみ出るなどを含めて、失敗が続出するのではないかと思います。それを防止することが、むしろ主たる目的ではないでしょうか?
2.テキストが、ページの端や「のど(gutter)」にかかっている。
これは、致命的な問題です。実際にコピーをした方、しようとした方ならば、それがどんなに大きな問題かお分かりだと思います(この本だけではなく、他の本でも)。
そもそも、そんな端にテキストを配置する必要はまったくありませんので、なぜわざわざそうしたのか(または放置したのか)の理由が理解できません。少なくとも、出版社(の編集)側から、「こんなに端やのどのところにテキストを配置したら、コピーするときに問題になりますよ」という注意喚起がなされるべきだったと思います。そうならなかったこと(または、その指摘が無視されたこと?)も理解不可能です。
3.写真図版が「のど」の近くに配置されている、さらには、「のど」にかかっている(「のど」をまたいで配置されている)
第2点に加えて、この点も致命的です。のどの部分の写真はよく見えません。逆に、写真をなぜ「のど」にかかるような位置に置く必要があったのでしょうか? あえて見えにくくしたかったのでしょうか? さすがに、そんなはずはないでしょう。
例えば、84ページから85ページにかけての「日本観光写真壁画」(1937年?)のように、切れ目なく極端に横長の図版の場合には、「のど」にかかっていてもやむを得ないでしょう(だた、以前であれば、このような図版は、「折り込み」にしていたのではないでしょうか? コストを削減しようとしたのでしょうか?)。しかし、それ以外の場合には、図版の配置やサイズを変えることによっていくらでも避けることができたはずですし、そうすべきでした。
これはコピーする際だけの問題ではありません。この本を手にするすべての人にとって不便な点です。本当に見づらい。第2点と同じように出版社の編集者が、どうしてその点に意を尽くさなかったのか、理解に苦しみます。
以上ですが、内容が優れている本なだけに、このような形式的な点で問題があるということは、なおさら残念です。
なお、まさか違うとは思いますが、念のために書いておきますと、この本は、「のど」の部分がすっかり見えるように、(本が傷むほど、または、本が壊れるほど)「開き切る」ことが求められる本なのだ、ということなのでしょうか?
少なくとも、借りている本に対してそんなことは怖くてできません。