前回のつづきですが、この本「教養として知っておきたい名画BEST100」で取り上げられている作品名を追加したリストです。なお、欧文つづりは記載しておりませんが、各ページには、作家名のみならず作品名の「英文」つづりも掲載されていて好ましいことです。ただ、作品のタイトルは、いったい何語で表記すべきでしょうか? 活躍した場所の言語、それとも生誕地の言語、それともそれ以外? この問題は、今では顕在化していませんが、。いずれは立ち現れてくるかもしれません。
また、ここではタイトルは記載しませんが、これらの作品とは別に、それぞれの作家ごとに「この画家の知っておくべきそのほかの作品」が2~3作品ずつ選ばれ、一部はカラー図版も掲載されていますので、これは20世紀前半に限っても、実はかなりの情報量となります。また、図版が掲載されていなくても、現在なら、有名作品ならば日本語でもタイトルからウエブ上で図版を発見することはそう難しくないのではないかと思いますので、日本語の作品タイトルだけでも掲載されていることには大きな意味があると思っています。ぜいたくを言えば、これが10作品くらいであれば、もっとよかったのにと思います。それくらいは自分で探せということかもしれません。
<キュビスム>20世紀初頭
14位:『泣く女』(1937年)パブロ・ピカソ:P.42
<フォーヴィスム>20世紀初頭
25位:『ダンスI』(1909年)アンリ・マティス:P.66
80位:『聖顔』(1933年)ジョルジュ・ルオー:P.163
<表現主義>20世紀初頭
5位:『叫び』(1893年)エドヴァルド・ムンク:P.24
<抽象絵画>(20世紀前半~現代)
31位:『横線』(1923年)ワシリー・カンディンスキー:P.80
10位:『赤・青・黄のコンポジション』(1930年)ピエト・モンドリアン:P.34
45位:『セネシオ(さわぎく)』(1922年)パウル・クレー:P.112
<エコール・ド・パリ>20世紀前半
49位:『マドモアゼル・シャネルの肖像』(1923年)マリー・ローランサン:P.120
58位:『コタンの小路』(1910-11年)モーリス・ユトリロ:P.139
37位:『ジャンヌ・エビュテルヌの肖像』(1919)アメデオ・モディリアーニ:P.92
47位:『カフェにて』(1949年)藤田嗣治(レオナール・フジタ):P.116
23位:『私と村』(1911年)マルク・シャガール:P.62
<形而上絵画>20世紀初頭
68位:『通りの神秘と憂鬱』(1914年)ジョルジョ・デ・キリコ:P.151
<ダダイスム>20世紀前半
62位:『階段を降りる裸体No.2』(1912年)マルセル・デュシャン:P.143
<20世紀前半アメリカ大陸の画家たち>19世紀末~20世紀初頭
95位:『ナイト・ホークス』(1942年)エドワード・ホッパー:P.180
93位:『ブラックアイリスII』(1926年)ジョージア・オキーフ:P.178
77位:『ハチドリととげのあるネックレスをした自画像』(1940年)フリーダ・カーロ:P.160
<アール・デコ>20世紀前半
97位:『自画像(緑のブガッティに乗るタマラ)』(1929年)タマラ・ド・レンピッカ:P.182
<シュルレアリスム>20世紀前半
99位:『オランダの室内I』(1928年)ジョアン・ミロ:P.184
90位:『大家族』(1963年)ルネ・マグリット:P.175
7位:『記憶の固執』(1931年)サルバドール・ダリ:P28
<抽象表現主義>20世紀中頃
74位:『赤の上のオーカーと赤』(1954年)マーク・ロスコ:P.157
66位:『ナンバー1A、1948』(1948年)ジャクソン・ポロック:P.149
84位:『序の舞』(1936年)上村松園:P.167
81位:『童女図(麗子立像)』(1923年)岸田劉生:P.164
30位:『明日の神話』(1968-69年)岡本太郎:P.78
以下は、ついでに書いておきます。
70位:『鮭』(1877年頃)高橋由一:P.153
87位:『湖畔』(1897年)黒田清輝:P.172
43位:『無我』(1897年)横山大観:P.108
<20世紀後半以降の美術>20世紀後半~現在
61位:『キリスト磔刑図のための3つの習作』(1944年)フランシス・ベーコン:P.142
39位:『夢想』(1965年)ロイ・リキテンスタイン:P.96
18位:『マリリン』(1967年)アンディ・ウォーホル:P.50
88位:『シエナ』(1984年)ジャン=ミシェル・バスキア:P.173
86位:『花束を投げる男』(不明)バンクシー:P.171
なお、20世紀後半は以下のとおり5人です。日本人は含まれていません。ただ、岡本太郎は、取り上げられている作品からして、20世紀後半という位置づけなのかもしれません。
<20世紀後半以降の美術>20世紀後半~現在
61位:フランシス・ベーコン:P.142
39位:リキテンスタイン:P.96
18位:ウォーホル:P.50
88位:バスキア:P.173
86位:バンクシー:P.171
20世紀後半も入れれば31名になり、全体の3分の1が20世紀ということになります。これは、かなり20世紀を重視した選択と言えるでしょう。場合によっては、20世紀以降は特別扱いをして除外するという美術史もありうるところ、これは興味深いことです。
なお、以上の人名は、p11、p13の記載のとおりの表記にしています。例えば、「デ・キリコ」ではなく「キリコ」、「ルネ・マグリット」ではなく「マグリット」ということです。ファースト・ネームのありなしも、記載された通りです。ただ、ファースト・ネームのありなしは、表のスペースも関係するのかもしれません。
この選択は非常に興味深いですね。かなり網羅的にカバーできているのではないかと思いますが、客観的に見ると、やはり次の3名は抜けていると言わざるを得ないのではないでしょうか?
