2022年5月19日(木)から、国立国会図書館の「個人向けデジタル化資料送信サービス」が開始されたということです。
登録(国立国会図書館に行かずとも、インターネット上で可能)をすれば、個人のパソコンから国立国会図書館のデジタル資料を見られるようになり、コピーも取り寄せられるということです。見られる範囲は、No.2000でご紹介した「図書館送信資料」約153万点(令和4年1月時点)のようです。
これはすごいことです。このことは、毎年選んでいる「5大ニュース」に入ります。
正確には、コピー&ペーストしますが、以下のとおりです。
サービス概要
当館のデジタル化資料のうち、絶版等の理由で入手が困難なものを、利用者ご自身の端末(スマートフォン、タブレット、パソコン)等を用いてインターネット経由で閲覧できるサービスです。国立国会図書館デジタルコレクションで資料の本文画像を閲覧できます。サービス開始当初は閲覧のみですが、令和5年1月を目途に印刷機能の提供を開始する予定です。
利用できる資料
国立国会図書館デジタルコレクションで提供している資料のうち、絶版等の理由で入手が困難であることが確認された資料(著作権者等の申出を受けて、3か月以内に入手困難な状態が解消する蓋然性が高いと当館が認めたものを除く。)が対象です。具体的には、「図書館送信資料」約153万点(令和4年1月時点)の範囲内の資料です。
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2021/220201_01.html
https://www.ndl.go.jp/jp/registration/index.html#anchor01
https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/index.html
具体的にどのような資料を見ることができるのか、それは、今後確認していきます。
東京都写真美術館の5月20日(金)からの企画「アヴァンガルド勃興」(No.1992、No.1998)の展覧会カタログの情報が、国書刊行会のページで公開されました。
目次も含め、以下のとおりご紹介いたします。
アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真
東京都写真美術館 編
国書刊行会
発売日:2022/06/10
判型:A4変型判
ISBN:978-4-336-07367-9
ページ数:208頁
定価 3,960円(本体価格3,600円)
<目次>
序
【図版】Plates
第1章 インパクト 同時代の海外作家 Part 1: Impact - Contemporaneous Photographers Overseas
第2章 大阪 Part 2: Osaka
第3章 名古屋 Part 3: Nagoya
第4章 福岡 Part 4: Fukuoka
第5章 東京 Part 5: Tokyo
1930年代日本の前衛写真――言説と実践(イェレナ・ストイコヴィッチ)
Avant-Garde Photography in 1930s Japan, in Discourse and Practice(Jelena Stojković)
前衛写真の時代(藤村里美)
The Age of Avant-garde Photography(Fujimura Satomi)
作家解説
前衛写真関連年表
作品リスト List of Works
https://www.kokusho.co.jp/sp/isbn/9784336073679/
一昨日から会期も始まっておりますが、上記発売日の情報から見ると、展覧会カタログはまだ入手できないという状態なのでしょうか?
また、2018年にやはり国書刊行会から刊行された、次の展覧会カタログと同じサイズですかね?
