No.2094において、『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本、の展覧会について、「展覧会では「写真」は取りあげられていないようですので」と書いてしまいましたが、これが間違いであったことがわかりましたので、申し訳ありませんが訂正です。
まず、現在開催中の京都文化博物館のサイトに行きます。
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_sogo_post/20231216-20240204/
すると、出品目録をダウンロードできます。
https://www.bunpaku.or.jp/wp-content/uploads/2023/07/surrealismJP_mokuroku.pdf
その中に、「第5章 写真のシュルレアリスム」があり、11作品と2資料が含まれています。11作品の作者は、山本悍右(勘助)(2点)、久野久(1点)、植田正治(1点)、天野龍一(2点)、平井輝七(2点)、坂田稔(2点)、下郷羊雄(1点)で、資料は『夜の噴水』が2点です。
本当は、出品目録の該当ページをコピーして文字列としてそのまま貼り付けたかったのですが、コピーすると表形式が壊れてしまうので、やむを得ず、画像でアップしておきます。
それにしても、11点というのは、あまりに少なすぎます。対象としても、瀧口修造関係の「前衛写真協会」が全く除外されていることは、並行して企画が走っているので、やむを得ないことなのかもしれませんが、除外しているということそのものがこの企画に写真を含めたことを無効化するように思います。結論としては、この「第5章」は展示に含める意味がなかったのではないかと思います。
他方、書籍のほうはまだ十分に中身を確認することができておりませんので、それができた時点で、あらためてご紹介したいと思います。
なお、京都文化博物館では、同時に以下の企画も開催中ですので、訪問なさる方は、こちらも忘れずに。
シュルレアリスムと京都
2023.12.23(土) 〜 2024.2.18(日)
会場: 京都文化博物館 2階総合展示室
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_sogo_post/20231223-0218/
https://www.bunpaku.or.jp/wp-content/uploads/2023/07/SurrealisminKyoto_list.pdf
取りあげられている作家は、北脇昇、小牧源太郎、今井憲一、伊藤久三郎、松崎政雄の5人(戦後の作品も含む)。
次の本が刊行予定です。
日本写真史 写真雑誌 1874-1985
金子 隆一 編著
戸田 昌子 編著
アイヴァン・ヴァルタニアン 編著
平凡社
22,000円(税込)
2024年2月下旬刊行予定
ISBN 9784582231335
Cコード・NDCコード 0072 NDC 740.21
判型・ページ数 A4 500ページ
https://www.heibonsha.co.jp/book/b639160.html
黎明期から戦時プロパガンダ、戦後ドキュメンタリー、マスメディアまで、写真家400名以上、雑誌80冊以上を網羅。日本写真史の決定版。
次のページによると、内容についてさらに以下の通り。
https://www.fukkan.com/fk/CartSearchDetail?i_no=68335052
商品内容
日本の近現代写真史の決定版、ついに登場!
1880年から100年間の日本写真史を「雑誌」媒体から編年体で紹介。500頁を超える大著にして、「日本写真史」の決定版!
カメラ雑誌、ジャーナル誌、総合雑誌、カルチャー誌、同人誌など、あらゆる“写真雑誌”を読み解き、日本の写真表現の歴史を通覧する。
▼写真家リスト
福原信三
立木義浩
淵上白陽
荒木経惟
塩谷定好
高梨豊
野島康三
中平卓馬
安井仲治
篠山紀信
中山岩太
森山大道
植田正治
深瀬昌久
土門拳
沢渡朔
濱谷浩
牛腸茂雄
木村伊兵衛
石元泰博
東松照明
北井一夫
大辻清司
藤原新也
奈良原一高
須田一政
長野重一
土田ヒロミ
川田喜久治
畠山直哉
細江英公
▼雑誌リスト
「写真例題集」
「白陽」
「カメラ」
「芸術写真研究」
「フォトタイムス」
「光画」
「NIPPON」
「アサヒカメラ」
「カメラクラブ」
「FRONT」
「アサヒグラフ」
「カメラ毎日」
「VOU」
「ロッコール」
「写真サロン」
「カメラ芸術」
「日本カメラ」
「フォトアート」
「太陽」
「季刊写真映像」
「Prvoke」
「遊」
「現代の眼」
「週刊アンポ」
「朝日ジャーナル」
「地平」
「写真装置」
「cameraworkstokyo」
「FOCUS」
「写真時代」
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引用は以上で終了ですが、対象の期間は110年余りと非常に長く、写真家や写真雑誌のリストを見る限り、どこに焦点があるのか、または、写真家に焦点を置いているのか雑誌に焦点を置いているのかもよくわかりません。500ページというページ数も多いことは多いのですが、雑誌のページをいちいち復刻しているというほどの量でもないようで、どのような内容なのかわからないことだらけです。
ということで、実物を早く見たいものですが、大変困ったことにこの本は非常に高価なので、書店で見ることはまずかなわず、公立図書館でも、例え都道具県立レベルであっても、ほとんど所蔵してくれないのではないかと懸念いたします。これでは、自分で購入しないと目にすることができないのではないかと心配する次第です。
そういう意味でも、このような目にすることが難しそうな本については、目次や一部ページなどの詳細な内容をネット上で紹介(公開)していただきたいところです。刊行した出版社であれば、いくらでも可能だと思います。ましてや、平凡社のような大出版社であれば、なおさらです。
