「平凡社創業110周年記念出版」として、「FRONT」が全3巻で再復刻されました。
1989年復刻版よりは安くなっているのですが、それでも、さすがに高い。
『1989年復刻版はオリジナルの判型どおりA3サイズで制作されましたが(最後の2冊はもともとB4)、本書は各号をB4(変型判、横257mm・縦360mm)サイズに縮刷したうえで合本にしています。また復刻版の付録だった解説小冊子も、再刊に合わせ、新たな解説をくわえて本書に合本収録しました。
縮刷合本に際しては、デジタルリマスター技術により1989年復刻版の印刷を再現しましたが、版面の制約により一部レイアウトに変更を加えています。』
ということです。
書誌情報、目次は以下のとおりです。
復刻保存版 FRONT Ⅰ 海軍号・満州国建設号・空軍(航空戦力)号/平凡社
出版年月 2024/01
ISBN 9784582738315
判型・ページ数 B4 260ページ
定価22,000円(本体20,000円+税)
https://www.heibonsha.co.jp/book/b636813.html
『復刻保存版 FRONT Ⅰ』目次
海軍号
満州国建設号
空軍(航空戦力)号
解説
モダンなグラフィズムの捻ねじれと合理/柏木博
写真史のなかの『FRONT』/飯沢耕太郎
『フロント』をめぐる国際派知識人群像/山口昌男
対外宣伝誌『FRONT』の記録/多川精一
「海軍号」英語版
写真史のなかの〔FRONT〕1922‐1947
『FRONT』のデザイン:海軍号・満州国建設号・空軍(航空戦力)号/松田行正
*松田行正執筆「『FRONT』のデザイン」は、[復刻保存版]刊行に際しての書き下ろしです。
復刻保存版 FRONT Ⅱ 陸軍号・落下傘部隊号・鉄(生産力)号/平凡社
出版年月 2024/03
ISBN 9784582738322
判型・ページ数 B4 242ページ
定価22,000円(本体20,000円+税)
https://www.heibonsha.co.jp/book/b640567.html
『復刻保存版 FRONT II』目次
陸軍号
落下傘部隊号
鉄(生産力)号
解説
『FRONT』を創った人びと/多川精一
ライカ、『フロント』、東方社写真部/菊池俊吉
『日記』1942―43/今泉武治
父、岡田桑三――東方社初代理事長――のこと/岡田一男
ざっくばらん――戦時下の特殊出版社物語/山室太柁雄
「陸軍号」全訳/「落下傘部隊号」抄訳
『FRONT』のデザイン:陸軍号・落下傘部隊号・鉄(生産力)号/松田行正
*松田行正執筆「『FRONT』のデザイン」は、[復刻保存版]刊行に際しての書き下ろしです。
復刻保存版 FRONT Ⅲ 華北建設号・フィリピン号・インド号・戦時東京号/平凡社
出版年月 2024/05
ISBN 9784582738339
判型・ページ数 B4 272ページ
定価22,000円(本体20,000円+税)
https://www.heibonsha.co.jp/book/b643610.html
『復刻保存版 FRONT III』目次
華北建設号
フィリピン号
インド号
戦時東京号
解説
淡路町からの眺め──東方社(対ロシア)へ愛をこめて/山口昌男
すごい道楽雑誌/天野祐吉
『FRONT』、その制作現場/多川精一
なんだか面白いんですよ、会社の中が──/三神勲
一編集部員として/中野菊夫
野々宮ビル地下、暗室しごと/浅野隆
横浜事件と東方社と/海老原光義
『FRONT』のデザイン 華北建設号・フィリピン号・インド号・戦時東京号/松田行正
*松田行正執筆「『FRONT』のデザイン」は、[復刻保存版]刊行に際しての書き下ろしです。
今回のデ・キリコ展(東京都美術館)に展示されている「作品リスト」が公開されています。ただし、公式サイトではなく、東京都美術館のサイトだけです。なぜでしょうか?
https://www.tobikan.jp/media/pdf/2024/dechirico_worklist.pdf
さて、この中の1910年代の作品は、以下の12点でした。過去の「デ・キリコ」展と比較しても、格段に多いですね。
7 弟の肖像 1910 油彩/カンヴァス 119 ×75cm ベルリン国立美術館
10 山上への行列 1910 油彩/カンヴァス 50 ×50cm ブレシア市立美術館
11 沈黙の像(アリアドネ) 1913 油彩/カンヴァス 99.5 ×125.5cm ノルトライン =ヴェストファーレン州立美術館(デュッセルドルフ)
12 大きな塔 1915 ( ? ) 油彩/カンヴァス 81.5 ×36cm 個人蔵
16 運命の神殿 1914 油彩/カンヴァス 33.3×41cm フィラデルフィア美術館
17 福音書的な静物 I 1916 油彩/カンヴァス 80.5×71.4cm 大阪中之島美術館
18 形而上のコンポジション 1916 油彩/カンヴァス 33.5×26.7cm ジャン・エンツォ・スペローネ・コレクション
19 * サラミのある静物 1919 油彩/カンヴァス 30.8×40.4cm トリノ市立近現代美術館
25 予言者 1914–15 油彩/カンヴァス 89.6×70.1cm ニューヨーク近代美術館
26 * 哲学者と詩人 1916 鉛筆/紙 28.1×21.8cm ローマ国立近現代美術館
27 * 貞淑な花嫁 1917 鉛筆/紙 32×22cm ローマ国立近現代美術館
28 形而上的なミューズたち 1918 油彩/カンヴァス 54.3×35cm カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館(フランチェスコ・フェデリコ・チェッ ルーティ美術財団より長期貸与)(トリノ)
(ただし、Cat. No.26とCat. No.27は、油彩ではありません。)
神戸市立博物館でも同じ出品内容なんでしょうか?