マックス・エルンスト
カジミール・マレーヴィチ
ジョルジュ・ブラック
最初は1人2ページ見開きの構成ですが、57位(p138)という中途半端なところから、1人1ページになります。
なお、掲載作品INDEXがあるのですが、それに加えて、掲載作家のINDEXがあればよかったのに、と思います。100人とはいえ見つけるのが簡単になったことでしょう。
例えば、同種とま言えませんが、西洋美術史全体を対象とした次の基本的な書籍を見ると、
西洋美術史ハンドブック
高階秀爾・三浦篤・編
新書館
1997年
取り上げられている美術家101人のうち(タイトルには「101」とは入っていませんが)、20世紀前半は次の10人でしかありません。(なお、20世紀後半は14人なので、これを加えれば、20世紀全体で24人となりほぼ4分の1には達します。)
カンディンスキー/マチス/ピカソ/デュシャン/モンドリアン/ブランクーシ/クレー/キルヒナー/エルンスト/ミロ
次の本が昨年刊行されています。
教養として知っておきたい名画BEST100
2021年9月10日 第1刷発行
監修:山内舞子
編集:有限会社オフィス・ポストイット(永岡邦彦、朝倉めぐみ、五箇貴子)
表紙・本文デザイン:戸部明美(at)
校正:有限会社くすのき舎
発行所:株式会社永岡書店
20世紀に限られた内容でもありませんので、割と有名ではない作家や分野に偏ってご紹介しているこの場で取り上げるのは適切ではない、と思う面もありました。しかし、美術史全体を対象とした書籍で、20世紀前半ではどのような作家が取り上げられているのか、という点に関心があったので、この場でご紹介します。
まずは、20世紀前半で取り上げられている作家を列挙いたします。
(p11の「大まかな西洋絵画史の流れ②(19世紀中頃~現代)」より。2つ以上の分野に重なっている作家もありますが、書きにくいので以下では1つの分野に入れています。)
<キュビスム>20世紀初頭
14位:ピカソ:P.42
<フォーヴィスム>20世紀初頭
25位:マティス:P.66
80位:ルオー:P.163
<表現主義>20世紀初頭
5位:ムンク:P.24
<抽象絵画>(20世紀前半~現代)
31位:カンディンスキー:P.80
10位:モンドリアン:P.34
45位:クレー:P.112
<エコール・ド・パリ>20世紀前半
49位:ローランサン:P.120
58位:ユトリロ:P.139
37位:モディリアーニ:P.92
47位:藤田嗣治:P.116
23位:シャガール:P.62
<形而上絵画>20世紀初頭
68位:キリコ:P.151
<ダダイスム>20世紀前半
62位:デュシャン:P.143
<20世紀前半アメリカ大陸の画家たち>19世紀末~20世紀初頭
95位:エドワード・ホッパー:P.180
93位:ジョージア・オキーフ:P.178
77位:フリーダ・カーロ:P.160
<アール・デコ>20世紀前半
97位:レンピッカ:P.182
<シュルレアリスム>20世紀前半
99位:ミロ:P.184
90位:マグリット:P.175
7位:ダリ:P28
<抽象表現主義>20世紀中頃
74位:ロスコ:P.157
66位:ポロック:P.149
なお、日本については、13ページに「中世以降の日本絵画史(12世紀~現代)」に上記の藤田嗣治以外に次の3名が記載されています。
84位:上村松園:P.167
81位:岸田劉生:P.164
30位:岡本太郎:P.78
ちなみに「近代絵画」という意味では次の3名も該当するかと思いますが、取り上げられた作品がいずれも1900年以前の作品だったので、含めませんでした。特に、横山大観は含めるかどうかについてかなり迷いました。
70位:高橋由一:P.153
87位:黒田清輝:P.172
43位:横山大観:P.108
以上で、26名です。
これは、19世紀末から20世紀初めにかけての印象派、ポスト印象派、その他世紀末の美術を除いてですから、相当な数だと言えます。
次の本が刊行されています。
見ることからすべてがはじまる アンリ・カルティエ=ブレッソン インタビュー/会話(1951-1998)
クレマン・シェルー/ジュリー・ジョーンズ・編
久保宏樹・訳
発行:読書人
2021/12/3
¥6,218
242ページ
タイトルを見ると戦後に実施されたインタビューであることがわかりますが、戦前の活動についても触れているだろうということも考慮し、あえてご紹介いたします。とにかく、戦前・戦後という区分を超えて、興味深い内容に間違いありません。
なるべく早く中身を見て見たいものです。
ちなみに、この出版社、「週間読書人」の刊行元として有名ですが、写真に関する書籍も従来刊行したことがあったのでしょうか? そうでなかった場合、なぜこのような写真に関する訳書を刊行することになったのでしょうか? その点にも興味を感じます。
なお、過去の「5大ニュース」は以下の通りです。
2020年:1916(2021年1月3日)
2018年:1779・1780・1781(2018年12月31日)
2017年:1689~1692(2018年1月7日)
2016年:1549~1552(2017年1月2日)
2015年:1420~1423(2016年1月3日)
2014年:1219・1220(2015年1月4日)
2013年:1147 (2014年2月2日)
2012年:1084(2013年1月6日)
2011年:1027(2012年1月10日)
2010年:957(2011年1月2日)
2009年:892(2010年1月10日)
2008年:821(2009年2月1日)
2007年:744(2008年1月27日)
2006年:650(2007年1月3日)
2005年:580(2006年1月1日)
2004年:493(2005年1月2日)(「その他」の最後の部分)
現時点では、以上の過去の投稿はすべて見ることができるようになりました。