このような本を目の前にすると、公立図書館は、高価な本を提供することに使命があるのか、それとも、安価な本を提供することに使命があるのか、と疑問を感じます。後者をしなくてもいいということではありませんが、個人的には、前者のほうにより重点を置くべきではないかと思います。高価な本は、自分ではなかなか購入できないので、公立図書館を利用しようとする人が多いでしょうから。しかし、実際にはそうなっていないのではないかと思います。もし、高価だからという理由で公立図書館に購入してもらえないというのならば、実物を見ることを諦めるか、自分で購入せざるを得ない、そうだとしたら、高価な本こそ(公立図書館が所蔵してくれないから)個人が購入せねばならないという、逆説的な状況が生じることになりません。
そして、「おそらく、(自分の住む市長村の公立図書館では無理でも)どこかの公立図書館(特に都道府県レベル)が所蔵してくれるだろう」と期待していたら、これは、単なる勝手な「期待」のみですから、かなうとは限りません。各公立図書館も、高価なので、どこか他の(都道府県立レベルの)公立図書館が所蔵してくれるのではないかと、購入を見合わせて、様子を見ているうちに、容易に行くことができるくらい近くの公立図書館に所蔵されることがなく、「相貸」も困難となり、結局国立国会図書館か美術館の図書室に行かないと閲覧すらできないということになるのではないかと心配しています。そんなことになっては大変困るのです。
以前も書いたような気がしますが、高価な書籍や高価でなくとも雑誌の場合には、それぞれの公立図書館が単独で購入するかどうかを判断することは避けて、複数の公立図書館で連携や分担をしていただいて、少なくとも1つの都道府県の中で、所蔵の「取りこぼし」がないようにしていただきたいところです。どんな本や雑誌でも、「国立国会図書館が所蔵しているからいいでしょ」では借りることもできず(相貸もできず)、(場合によっては)行くこともできず、結局その本や雑誌を見ることもできないという結果になって、極めて困るのです。特に昔の本や雑誌の場合には、そうなる傾向が強いので、個々の公立図書館単独での判断による廃棄(除架)も避けていただきたいところです。少なくとも、1つの都道府県内で分担し、本・雑誌の分野や種類ごとに、ある公立図書館が責任をもって永久に所蔵し続けるという体制・システムが必要だと思います。
どうかどうかよろしくお願いいたします。
年初から大変なことがいろいろと起こっておりますが、本年もよろしくお願いいたします。
恒例の「5大ニュース」です。
今回選んだものは、以下のとおりです。
<展覧会>
2件です。
これは展覧会でありますが、同時に書籍でもあります。
・安井仲治展(2050、2074、2078、2079、2081、2082、2084、2087)
これも展覧会でありますが、同時に書籍でもあります。
次点として次を挙げておきます。
・サロン展 写真のノスタルジア(2048)
<書籍>
こちらも2件です。
・写真が語る銃後の暮し(2068)
こういう書籍により、今まで知られていない写真家の掘り起こしにつながればいいのですが。
・『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本(2049、2091、2092)
これは、実際は展覧会でもあるのですが、展覧会では「写真」は取りあげられていないようですので、書籍のほうだけとします。
<その他>
・100年前の「フェイク画像」(2067)
怖いながら、実に「現代性」もあり、興味深いテーマであります。
以上ですが、番外として、次の項目も挙げておきます。
・Chat GPT(2045、2054、2055)とStable Diffusion(2051)
今後、美術の分野での活用が期待できるかどうか。
過去の「5大ニュース」は以下の通りです。数えてみると、今回で20年目ですね。
2022年:2039(2023年1月1日)
2020年:1916(2021年1月3日)
2018年:1779・1780・1781(2018年12月31日)
2017年:1689~1692(2018年1月7日)
2016年:1549~1552(2017年1月2日)
2015年:1420~1423(2016年1月3日)
2014年:1219・1220(2015年1月4日)
2013年:Msg.1147 (2014/2/2)
2012年:Msg.1084(2013/1/6)
2011年:Msg.1027(2012/1/10)
2010年:Msg.957(2011/1/2)
2009年:Msg.892(2010/1/10)
2008年:Msg.821(2009/2/1)
2007年:Msg.744(2008/ 1/27)
2006年:Msg.650(2007/ 1/ 3)
2005年:Msg.580(2006/ 1/ 1)
そろそろ2024年度(または2024年)の展覧会情報が出てき始めていますが、次の展覧会が開催予定です。
小川晴暘と飛鳥園 100年の旅
奈良県立美術館:2024年4月20日~6月23日
姫路市立美術館:2024年7月6日~9月1日
半蔵門ミュージアム:2024年9月11日~11月24日
パラミタ・ミュージアム:2024年11月30日~2025年1月26日
(4か所巡回)
少し特別な「仏教系」のミュージアム(美術館・博物館)も入っているのが面白いですね。この点については、この企画が、単なる写真展にとどまらず、今後につながる新しい可能性を持っていることを意味していると思います。
ただ、それでは、各美術館ごとのそれぞれの学芸員が、写真が専門なのか、彫刻・仏像系が専門なのかが、一見よくわからないという問題があります。
なお、小川晴暘の生没年は、1894年~1960年です。
名前の最後の漢字が珍しいですね。「陽」などに間違えそうです。
それでは、よいお年をお迎えください。また来年。
前回ご紹介した「『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本」ですが、よく調べてみたら、今年の3月にNo.2049において、板橋区立美術館で開催予定であることをご紹介していました。すっかり忘れていた。
巡回先を整理すると、以下のとおりです。お近くの館へどうぞ。
・京都府京都文化博物館:2023.年12月16日 (土) 〜 2024年2月4日 (日)
・板橋区立美術館:2024年3月2日(土)〜4月14日(日)
・三重県立美術館:2024年4月27日(土)〜6月30日(日)