先にNo.2095とNo.2099、No.2100、No.2101でご紹介した「日本写真史 写真雑誌 1874-1985」について、ようやく公立図書館から借りることができたのですが、困ったことがありましたので、少し書いてみたいと思います。
まず、内容についてですが、日本で刊行されているので、次の本
The Japanese photobook 1912-1990
Kaneko Ryuichi, Manfred Heiting
Steidl (Göttingen)
2017
ISBN: 9783958291768
で見られたような内容の間違いはないと思います。その点は安心していいと思っています。(「The Japanese photobook 1912-1990」については、Nos,1535, 1536, 1537, 1538, 1547, 1548, 1566, 1592, 1597, 1607, 1608, 1639, 1640, 1641, 1642, 1643, 1644, 1645, 1647, 1648, 1649, 1650, 1652, 1750をご参照)
他方、形式的なことですが、造本的な点では、編著者というよりは、むしろ出版社のほうの常識に疑問を感じるような問題点がありましたので、記載してみたいと思います。
まず、この本を「個人」が、しかも、当方のような研究者でもないような素人が購入することはあるでしょうか? 税込22000円という価格から考えて、ほとんどありえないでしょう。そして、以前ご紹介した目次からおわかりのとおり、ほぼ5分の4が戦後を対象としているということから(戦前は500ページ中100ページ強)、当方個人にとっては購入はなおさらあり得ないでしょう。
とすると、今回のように公立図書館から借りて、必要な部分をコピーするという対応が一般的かと思います。書籍を借りることができない(閲覧しかできない)、国立国会図書館や各美術館の図書室の場合には、その場でコピーをする(コピーを依頼する)ということになるでしょう。
さて、この「コピーをする」という観点から、3点を指摘したいと思います。
1.本のサイズ
海外市場を意識しているためでしょうか、この本のサイズは、A4ではない、特殊なサイズです。このような特殊なサイズだと、コピーするときには、大変困ります。
なお、平凡社の紹介ページには「A4」とあります。ずいぶんいい加減ですね。
https://www.heibonsha.co.jp/book/b639160.html
もしかすると、同社刊行の次の2冊と同じサイズに揃えたのかもしれません。この2冊の正確なサイズは覚えていませんが、今回の本と同様、少し変わったサイズだった記憶があります。
日本写真史1840-1945/日本写真協会編/1971年
日本現代写真史 1945→95/日本写真協会編/2000年
とはいえ、このサイズという点はコピーする際に拡大縮小をすればいいので、「やむを得ない」と考えています。
ただ、国立国会図書館や各美術館図書室では、拡大縮小はできないことに注意すべきです。なぜできないのか、その根拠は知らないのですが、もしも著作権法上の制限だとしたら、何と形式的なことで制限するのだろうかと、あきれます。(別の公立図書館で)借りることができるならば、いくらでも自分で拡大縮小ができますし、一旦原寸でコピーしたものを、あとで拡大縮小もできるので(紙の無駄になりますし、画質も悪くなりますが)、このような制限は実質的には意味がありません。むしろ、拡大縮小不可となっている理由は、図書館・図書室のコピーの担当者のかたの手間の問題でしょう。いちいち要求を受け入れていたのではきりがないですし、仮に拡大縮小も受け付けるとしたら、サイズ間違いや、画面からはみ出るなどを含めて、失敗が続出するのではないかと思います。それを防止することが、むしろ主たる目的ではないでしょうか?