『光画』と新興写真 モダニズムの日本
東京都写真美術館 編
国書刊行会
発売日:2018/03/07
判型:A4変型判
ISBN:978-4-336-06252-9
ページ数:232頁
定価 3,740円(本体価格3,400円)
https://www.kokusho.co.jp/sp/isbn/9784336062529/
取り扱っている時期が2冊で接続するため、「2冊で一揃え」ということなのかもしれません。
この2018年の展覧会カタログの時にも書いたかもしれませんが、今回論考が2点のみというのは、いかにも少なくて残念です。
先にNo.2001でご紹介した、みすず書房の「さまよえる絵筆」などは、以下の目次からわかるように、いったい何件の論考・インタビュー等が収録されているのか? その差が歴然とするように思います。
https://www.msz.co.jp/book/detail/08980/
さまよえる絵筆 東京・京都 戦時下の前衛画家たち
編著:弘中智子
編著:清水智世
みすず書房
判型:B5判 タテ257mm×ヨコ188mm
頁数:216頁
定価:3,520円 (本体:3,200円)
ISBN:978-4-622-08980-3
Cコード C0070
発行日:2021年2月25日
目次
はじめに 弘中智子
1940年以後、戦時下の前衛絵画の展開 弘中智子
塗られない画布 転換期・京都の裁断面 清水智世
I 西洋古典絵画への関心
II 新人画会とそれぞれのリアリズム
III 古代芸術への憧憬
IV 「地方」の発見
インタビュー 吉井忠と戦時下、そして東北 吉井爽子
V 京都の「伝統」と「前衛」
義父・小牧源太郎 澄みきった心境 山本新太郎
福沢一郎 古典のレアリズムは前衛に通ず 伊藤佳之
「生きてゐる画家」の世代 河田明久
戦時下の考古学と埴輪の位置 村野正景
難波田龍起の埴輪と仏像 幻想と写真 小林俊介
長谷川三郎における〈前衛〉と〈伝統〉の接続 モダン・フォトグラフィ的視覚言語を経由した抽象表現 谷口英理
「地方」の文化運動 翼賛と現実 大串潤児
2つの共同制作《浦島物語》と《鴨川風土記序説》について 大谷省吾
京都の文化運動と知識人、あるいは、モンタージュの試み 雨宮幸明
戦時下の雑誌における古美術の紹介 『みづゑ』『アトリヱ』および継続誌を中心に 印田由貴子
本書で紹介する画家・団体 相関図
戦時下、前衛画家たちのスナップ写真
用語・人物解説
『美術文化』、美術文化協会画集目次
文献再録
作家作品解説
関連年譜
参考文献
1941(昭和16)年4月5日 福沢一郎逮捕に対する東京・京都の画家たちの反応
作品リスト
An Outline of the Exhibition
おわりに 清水智世
また、国書刊行会のページに掲載されている、次の「収録作家」を見ると、知らない名前がなく、これも残念です。プレスリリース(https://topmuseum.jp/upload/2/4300/AvantGardeRisingPressRelease_20220506.pdf)に挙がっている名前の一部がすでに欠けているので、これで全員ではない、ということかもしれませんが。
◆収録作家
天野龍一、伊藤研之、瑛九、音納捨三、恩地孝四郎、小石清、河野徹、後藤敬一郎、許斐儀一郎、小林鳴村、坂田稔、椎原治、高橋渡、田島二男、田中善徳、田渕銀芳、樽井芳雄、永田一脩、中山岩太、服部義文、ハナヤ勘兵衛、濱谷浩、久野久、平井輝七、本庄光郎、村田米太郎、安井仲治、矢野敏延、山本悍右、吉崎一人、ウジェーヌ・アジェ、セシル・ビートン、ハンス・ベルメール、ブラッサイ、マン・レイ、アルベルト・レンガー = パッチュ
いずれにしても、刊行を心待ちにしています。
先に登場しました、戦間期(ということは日本占領期)に活躍した韓国の写真家Jung Haechang(1907-1968)の名前で検索したところ、次の展覧会が見つかりました。
The Centennial of Korean Art Photography, 1920–2020
An exhibition dedicated to the 30th anniversary of Russian-Korean diplomatic relations.
https://rosphoto.org/events/the-centennial-of-korean-art-photography-1920-2020/
会場の情報は以下のとおり。
The State Russian Museum and Exhibition Centre ROSPHOTO
Main Building Exhibition Hall, 2nd floor
19.12.2020—21.03.2021
(Saint-Petersburg, 35 Bolshaya Morskaya street)
戦間期に関する記載は以下のとおり。
The first section, “Birth of Korean Photographic Art, 1920–1950s”, introduces the beginnings of Korean photography. This part of the exhibition displays works by the artists who regarded photography as “pure art”. This approach was widespread in Korean art during the period of Japanese occupation as well as after liberation and the Korean war, when photographers like JUNG Haechang (1907–1968), LIMB Eungsik (1903–2001) and HYUN Ilyoung (1903–1975) were at the peak of their productivity.
3人の韓国人写真家の名前がこれでわかったことになります。ハングル表記まではわかりませんが、生没年も出ているので検索で発見できるのではないでしょうか?