2.テキストが、ページの端や「のど(gutter)」にかかっている。
これは、致命的な問題です。実際にコピーをした方、しようとした方ならば、それがどんなに大きな問題かお分かりだと思います(この本だけではなく、他の本でも)。
そもそも、そんな端にテキストを配置する必要はまったくありませんので、なぜわざわざそうしたのか(または放置したのか)の理由が理解できません。少なくとも、出版社(の編集)側から、「こんなに端やのどのところにテキストを配置したら、コピーするときに問題になりますよ」という注意喚起がなされるべきだったと思います。そうならなかったこと(または、その指摘が無視されたこと?)も理解不可能です。
3.写真図版が「のど」の近くに配置されている、さらには、「のど」にかかっている(「のど」をまたいで配置されている)
第2点に加えて、この点も致命的です。のどの部分の写真はよく見えません。逆に、写真をなぜ「のど」にかかるような位置に置く必要があったのでしょうか? あえて見えにくくしたかったのでしょうか? さすがに、そんなはずはないでしょう。
例えば、84ページから85ページにかけての「日本観光写真壁画」(1937年?)のように、切れ目なく極端に横長の図版の場合には、「のど」にかかっていてもやむを得ないでしょう(だた、以前であれば、このような図版は、「折り込み」にしていたのではないでしょうか? コストを削減しようとしたのでしょうか?)。しかし、それ以外の場合には、図版の配置やサイズを変えることによっていくらでも避けることができたはずですし、そうすべきでした。
これはコピーする際だけの問題ではありません。この本を手にするすべての人にとって不便な点です。本当に見づらい。第2点と同じように出版社の編集者が、どうしてその点に意を尽くさなかったのか、理解に苦しみます。
以上ですが、内容が優れている本なだけに、このような形式的な点で問題があるということは、なおさら残念です。
なお、まさか違うとは思いますが、念のために書いておきますと、この本は、「のど」の部分がすっかり見えるように、(本が傷むほど、または、本が壊れるほど)「開き切る」ことが求められる本なのだ、ということなのでしょうか?
少なくとも、借りている本に対してそんなことは怖くてできません。
芸術新潮でデ・キリコの特集が組まれています。
芸術新潮2024年5月号
謎解きデ・キリコ
こういう企画が予想外に増えてきて、もう細かいことは言わず、楽しめばいいんだ、と思うようになってきました。皆さんも、食傷気味にならなければいいのですが。
ですから、この特集については次の1点だけ。
p46~p47に「セルフコピー問題、またはデ・キリコによるデ・キリコ」という記事があり、「不安を与えるミューズたち」が6点も掲載されています。そうそう、こういうことをしていただきたかったのです。
そして、「不安を与えるミューズたち」でできたのですから、「ヘクトールとアンドロマケ」でも、同じように図版を比較するページを作成していただきたかったのですが、今後、どこか別のところに期待しましょう。こちらは、より点数が多そうなので、なかなか大変でしょう。
次の本(ムック)が刊行されています。
別冊太陽スペシャル
日本のグラフィックデザイン一五〇年 - ポスターとその時代
平凡社
2024/03発売
価格 ¥2,420(本体¥2,200)
実は、割とありふれたテーマではあるのですが、戦後の部分があまりに足りないのに対して、戦前の部分がそれなりに充実していて、しかも、「構成・選・文」が田島奈津子さんということで、特に注目したいと思います。
戦前は、あと、今竹七郎(「関西の図案家」に挙がっている4人のうちの1人ではありますが)と里見宗次あたりを独立してページを作成いただけたらよかったのに、というところです。
以下、目次を掲載します。
目次
006 関東企画 評伝・石岡瑛子:文=青野尚子
022 1 ポスターの誕生:構成・選・文=田島奈津子
図案家と意匠
1 杉浦非水 030
2 橋口五葉 034
3 竹久夢二 040
4 多田北烏 044
コラム
印刷会社とポスター 038
海外のデザイン雑誌 048
050 2 プロパガンダ・ポスターの時代:構成・選・文=田島奈津子
大衆文化とデザイン
1 柳瀬正夢 060
2 山名文夫 064
3 関西の図案家(川村運平、今竹七郎、竹岡稜一、菅井汲) 068
コラム
スローガンとポスター 070
フォトモンタージュの実践 072
グラフィックの総動員 074
076 グラフ雑誌がつなぐ戦前と戦後:構成・選・文=田島奈津子
グラフィックデザインの開拓者:選・文=臼田捷治
1 原拡 080
2 河野鷹思 084
3 亀倉雄策 088
〈インタビュー〉グラフィックの現場
宇野亞喜良:文=金丸裕子 092
098 3 戦後の再始動と金字塔 東京オリンピックのポスター:選・文=臼田捷治
戦後デザインの表現と展開
1 永井一正 104
2 田中一光 108
3 横尾忠則 112
〈インタビュー〉グラフィックの現場
十文字美信:文=和田京子 116
124 4 表現の新次元 ブランディングの時代:選・文=臼田捷治
アートディレクターの仕事
1 浅葉克己×西武百貨店 128
2 松永真×山陽スコット 130
3 河北秀也×いいちこ 132
4 サイトウマコト はせがわ×アルファキュービック 134
5 奥村靫正×小原流 136
138 アートとデザイン 国立美術館 東京国際版画ビエンナーレ ポスターコレクション:文=高島直之
それにしても、目次くらい、ネット上のどこかに掲載していただけないのものでしょうか?
平凡社による紹介のページには、「画像ファイル」として目次が掲載されているのですが、それに加えて、コピーペースト可能な「テキスト」で掲載していただきたかった。それくらい簡単にすぐできるはずですから、どうかお願いします。
https://www.heibonsha.co.jp/book/b640271.html
最後に、この本は、(先この場でご紹介したと思っていたものの実際にはご紹介していなかった(!!))「別冊太陽スペシャル 日本のブックデザインの一五〇年 ― 装丁とその時代」(2023/06)の続篇という位置づけの本でしょうか。