なお、この美術館は、モスクワではなく、サンクトペテルブルクの美術館のようです。
なぜ、このような展覧会が隣の日本ではなく遠いロシアの都市で開催されているのでしょうか?
日本と韓国の関係が険悪だということを示しているのでしょうか?
韓国の政権交代に伴い、この展覧会も日本に巡回していただきたいところです。
さて、巡回の可能性は極めて低いと思いますので、とりあえずは、ここから先は情報は見つかるでしょうか? この企画の展覧会カタログは存在するのか、存在するとして日本国内に所蔵している美術館図書室があるでしょうか?
探してもよくわからない、見つからないという未来が見えるようで、暗くなります。
次の展覧会が1会場で開催終了、別の1会場で開催中です。
SURREALISM BEYOND BORDERS
The Metropolitan Museum of Art: October 11, 2021 – January 30, 2022
TATE MODERN: 24 February – 29 August 2022
https://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2021/surrealism-beyond-borders
https://www.tate.org.uk/whats-on/tate-modern/surrealism-beyond-borders
欧米をそれぞれを代表する美術館で、この企画ですか~。
しかも、METのほうの次のページ(展示作品の一部)をご覧ください。
https://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2021/surrealism-beyond-borders/exhibition-objects
絵画だけでなく写真作品やオブジェ、雑誌・書籍等の資料なども含まれています。戦後まで対象です。有名な作品がある一方で、見たこともないような作家・作品(特に、珍しい国の作品。韓国の写真作品もあり)に混ざって、なんと日本の作品もあります。登場している日本人名を挙げると以下のとおり。漢字表記がないのは仕方ないのでしょうか。
古賀春江の「海」
岡上淑子のフォトモンタージュ(1954)
北脇昇
池田龍雄
企画タイトルの「BORDERS」とは国境のことなのでしょうか?
なお、韓国の写真作品とはこちら。
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/838594?&exhibitionId=0&oid=838594&pkgids=732
Artwork Details
Title: Inhyŏng ŭi kkum I (A Doll’s Dream I)
Artist: Jung Haechang (Korean, Seoul 1907–1968 Seoul)
Date: 1929-1941
Geography: Country of Origin South Korea
Medium: Gelatin silver print
Dimensions: 17 1/16 × 21 1/16 in. (43.3 × 53.5 cm)
Classification: Photographs
Credit Line: The Museum of Photography, Seoul
ハングルが表示されていないのが残念ですね。しかし、次の通りのようです。
Jung Hae-chang 정해창 (1907-1968) Korean Potographer
ネットに公開されている作品を見るだけでも、ぜひ行ってみたい展覧会です。ここはやはり、日本に巡回していただきたいところです。巡回しないということは、日本の美術作品はラインナップに入れられるほど高く評価されているのに、巡回してもらえない日本の美術館のほうは軽んじられているようで、恥ずかしいのではないかと思うくらいです。
想定される会場としては、東京国立近代美術館でしょうか? 少なくとも、古賀春江・北脇昇が含まれているわけですから。そして、日本で開催されるのならば、もちろん、日本作家の部分は補強されると信じています。どうぞよろしくお願いいたします。
なお、同館の図書室には本展の展覧会カタログが所蔵されています。
すでに刊行されていると思い込んでいたのですが、まだ、「1001シリーズ」の中で、次のような本は存在しないようです。
1001 Posters You Must See Before You Die
すでに、絵画、建築、写真については刊行されているので、ポスターについても、ぜひ制作をよろしくお願いします。誰にお願いしたらいいのかはわかりませんが。
ポスターについては、「デザイン」または「写真」(古くは画家が制作を担っていたので、絵画)の観点から、以前から注目され、展覧会も書籍も多いと思います。地域やテーマや時期を絞れば、様々な資料が刊行されていると思います。しかし、いざ、世界全体のポスターを対象とした網羅的な資料というと、なかなか思いつきません。
はたして「1001」で足りるのかという懸念がありますが、とりあえずは、まずは手掛かりとしての「1001」をお願いしたいと思います。